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賃貸借 - 解答モード
第601条
条文
① 賃貸借は、当事者の一方がある物の使用及び収益を相手方にさせることを約し、相手方がこれに対してその賃料を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約が終了したときに返還することを約することによって、その効力を生ずる。
第602条
条文
処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、当該各号に定める期間とする。
一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 10年
二 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 5年
三 建物の賃貸借 3年
四 動産の賃貸借 6箇月
第604条
条文
① 賃貸借の存続期間は、50年を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、50年とする。
② 賃貸借の存続期間は、更新することができる。ただし、その期間は、更新の時から50年を超えることができない。
過去問・解説
(R1 司法 第25問 イ)
資材置場とするためにされた建物所有を目的としない土地の賃貸借に関して、その賃貸借の存続期間は、20年を超えることができない。
第605条
条文
不動産の賃貸借は、これを登記したときは、その不動産について物権を取得した者その他の第三者に対抗することができる。
過去問・解説
(H26 司法 第37問 エ)
建物の賃貸借は、これを登記した場合には、その建物の引渡しがされていないときであっても、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。
第605条の2
条文
① 前条、借地借家法(平成3年法律第90号)第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する。
② 前項の規定にかかわらず、不動産の譲渡人及び譲受人が、賃貸人たる地位を譲渡人に留保する旨及びその不動産を譲受人が譲渡人に賃貸する旨の合意をしたときは、賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない。この場合において、譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したときは、譲渡人に留保されていた賃貸人たる地位は、譲受人又はその承継人に移転する。
③ 第1項又は前項後段の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。
④ 第1項又は第2項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第608条の規定による費用の償還に係る債務及び第622条の2第1項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する。
過去問・解説
(H18 司法 第18問 1)
AがBに土地を賃貸し、Bが同土地上に建物を建築して所有する場合において、AがCに同土地を譲渡したときの法律関係について、Bは、建物の所有権の登記をしているが土地の賃貸借の登記はしていなかった。この場合、Cが所有権移転登記を経ていないときは、Bは、Cに対し賃料支払を拒むことができる。
(正答) 〇
(解説)
605条の2第1項は、賃貸不動産の譲渡に伴う賃貸人の地位の移転について、「前条、借地借家法…第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合」であることを必要としているところ、Bは、建物の所有権の登記をしているから、「借地借家法…第10条…の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合」に当たり、AがCに同土地を譲渡したことに伴い、同土地に関する賃貸人の地位もAからCに移転する。
もっとも、605条2第3項は、「第1項…の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。」と規定しているから、Cが所有権移転登記を経ていないときは、Cは、Bに対し、賃貸人の地位を対抗することができない。したがって、Bは、Cに対し賃料支払を拒むことができる。
(H19 司法 第11問 4)
Aがその所有する建物をBに賃貸し、Bに引き渡した後、AがCに建物を売り渡した場合、Cがその所有権移転登記を経由しなくとも、Bは、Cからの賃料の支払請求を拒むことができない。
(正答) ✕
(解説)
AがCに賃貸建物を売り渡しているから、「前条、借地借家法…第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合」に当たるのであれば、賃貸人の地位がAからCに移転する。
