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横領の罪 - 解答モード

横領罪における「占有」の意義 大判大正4年4月9日

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概要
横領罪の規定にいう占有とは、必ずしも物の握持のみを指すものではなく、事実上及び法律上物に対する支配力を有する状態をも含む。
判例
事案:取締役が会社の財産を横領した事案において、業務上横領罪にいう占有の意義が問題となった。

判旨:「刑法第252条及ヒ同法第253条ニ所謂占有トハ必スシモ物ノ握持ノ意義ノミニ解スヘキニ非ス事実上及ヒ法律上物ニ対スル支配力ヲ有スル状態ヲ汎称スルモノニシテ株式会社ノ取締役ハ其業務上会社ノ財産ヲ事実上及ヒ法律上自由ニ支配シ得ル地位ニ在ルヲ以テ通例ト為スカ故ニ原判決ニ於テ被告カ自己ノ取締役タル職責上保管セル株式会社扶桑銀行ノ金員ヲ引出シ自己ノ用途ニ費消シタリト判示セルハ被告カ取締役トシテ事実上及ヒ法律上支配力ヲ及ホシ得ヘキ状態ニ在ル即チ其占有ニ属スル会社ノ金円ヲ自己ニ領得シタル事実ヲ説示セルモノニ外ナラサレハ被告ノ行為ニ対シテ刑法第253条ヲ適用処断シタルハ相当ナリ」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H25 共通 第18問 2)
株式会社の代表取締役には、会社の所有物について、横領罪の「占有」は認められない。

(正答)

(解説)
判例(大判大4.4.9)は、「刑法第252条及ヒ同法第253条ニ所謂占有トハ必スシモ物ノ握持ノ意義ノミニ解スヘキニ非ス事実上及ヒ法律上物ニ対スル支配力ヲ有スル状態ヲ汎称スルモノ」として、横領罪における占有とは、財物に対する事実上及び法律上の支配をいうことを示している。
そして、株式会社の代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有しており(会社法349条2項)、会社の業務に関する物について法律上の占有を有しているといえる。
したがって、株式会社の代表取締役には、会社の所有物について、横領罪の「占有」が認められる。

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民法上の金銭の占有と横領罪の成否 大判大正11年1月17日

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概要
商業使用人が主人のために売掛代金の取り立てするときは金銭の所有権は主人に所属し、その保管中これを自己の用途に費消したときは横領罪を構成する。自己の占有する他人の金銭を費消する者が後日これを賠償する意思あるか否かは横領罪の成立に影響を及ぼさない。
判例
事案:会社に雇われ集金事務を行う者が同社の売り掛金を取立て自己の用途に費消したという事案において、民法上の金銭は占有と所有が一致することから、横領罪の成否が問題となった。

判旨:「商業使用人カ主人ノ為ニ売掛代金ノ取立ヲ為シタルトキハ金銭ノ所有権ハ主人ニ帰属シ其ノ保管中擅ニ之ヲ自己ノ用途ニ費消シタルトキハ横領罪ヲ構成ス
 自己ノ占有スル他人ノ金銭ヲ費消スル者カ後日之ヲ弁償スルノ意思アリタリヤ否ハ横領罪ノ成立ニ影響ヲ及ホサス
 刑法第253条ニ所謂業務ニハ特定人ノ委託ヲ受ケテ一定ノ事務ヲ行フモノト不特定ナル多数人ノ委託ヲ受ケテ之ヲ行フモノトニ依リ区別アルコトナシ」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H22 司法 第11問 ウ)
甲は、乙社に勤務し、同社の取引先からの集金業務に従事していたところ、取引先から現金50万円を集金した後、これを自己の借金の返済に充てようと思い付き、上司に「集金の途中でひったくりに遭った。」と嘘の報告をし、50万円を同社に納めるのを免れた。甲に業務上横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大11.1.17)は、本肢と同種の事案において、「商業使用人カ主人ノ為ニ売掛代金ノ取立ヲ為シタルトキハ金銭ノ所有権ハ主人ニ帰属シ其ノ保管中擅ニ之ヲ自己ノ用途ニ費消シタルトキハ横領罪ヲ構成ス」とした上で、「自己ノ占有スル他人ノ金銭ヲ費消スル者カ後日之ヲ弁償スルノ意思アリタリヤ否ハ横領罪ノ成立ニ影響ヲ及ホサス」として、被用者が売掛金の取立をした場合にも金銭の所有権は使用者に帰属し、その金銭を費消した場合には、後に弁償する意思があっても業務上横領罪が成立することを示している。
甲が集金した50万円の所有権は、刑事上委託者である乙社に認められるから、当該金銭は他人の物に当たり、50万円を同社に納めるのを免れる行為は横領罪の実行行為に当たる。
したがって、甲には業務上横領罪が成立する。

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共有金に対する横領罪の成立 大判昭和10年8月29日

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概要
共有者の1人が共有金を費消する場合は共有金全部について横領罪が成立する。
判例
事案:共有者の1人が占有する共有金を自己1人のために費消した事案において、横領罪の成否や、横領罪が成立する範囲が問題となった。

判旨:共有者ノ一人カ其ノ占有セル共有金ヲ擅ニ自己1人ノ為費消スルニ於テハ該共有金全部ニ付横領罪成立ス
(※原文を確認できないため、要旨のみを掲載)
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(R6 司法 第6問 1)
甲は、同居している友人Aと一緒に旅行費用として現金を積み立て、同現金を自宅の金庫に入れてAと共に保管していたが、Aに無断で同現金を全て取り出し、自己の借金の返済に充てた。この場合、甲に上記現金の占有が認められるから、甲にはAに対する横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭25.6.6)は、本肢と同種の事案において、共同占有者の1人が無断で財物を自己の下へ移転することは、他の共同占有者の占有を侵害するとして、窃盗罪が成立することを示している。
したがって、甲には、Aに無断で共有して保管していた現金を全て取り出し、自己の借金の返済に充てた行為について、Aに対する窃盗罪が成立する。

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建物の横領罪の成否 札幌高判昭和30年11月17日

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概要
建物売買契約が合意解除されるなどして、売買契約が初めから無効であったものとみなされても、原状回復義務に関して、当事者間に委託信任関係は存在し、横領罪が成立しうる。
判例
事案:建物売買契約の合意解除後、建物所有権移転登記手続未了であることを奇貨としてA会社より金20万円を借受けるに際し前記建物上に抵当権を設定したという事案において、横領罪の成否が問題となった。

判旨:「同建物内の居住者等が期限内に立退かず(四)の条項が履行されなかったところより、被告人は右約束手形金を支払うことができなかったため同年6月22日島田豊次郎に対し、前記売買契約解除の意思表示をなし島田名義にその所有権移転登記手続に必要な権利書、委任状及び印鑑証明書を送付したところ、島田はその頃これを承諾して同書類をも受領し茲に同売買契約は合意解除され、その結果前記建物の所有権は原状回復により島田豊次郎に復帰したこと。それにもかかわらず、被告人はその所有権移転登記手続未了なるを奇貨としてその後昭和28年6月3日旭川市2条通3丁目右5号大洋産業株式会社において同社より金20万円を借受けるに際し擅に前記建物上に抵当権を設定し以てこれを横領したことを優に認定できる。従って本件公訴事実はその証明十分であるといわなければならない。記録及び原審並びに当審取調の各証拠中右認定と相容れない部分はいずれも措信し難く、その他記録並びに当審取調の結果につき精査検討するも右認定をくつがえすに足る証拠はない。なお、弁護人は本件建物の所有権が島田豊次郎に移転したのは昭和28年6月3日以降であるとし、その論証として当時被告人において同建物の固定資産税を納付していたものであり、また、島田は被告人より本件建物代金の支払方法として差入れた金額40万円の約束手形を当時その手裡に保有していたものである2点に徴し明らかである、故に、本件横領罪は成立しない旨主張するが、証人島田豊次郎の当公廷における供述及び前掲原審取調の約束手形及び登記簿謄本を綜合すると、本件建物につき昭和28年8月21日被告人より島田豊次郎に対し同人名義の所有権移転登記手続をなしたことが明らかであるが、右は前記昭和24年6月22日頃本件建物売買契約の合意解除により本件建物の所有権が島田豊次郎に復帰したところ、被告人より受領した印鑑証明書に相違の点があったのでその訂正手続方を催告していたけれども早急に運ばず漸く昭和28年6月22日頃に至り新たに印鑑証明書の交付を受けたので同年8月21日島田豊次郎名義にその所有権移転登記手続がなされたものに過ぎず、従って本件建物の所有権が実体法上島田豊次郎に復帰したのは前段認定のように昭和24年6月22日頃であって昭和28年6月3日以降でないことが認められる。尤も記録及び証人島田豊次郎の当公廷における供述によれば、(一)被告人は本件犯行時である昭和28年6月3日当時本件建物の固定資産税を納付していたこと、(二)島田は前記被告人より本件建物代金の支払方法として受領した金額40万円の約束手形を右当時その手裡に保有していたことが認められるが、同証拠及び原審第3回公判調書中証人島田豊次郎の供述記載並びに前掲原審取調の約束手形を綜合すると、右(一)は本件建物が当時登記簿上被告人名義になっていたためであり、右(二)は前記建物売買契約の合意解除当時同手形の被告人名下の印影を破棄してこれを失効せしめたものであって有効手形として保有していたものでないことを認めることができる。記録及び原審並びに当審取調の各証拠中以上認定に反する部分はいずれも措信できない。故に右(一)、(二)の事実は前段認定の妨げとならない。弁護人の所論は採用するを得ず。されば、原判決が本件公訴事実を否定し被告人に対し無罪の言渡をなしたのは事実を誤認したものであり、その誤が判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、爾余の趣旨に対する判断をなすまでもなく原判決は破棄を免れない。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H20 司法 第18問 ウ)
甲は、17歳の乙と同人所有の絵画の売買契約を締結し当該絵画の引渡しを受けたが、乙が親権者の同意がないことを理由に同契約を取り消した。甲はこれを知りながら、乙に無断で当該絵画を丙に売却して丙に引き渡した場合、甲乙間の売買契約が初めから無効であったものとみなされるため、甲と乙の間に委託信任関係は存在しないこととなるから、甲には横領罪は成立しない。