もっとも、605条の2第3項は、賃貸不動産の譲渡に伴う賃貸人の地位の移転について、「第1項…の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。」と規定している。したがって、Cがその所有権移転登記を経由していない場合、Cは、Bに対し、賃貸人の地位を対抗することができないから、Bは、Cに対し賃料支払を拒むことができる。
(H20 司法 第9問 ウ)
Aが所有する甲土地の上に建物所有目的の賃借権の設定を受けたEに対し、Aから甲土地を譲り受けたCは、AからCへの所有権移転登記をしなければ、Eに対し賃料の支払を請求することができない。
(正答) 〇
(解説)
AがCに借地である甲土地を譲渡しているから、「前条、借地借家法第10条…その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合」に当たるのであれば、賃貸人の地位がAからCに移転する。
もっとも、605条の2第3項は、賃貸不動産の譲渡に伴う賃貸人の地位の移転について、「第1項…の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。」と規定している。したがって、Cは、AからCへの所有権移転登記をしなければ、賃貸人の地位の移転をEに対抗することができないから、Eに対し賃料の支払を請求することができない。
(H23 司法 第8問 3)
Aがその土地をBに賃貸し、Bがその土地上に建物を建築して所有権保存登記をした後、AがCに当該土地を譲渡した場合において、当該土地に関する所有権移転登記を受けたCは、Bに対して当該土地の賃料の請求をすることができる。
(H25 司法 第25問 ア)
Aは、Bとの間で、期間を平成22年10月1日から起算して2年とし、賃料を毎月末日に当月分を支払うとの約定で、B所有の甲建物を賃借する旨の契約を締結し、敷金をBに交付して、甲建物の引渡しを受けた。その後、Bが、Aに断りなく、甲建物をCに売却し、その日のうちにCへの所有権移転登記もされた。甲建物の売却が平成23年10月31日に行われた場合、Cは、Aに対し、平成23年11月1日以降の賃料を請求することができる。
(H25 司法 第25問 ウ)
Aは、Bとの間で、期間を平成22年10月1日から起算して2年とし、賃料を毎月末日に当月分を支払うとの約定で、B所有の甲建物を賃借する旨の契約を締結し、敷金をBに交付して、甲建物の引渡しを受けた。その後、Bが、Aに断りなく、甲建物をCに売却し、その日のうちにCへの所有権移転登記もされた。甲建物の売却が平成23年10月31日に行われたが、Aが甲建物について有益費を支出したのがそれ以前の平成23年9月30日であった場合には、平成24年9月30日に期間満了により賃貸借契約が終了した時点でその価格の増加が現存するときであっても、Aは、Cに対し、その有益費の償還を請求することはできない。
(H25 司法 第25問 エ)
Aは、Bとの間で、期間を平成22年10月1日から起算して2年とし、賃料を毎月末日に当月分を支払うとの約定で、B所有の甲建物を賃借する旨の契約を締結し、敷金をBに交付して、甲建物の引渡しを受けた。その後、Bが、Aに断りなく、甲建物をCに売却し、その日のうちにCへの所有権移転登記もされた。甲建物の売却が平成23年10月31日に行われた後、平成24年9月30日に期間満了により賃貸借契約が終了した場合、Aは、甲建物をCに明け渡した上で、Cに対し、敷金の返還請求権を行使することができる。
(正答) 〇
(解説)
605条の2第4項は、「第1項又は第2項後段の規定により賃貸人たる地位が譲受人又はその承継人に移転したときは、第608条の規定による費用の償還に係る債務及び第622条の2第1項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人又はその承継人が承継する」と規定している。したがって、敷金の返還債務はCに承継されているから、Aは、甲建物をCに明け渡した上で、Cに対し、敷金の返還請求権を行使することができる。
本肢の事例では、甲建物の譲渡に伴い、賃貸人の地位がBからCに移転しており(605条の2第1項)、かつ、Cは、賃貸人の地位の移転をAに対抗することができる(同条の2第3項)。また、同条の2第4項は、「第1項…の規定により賃貸人たる地位が譲受…に移転したときは、…第622条の2第1項の規定による同項に規定する敷金の返還に係る債務は、譲受人…が承継する。」と規定しているから、Bの敷金返還債務は、Cが承継する。そして、平成24年9月30日に期間満了により賃貸借契約が終了し、Aが、甲建物をCに明け渡したことにより、「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」に当たり、金額が具体的に確定された敷金返還請求権が発生する(622条の2第1項1号)。したがって、Aは、Cに対し、敷金の返還請求権を行使することができる。
(H26 司法 第9問 ウ)
AがBに賃貸している甲土地をCに譲渡した場合において、Cが所有権移転登記をしていない場合は、BはCに対して賃料の支払を拒むことができる。
(H28 司法 第25問 イ)
自己の所有建物を賃貸して賃借人に引き渡した者が、賃貸借契約継続中に当該建物を第三者に譲渡してその所有権を移転した場合には、賃貸人たる地位を譲渡する旨の旧所有者と新所有者間の合意がなければ、賃貸人の地位は新所有者に移転しない。
(正答) ✕
(解説)
605条の3前段は、「不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。」として、賃貸不動産の譲渡における旧所有者・新所有者間の合意による賃貸人の地位の移転について規定している。
他方で、605条の2は、賃貸不動産の譲渡における旧所有者・新所有者間の合意を要しない賃貸人の地位の移転について規定している。したがって、本肢の事例では、「前条、借地借家法(平成3年法律第90号)第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合」に当たるのであれば、賃貸人たる地位を譲渡する旨の旧所有者と新所有者間の合意がなくても、賃貸人の地位は新所有者に移転する。
(H28 司法 第25問 エ)
土地賃貸借の賃借人は、当該土地の所有権移転に伴い賃貸人たる地位を譲り受けた者に対し、当該土地の所有権移転登記が経由されていないことを理由として、賃料の支払請求を拒むことができない。
(正答) ✕
(解説)
605条の2第1項は、「前条、借地借家法(平成3年法律第90号)第10条又は第31条その他の法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人たる地位は、その譲受人に移転する」と規定し、同条3項は「…賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない」と規定している。したがって、所有権移転登記を経由しない限り、賃貸人の地位の移転は賃借人に対抗できないから、土地の賃借人は当該土地の所有権移転に伴い賃貸人たる地位を譲り受けた者にからの賃料支払い請求を拒むことができる。
605条の2第3項は、賃貸不動産の譲渡に伴う賃貸人の地位の移転について、「第1項…の規定による賃貸人たる地位の移転は、賃貸物である不動産について所有権の移転の登記をしなければ、賃借人に対抗することができない。」と規定している。
本肢の事例では、当該土地の所有権移転登記が経由されておらず、「賃貸物である不動産について所有権の移転の登記」がなされていないため、譲渡人は、賃借人に対し、賃貸人の地位の移転を対抗することができない。したがって、土地賃貸借の賃借人は、当該土地の所有権移転に伴い賃貸人たる地位を譲り受けた者に対し、当該土地の所有権移転登記が経由されていないことを理由として、賃料の支払請求を拒むことができる。
(R2 共通 第25問 ア)
賃貸不動産が譲渡され、その不動産の賃貸人たる地位がその譲受人に移転したときは、譲渡人が負っていた賃借人に対する費用の償還に係る債務は、譲受人が承継する。
第605条の3
条文
不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、その賃貸人たる地位は、 賃借人の承諾を要しないで、譲渡人と譲受人との合意により、譲受人に移転させることができる。この場合においては、前条第3項及び第4項の規定を準用する。
過去問・解説
(H28 司法 第25問 ウ)
対抗力のない賃借権が設定されている土地の所有権の譲渡において、新所有者が旧所有者の賃貸人としての地位を承継するには、賃借人の承諾は必要でない。
(R3 司法 第26問 イ)
賃貸物である不動産が譲渡された場合、譲渡人と譲受人との間で賃貸人たる地位を譲受人に移転させる旨の合意をしても、賃借人の承諾がなければ、賃貸人たる地位を譲受人に移転させることはできない。
第605条の4
条文
不動産の賃借人は、第605条の2第1項に規定する対抗要件を備えた場合において、次の各号に掲げるときは、それぞれ当該各号に定める請求をすることができる。
一 その不動産の占有を第三者が妨害しているとき その第三者に対する妨害の停止の請求
二 その不動産を第三者が占有しているとき その第三者に対する返還の請求
過去問・解説
(H20 司法 第24問 2)
判例の趣旨に照らすならば、不動産の賃借人が賃貸借について対抗要件を具備した場合には、賃借物を権原なく占有する第三者に対し、賃借権に基づき不動産返還請求権を行使することができる。
(H24 司法 第9問 2)
建物の引渡しを受けた建物賃借人は、その建物の使用を妨害された場合、占有権に基づいて妨害排除を求めることはできるが、賃借権に基づいて妨害排除を求めることはできない。
第606条
条文
① 賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う。ただし、賃借人の責めに帰すべき事由によってその修繕が必要となったときは、この限りでない。
② 賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。
過去問・解説
(H26 予備 第11問 イ)
賃借人は、賃貸人が賃借人の意思に反して賃貸借の目的建物を保存するために修繕をしようとする場合、これを拒絶することができる。
(H28 司法 第35問 イ)
土地所有者は、地上権者に対し、土地を使用に適する状態にする義務を負わないが、賃貸人は、賃借人に対し、土地を使用に適する状態にする義務を負う。
(R2 共通 第25問 イ)
賃貸人は、賃借人の責めに帰すべき事由によって賃貸物の使用及び収益のために修繕が必要となったときであっても、その修繕をする義務を負う。
(R6 司法 第37問 エ)
賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとする場合であっても、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は、これを拒むことができる。
(正答) ✕
(解説)
606条2項は、「賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとするときは、賃借人は、これを拒むことができない。」と規定している。また、607条は、「賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は、契約の解除をすることができる」と規定しており、賃借人が保存行為を拒むこと自体を認めているわけではない。したがって、賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をしようとする場合には、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときであっても、賃借人は、これを拒むことができない。
第607条
条文
賃貸人が賃借人の意思に反して保存行為をしようとする場合において、そのために賃借人が賃借をした目的を達することができなくなるときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
第608条
条文
① 賃借人は、賃借物について賃貸人の負担に属する必要費を支出したときは、賃貸人に対し、直ちにその償還を請求することができる。
② 賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第196条第2項の規定に従い、その償還をしなければならない。ただし、裁判所は、賃貸人の請求により、その償還について相当の期限を許与することができる。
過去問・解説
(H20 司法 第24問 5)
建物の賃借人が、賃貸人が修繕すべき屋根からの雨漏りを自ら費用を出して修繕したときは、賃貸人に対して、直ちに修繕費用全額の償還を請求することができる。
(H22 司法 第23問 ア)
賃借人が、賃貸借の目的物について、目的物を通常の使用収益に適する状態で保存するために必要な費用を支出した場合は、賃貸人に対し、賃貸借の終了を待ってその償還を請求することができる。
(H26 予備 第11問 エ)
賃借人は、賃貸借の目的建物の保存のために必要な費用を支出した場合、賃貸借が終了する前であっても、直ちにその費用の償還を賃貸人に請求することができる。
(H26 予備 第11問 ウ)
賃借人は、賃貸借の目的建物の改良のために工事費用を支出した場合において、その価格の増加が現存するときは、その工事について賃貸人から了解を得ていないときであっても、賃貸人の選択に従い、その支出した費用の額又は目的建物の増価額について、賃貸借の終了時にその償還を賃貸人に請求することができる。
(正答) 〇
(解説)
608条2項前段は、「賃借人が賃借物について有益費を支出したときは、賃貸人は、賃貸借の終了の時に、第196条第2項の規定に従い、その償還をしなければならない。」と規定しており、196条2項本文は、「占有者が占有物の改良のために支出した金額その他の有益費については、その価格の増加が現存する場合に限り、回復者の選択に従い、その支出した金額又は増価額を償還させることができる。」と規定している。
したがって、賃借人は、賃貸借の目的建物の改良のために工事費用を支出した場合において、その価格の増加が現存するときは、その工事について賃貸人から了解を得ていないときであっても、「回復者」である賃貸人の選択に従い、その支出した費用の額又は目的建物の増価額について、「賃貸借の終了時」にその償還を賃貸人に請求することができる。
(H27 共通 第24問 1)
借主は、目的物の通常の必要費を負担する。これは、賃貸借及び使用貸借に当てはまる。
第609条
条文
耕作又は牧畜を目的とする土地の賃借人は、不可抗力によって賃料より少ない収益を得たときは、その収益の額に至るまで、賃料の減額を請求することができる。
第611条
条文
① 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。
② 賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合において、残存する部分のみでは賃借人が賃借をした目的を達することができないときは、賃借人は、契約の解除をすることができる。
過去問・解説
(H27 司法 第25問 ウ)
Aは、Bとの間で、Aが所有する2階建ての甲建物を月額50万円の賃料で賃貸する旨の契約を締結し、甲建物をBに引き渡した。その後、Bは、Aの承諾を得て、Cとの間で、甲建物を月額50万円の賃料で転貸する旨の契約を締結し、甲建物をCに引き渡した。それからしばらくして甲建物の屋根の不具合により雨漏りが発生し、Cは、甲建物の2階部分を使用することができなくなった。AがBに対して甲建物の2階部分を使用することができなくなった日以後の賃料の支払を請求した場合、Bは、甲建物の2階部分の割合に相当する賃料については、その支払を拒絶することができる。
(正答) 〇
(解説)