(正答)

(解説)
裁判例(札幌高判昭30.11.17)は、建物売買契約の合意解除後の横領事案において、「建物…売買契約解除の意思表示をなしV名義にその所有権移転登記手続に必要な権利書、委任状及び印鑑証明書を送付したところ、Vはその頃これを承諾して同書類をも受領し茲に同売買契約は合意解除され、その結果前記建物の所有権は原状回復によりVに復帰したこと。それにもかかわらず、被告人はその所有権移転登記手続未了なるを奇貨としてその後…A株式会社において同社より金20万円を借受けるに際し擅に前記建物上に抵当権を設定し以てこれを横領した…。」として、売買契約が解除により無効となった後においても、原状回復義務について、当事者間における委託信任関係が継続することを前提として横領罪の成立を認めている。
したがって、親権者の取消しにより売買契約が初めから無効であったものとみなされても、原状回復義務に関して、甲乙間に委託信任関係は存在する。
よって、甲が乙に無断で当該絵画を丙に売却して丙に引き渡した行為について、甲には横領罪が成立する。

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不動産の二重売買における横領罪の成否 最三小判昭和30年12月26日

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概要
不動産の所有権が売買によって買主に移転した場合、登記簿上の所有名義がなお売主にあるときは、売主はその不動産を占有するものである、したがっていわゆる二重売買においては横領罪の成立が認められる。
判例
事案:不動産のいわゆる二重売買の事案において、横領罪の成否が問題となった。

判旨:「不動産の所有権が売買によって買主に移転した場合、登記簿上の所有名義がなお売主にあるときは、売主はその不動産を占有するものと解すべく、従っていわゆる二重売買においては横領罪の成立が認められるとする趣旨は、大審院当時くりかえし判例として示されたところであり、この見解は今なお支持せられるべきものである…本件について原判決の是認する第一審の確定した事実は、被告人は判示のように本件山林をAに売却したのであるが、なお登記簿上被告人名義であるのを奇貨とし、右山林をさらにBに売却したというのであるから、原審が横領罪の成立を認めたのは相当であってなんら誤はない。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H18 司法 第5問 ア)
甲は、自己の所有する不動産を乙に売却して代金を受領した後、所有権移転登記をしない間に、乙に無断で、借金をしている丙のため、その不動産に抵当権を設定して登記を完了した。甲に横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭30.12.26)は、不動産の二重売買の事案において、「不動産の所有権が売買によって買主に移転した場合、登記簿上の所有名義がなお売主にあるときは、売主はその不動産を占有するものと解すべく、従っていわゆる二重売買においては横領罪の成立が認められる…。」としている。
そして、抵当権の設定行為についても、抵当権の実行によって換価処分がなされるおそれがあるから、横領行為であるといえる。
したがって、先売買契約の代金受領後に、無断で抵当権を設定しその旨の登記を具備した行為について、甲に横領罪が成立する。