本肢の事例では、甲建物の屋根の不具合により雨漏りが発生し、Cが、甲建物の2階部分を使用することができなくなっているため、「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用…をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるとき」に当たるから、それ以降の甲建物の「賃料は、その使用…をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される」ことになる(611条1項)。具体的には、甲建物の賃料のうち、甲建物の2階部分の割合に相当する賃料は発生しなくなる。
したがって、AがBに対して甲建物の2階部分を使用することができなくなった日以後の賃料の支払を請求した場合、Bは、甲建物の2階部分の割合に相当する賃料については、その支払を拒絶することができる。
(H27 司法 第25問 エ)
Aは、Bとの間で、Aが所有する2階建ての甲建物を月額50万円の賃料で賃貸する旨の契約を締結し、甲建物をBに引き渡した。その後、Bは、Aの承諾を得て、Cとの間で、甲建物を月額50万円の賃料で転貸する旨の契約を締結し、甲建物をCに引き渡した。それからしばらくして甲建物の屋根の不具合により雨漏りが発生し、Cは、甲建物の2階部分を使用することができなくなった。AがCに対して甲建物の2階部分を使用することができなくなった日以後の賃料の支払を請求した場合、Cは、甲建物の2階部分の割合に相当する賃料についても、その支払を拒絶することができない。
(正答) ✕
(解説)
本肢の事例では、甲建物の屋根の不具合により雨漏りが発生し、Cが、甲建物の2階部分を使用することができなくなっているため、「賃借物の一部が滅失その他の事由により使用…をすることができなくなった場合において、それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるとき」に当たるから、それ以降の甲建物の「賃料は、その使用…をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される」ことになる(611条1項)。具体的には、甲建物の賃料のうち、甲建物の2階部分の割合に相当する賃料は発生しなくなる。そして、承諾転貸において、転借人が613条1項に基づいて賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負うのは、「賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度」とする。
したがって、CがAに対して転貸借に基づく賃料債務を直接履行する義務を負うのは、甲建物の1階部分の割合に相当する賃料に限られる。よって、Cは、甲建物の2階部分の割合に相当する賃料については、その支払を拒絶することができる。
第612条
条文
① 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
② 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
過去問・解説
(H28 司法 第35問 ウ)
地上権者は、土地所有者の承諾を得ることなく地上権を第三者に譲渡することができるが、賃借人は、賃貸人の承諾又はそれに代わる裁判所の許可を得なければ、土地賃借権を譲渡することができない。
(正答) 〇
(解説)
612条1項は、賃借権について、「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」と規定しており、借地借家法19条1項は、借地権のうち「建物の所有を目的とする…土地の賃借権」(同法2条1号)について、「借地権者が賃借権の目的である土地の上の建物を第三者に譲渡しようとする場合において、その第三者が賃借権を取得し、又は転借をしても借地権設定者に不利となるおそれがないにもかかわらず、借地権設定者がその賃借権の譲渡又は転貸を承諾しないときは、裁判所は、借地権者の申立てにより、借地権設定者の承諾に代わる許可を与えることができる」と規定している。したがって、賃借人は、賃貸人の承諾又はそれに代わる裁判所の許可を得なければ、土地賃借権を譲渡することができない。これに対し、地上権は、物権であるから、自由に処分することができる。したがって、地上権者は、土地所有者の承諾を得ることなく地上権を第三者に譲渡することができる(佐久間毅「民法の基礎2」第3版263頁)。
第613条
条文
① 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う。この場合においては、賃料の前払をもって賃貸人に対抗することができない。
② 前項の規定は、賃貸人が賃借人に対してその権利を行使することを妨げない。
③ 賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない。
過去問・解説
(H22 司法 第23問 オ)
動産の賃借人が、その所有者である賃貸人の承諾を得てこれを転借人に転貸していたところ、賃借人と賃貸人との間の賃貸借の期間が満了し、同賃貸借が更新されなかった場合、賃貸人は転借人に対して、所有権に基づいて目的物の返還を請求することができる。
(正答) 〇
(解説)
613条3項本文は、「賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意により解除したことをもって転借人に対抗することができない。」と規定しているが、期間満了後の不更新については適用されない。したがって、動産の賃貸人は、賃借人に対し、期間満了による賃貸借契約の終了を対抗することができる。よって、動産の賃借人が、その所有者である賃貸人の承諾を得てこれを転借人に転貸していたところ、賃借人と賃貸人との間の賃貸借の期間が満了し、同賃貸借が更新されなかった場合、賃貸人は転借人に対して、所有権に基づいて目的物の返還を請求することができる。
(H24 共通 第26問 ア)
土地の賃借人が賃貸人の承諾を得て当該土地を転貸したときは、原賃貸借の賃貸人と賃借人との間で原賃貸借を合意解除しても、これをもって転借人に対抗することができない。
(H27 司法 第25問 イ)
Aは、Bとの間で、Aが所有する2階建ての甲建物を月額50万円の賃料で賃貸する旨の契約を締結し、甲建物をBに引き渡した。その後、Bは、Aの承諾を得て、Cとの間で、甲建物を月額50万円の賃料で転貸する旨の契約を締結し、甲建物をCに引き渡した。それからしばらくして甲建物の屋根の不具合により雨漏りが発生し、Cは、甲建物の2階部分を使用することができなくなった。Cは、Bが甲建物の屋根の不具合の修繕を拒絶するときは、Aに対し、甲建物の屋根の不具合を修繕するよう請求することができる。
(H28 共通 第22問 エ)
賃借人が適法に賃借物を転貸した場合において、賃貸人が賃借人に対し賃借物の修繕義務を負うときは、賃貸人は、転借人に対しても直接に賃借物の修繕義務を負う。
(H29 共通 第37問 オ)
賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は賃貸人に対して、賃借物の修繕を請求することができる。
(H30 司法 第25問 ア)
Aは、Bに対し、Aの所有する甲建物を賃料月額10万円で賃貸し、甲建物をBに引き渡した。その後、Bは、Cに対し、甲建物を賃料月額12万円で賃貸し、甲建物をCに引き渡した。AがBC間の賃貸借を承諾していた場合、Aは、Cに対し、甲建物の賃料として月額12万円の支払を請求することができる。
(H30 司法 第25問 イ)
Aは、Bに対し、Aの所有する甲建物を賃料月額10万円で賃貸し、甲建物をBに引き渡した。その後、Bは、Cに対し、甲建物を賃料月額12万円で賃貸し、甲建物をCに引き渡した。AがBC間の賃貸借を承諾していた場合、Cは、甲建物の修繕を直接Aに対し請求することができない。
(H30 司法 第25問 ウ)
Aは、Bに対し、Aの所有する甲建物を賃料月額10万円で賃貸し、甲建物をBに引き渡した。その後、Bは、Cに対し、甲建物を賃料月額12万円で賃貸し、甲建物をCに引き渡した。AがBC間の賃貸借を承諾していた場合において、AがBとの間で甲建物の賃貸借を合意解除したときは、Aは、Cに対し、甲建物の明渡しを請求することができる。
(R2 共通 第25問 エ)
賃借人が適法に賃借物を転貸し、その後、賃貸人が賃借人との間の賃貸借を合意により解除した場合、賃貸人は、その解除の当時、賃借人の債務不履行による解除権を有していたときであっても、その合意解除をもって転借人に対抗することはできない。
第615条
条文
賃借物が修繕を要し、又は賃借物について権利を主張する者があるときは、賃借人は、遅滞なくその旨を賃貸人に通知しなければならない。ただし、賃貸人が既にこれを知っているときは、この限りでない。
第616条
条文
第594条第1項の規定は、賃貸借について準用する。
第616条の2
条文
賃借物の全部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることができなくなった場合には、賃貸借は、これによって終了する。
過去問・解説
(H20 司法 第24問 4)
賃貸借契約の目的物である建物の全部が、契約成立後に不可抗力によって滅失したときは、賃貸借契約は履行不能により終了する。
(H27 司法 第22問 2)
建物の賃貸借契約において、賃借人の責めに帰すべき事由により建物が滅失した場合、その賃貸借契約は法律上当然に終了し、賃借人は、それ以降賃料を支払う義務を負わない。
第617条
条文
① 当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合においては、次の各号に掲げる賃貸借は、解約の申入れの日からそれぞれ当該各号に定める期間を経過することによって終了する。
一 土地の賃貸借 1年
二 建物の賃貸借 3箇月
三 動産及び貸席の賃貸借 1日
② 収穫の季節がある土地の賃貸借については、その季節の後次の耕作に着手する前に、解約の申入れをしなければならない。
過去問・解説
(H22 司法 第23問 エ)
期間の定めのない賃貸借は、いつでも解約の申入れをすることができ、これによって賃貸借は直ちに終了する。
(H27 司法 第23問 オ)
賃貸借契約において当事者が期間を定めなかった場合、借主はいつでも解約の申入れをすることができるが、消費貸借契約において当事者が返還の時期を定めなかった場合、無利息の消費貸借契約のときに限り、借主はいつでも解約の申入れをすることができる。
(R1 司法 第25問 ウ)
資材置場とするためにされた建物所有を目的としない土地の賃貸借に関して、当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、賃貸人がその期間内に解約をする権利を合意により留保したときは、賃貸人は、いつでも解約の申入れをすることができる。
(正答) 〇
(解説)
617条1項柱書前段は、賃貸借契約について、「当事者が賃貸借の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。」と規定している。そして、618条は、「当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、その一方又は双方がその期間内に解約をする権利を留保したときは、前条の規定を準用する。」として、617条を準用している。したがって、資材置場とするためにされた建物所有を目的としない土地の賃貸借に関して、当事者が賃貸借の期間を定めた場合であっても、賃貸人がその期間内に解約をする権利を合意により留保したときは、賃貸人は、いつでも解約の申入れをすることができる。
なお、資材置場とするためにされた建物所有を目的としない土地の賃貸借は、「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権」に当たらず「借地権」として保護されない(借地借家法2条1号)。
(R1 司法 第25問 オ)
資材置場とするためにされた建物所有を目的としない土地の賃貸借に関して、賃貸借の期間を定めなかった場合において、当事者が解約の申入れをしたときは、賃貸借は、解約申入れの意思表示が相手方に到達した時に終了する。
(R4 共通 第23問 イ)
期間の定めのない動産賃貸借契約の賃貸人は、いつでも解約の申入れをすることができる。
(R5 司法 第27問 イ)
賃貸借の期間が定められなかった場合において、Aが解約の申入れをしたときは、賃貸借は直ちに終了する。
(R5 司法 第27問 ウ)
賃貸借の期間が定められた場合において、Aがその期間内に解約をする権利を留保する旨の合意がされたときは、Aは、いつでも解約の申入れをすることができる。
第619条
条文
① 賃貸借の期間が満了した後賃借人が賃借物の使用又は収益を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定する。この場合において、各当事者は、第617条の規定により解約の申入れをすることができる。
② 従前の賃貸借について当事者が担保を供していたときは、その担保は、期間の満了によって消滅する。ただし、第622条の2第1項に規定する敷金については、この限りでない。
過去問・解説
(R1 司法 第25問 エ)
資材置場とするためにされた建物所有を目的としない土地の賃貸借に関して、賃貸借の期間が満了した後賃借人が土地の使用を継続する場合において、賃貸人がこれを知りながら異議を述べないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものと推定される。
第620条
条文
賃貸借の解除をした場合には、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。
過去問・解説
(H24 司法 第28問 3)
賃貸借が解除されたときは、その賃貸借は、契約の時にさかのぼって効力を失う。
(H28 共通 第26問 ア)
委任契約を債務不履行により解除したときは、その解除は、将来に向かってのみその効力を生ずる。
第621条
条文
賃借人は、賃借物を受け取った後にこれに生じた損傷(通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く。以下この条において同じ。)がある場合において、賃貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。
第622条
条文
第597条第1項、第599条第1項及び第2項並びに第600条の規定は、賃貸借について準用する。
過去問・解説
(H27 共通 第24問 4)
借主は、契約が終了した場合、目的物を原状に復さなければならないが、借主が目的物に附属させた物を収去するには、貸主の同意を得る必要がある、との記述は、賃貸借及び使用貸借に当てはまる。
第622条の2
条文
① 賃貸人は、敷金(いかなる名目によるかを問わず、賃料債務その他の賃貸借に基づいて生ずる賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務を担保する目的で、賃借人が賃貸人に交付する金銭をいう。以下この条において同じ。)を受け取っている場合において、次に掲げるときは、賃借人に対し、その受け取った敷金の額から賃貸借に基づいて生じた賃借人の賃貸人に対する金銭の給付を目的とする債務の額を控除した残額を返還しなければならない。
一 賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき。
二 賃借人が適法に賃借権を譲り渡したとき。
② 賃貸人は、賃借人が賃貸借に基づいて生じた金銭の給付を目的とする債務を履行しないときは、敷金をその債務の弁済に充てることができる。この場合において、賃借人は、賃貸人に対し、敷金をその債務の弁済に充てることを請求することができない。
過去問・解説
(H20 司法 第25問 2)
建物賃貸借における敷金は、賃貸借終了後建物明渡義務履行までに生ずる賃料相当額の損害金債権その他賃貸借契約により賃貸人が賃借人に対して取得する一切の債権を担保するものであり、敷金返還請求権は、賃貸借終了後建物明渡完了の時においてそれまでに生じた上記の一切の被担保債権を控除しなお残額がある場合に、その残額につき具体的に発生する。
(H20 司法 第25問 5)
建物賃貸借終了に伴う賃借人の建物明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、特別の約定のない限り、同時履行の関係に立たず、賃貸人は、賃借人から建物明渡しを受けた後に敷金残額を返還すれば足りる。
(H26 司法 第26問 4)
敷金は賃借人が賃貸借期間中に負担する債務を担保するものであるから、賃借人は、賃料の未払がある場合であっても、差し入れてある敷金をもって賃料債務に充当する旨を主張することにより、敷金の額に満つるまでは、未払賃料の支払を拒むことができる。
(H26 司法 第26問 5)
建物の賃貸借契約において、敷金返還請求権は、賃貸借契約が終了し目的建物が明け渡された時点において、それまでに生じた被担保債権を控除した残額につき具体的に発生するものであるから、賃貸借契約が終了した後であっても、目的建物が明け渡される前においては、転付命令の対象とはならない。
(正答) 〇
(解説)
622条の2第1項は、具体的金額の確定した敷金返還請求権が発生する事由の一つとして「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」(1号)を挙げており、これは平成29年改正前民法下における明渡時説(最判昭和48年2月2日)を明文化したものである。したがって、賃貸借契約が終了した後であっても、目的建物が明け渡される前においては、敷金返還請求権は具体的金額が確定されたものとしては発生していないから、転付命令の対象とはならない。判例(最判昭和48年2月2日)も、明渡時説の立場から、「上告人が本件転付命令を得た当時粟田がいまだ本件各家屋の明渡を了していなかつた本件においては、本件敷金返還請求権に対する右転付命令は無効であり、上告人は、これにより右請求権を取得しえなかったものと解すべきであ…る。」として、賃貸借契約終了後から明渡し前における敷金返還請求権に対する転付命令は無効であるとしている。
(H27 司法 第21問 ア)
判例によれば、家屋の賃貸借契約の締結時に敷金が差し入れられた場合、その賃貸借契約の終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、同時履行の関係にない。
(H29 共通 第11問 ア)
AがBから甲建物を賃借し、Bに敷金を交付していた場合において、その賃貸借契約が終了したときは、Aは、敷金が返還されるまで甲建物を留置することができる。
(正答) ✕
(解説)
622条の2第1項は、具体的金額の確定した敷金返還請求権が発生する事由の一つとして「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」(1号)を挙げており、これは平成29年改正前民法下における明渡時説(最判昭和48年2月2日)を明文化したものである。そうすると、賃貸借契約が終了した場合における目的物返還債務と敷金返還債務は同時履行の関係に立たず、目的物返還債務が先履行義務となる。留置権についても同様であり、賃貸借契約が終了しても、明渡しまでの間は、被担保債権となる敷金返還請求権が発生していないから、賃借人は、敷金返還請求権を被担保債権とする留置権を主張することができない。
(R1 司法 第22問 オ)
期間満了による建物の賃貸借契約終了に伴う賃借人の建物明渡義務と賃貸人の敷金返還義務とは、同時履行の関係にある。
(R4 司法 第26問 イ)
AがBからその所有する甲建物を賃借してBに敷金を交付した。Aは、賃貸借契約の存続中、Bに対して、賃料債務の弁済に敷金を充てるよう請求することができる。
(R4 司法 第26問 ウ)
AがBからその所有する甲建物を賃借してBに敷金を交付した。Aは、賃貸借契約が終了したときは、敷金が返還されるまで甲建物を留置することができる。
(正答) ✕
(解説)
622条の2第1項は、具体的金額の確定した敷金返還請求権が発生する事由の一つとして「賃貸借が終了し、かつ、賃貸物の返還を受けたとき」(1号)を挙げており、これは平成29年改正前民法下における明渡時説(最判昭和48年2月2日)を明文化したものである。そうすると、賃貸借契約が終了した場合における目的物返還債務と敷金返還債務は同時履行の関係に立たず、目的物返還債務が先履行義務となる。留置権についても同様であり、賃貸借契約が終了しても、明渡しまでの間は、被担保債権となる敷金返還請求権が発生していないから、賃借人は、敷金返還請求権を被担保債権とする留置権を主張することができない。
(R4 司法 第26問 エ)
AがBからその所有する甲建物を賃借してBに敷金を交付した。Aが賃借権をCに適法に譲渡したときは、AはBに対して敷金の返還を請求することができる。