全体の正答率 : 100%

(H20 司法 第18問 イ)
甲が、自己が所有し、登記簿上も自己が所有権者となっている土地を乙に売却し、その売買代金の受領を終え、当該土地の所有権が乙に移転した後、乙がその移転登記を完了する前に、甲が、事情を知った丙に当該土地を売却し、丙がその移転登記を完了した場合には、丙が当該土地の所有権の取得を乙に対抗できるか否かにかかわらず、甲には横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭30.12.26)は、不動産の二重売買の事案において、「不動産の所有権が売買によって買主に移転した場合、登記簿上の所有名義がなお売主にあるときは、売主はその不動産を占有するものと解すべく、従っていわゆる二重売買においては横領罪の成立が認められる…。」としている。
そして、第二譲受人が当該土地の所有権の取得を第一譲受人に対抗できるか否かは横領罪の成立を左右しない。
甲は、乙が所有権移転登記を完了する前に、事情を知った丙に当該土地を売却し所有権移転登記を完了しているから、丙が当該土地の所有権の取得を乙に対抗できるか否かにかかわらず、甲には横領罪が成立する。


全体の正答率 : 100%

(H21 司法 第21問 ア)
甲は、自己が所有し、その旨登記されている家屋を乙に売却して引き渡し、その売買代金を受領した後、乙への所有権移転登記が完了する前に、当該家屋に丙を権利者とする抵当権を設定し、その旨の登記をした。甲は、乙に当該家屋を売却して引き渡している以上、当該家屋は「自己の占有する」物とはいえないので、甲には乙を被害者とする横領罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭30.12.26)は、不動産の二重売買の事案において、「不動産の所有権が売買によって買主に移転した場合、登記簿上の所有名義がなお売主にあるときは、売主はその不動産を占有するものと解すべく、従っていわゆる二重売買においては横領罪の成立が認められる…。」としている。
そして、抵当権の設定行為についても、抵当権の実行によって換価処分がなされるおそれがあるから、横領行為であるといえる。
したがって、甲が乙から売買代金を受領した後、乙への所有権移転登記が完了する前に、当該家屋に丙を権利者とする抵当権を設定しその旨の登記を具備した行為について、甲には乙を被害者とする横領罪が成立する。


全体の正答率 : 100%

(H28 司法 第2問 ア)
甲は、自己が所有する不動産を乙に売却したが、乙への所有権移転登記が完了する前に、同不動産を丙に売却し、丙への所有権移転登記を完了した。甲に横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭30.12.26)は、不動産の二重売買の事案において、「不動産の所有権が売買によって買主に移転した場合、登記簿上の所有名義がなお売主にあるときは、売主はその不動産を占有するものと解すべく、従っていわゆる二重売買においては横領罪の成立が認められる…。」としている。
そして、第二譲受人が当該土地の所有権の取得を第一譲受人に対抗できるか否かは横領罪の成立を左右しない。
したがって、甲が、乙が所有権移転登記を完了する前に、丙に当該土地を売却した行為について、甲には横領罪が成立する。

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債権譲渡人が通知する前に受領した弁済金を費消した場合の横領罪の戒否(R6) 最一小決昭和33年5月1日

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概要
債権譲渡人が未だその通知をしないうちに債務の弁済として受領した金銭を自己のため費消した場合、横領罪が成立する。
判例
事案:債権譲渡人が未だその通知をしないうちに債務の弁済として受領した金銭を自己のため費消したという事案において、横領罪の成否が問題となった。

原審「債権を譲渡して、いまだ債権譲渡の通知を出さなかったとしても、該通知は債務者に対する対抗要件たるに止り、債権を譲渡した相手方たる前記協同組合と被告人が代表者取締役である前記A株式会社との間においては、右債権は完全に譲渡されて、右A株式会社は既に権利を失い、B株式会社から支払われた金員は右協同組合の所有に帰するわけであるから、右A株式会社が所有権を取得するいわれはない。従って被告人が該金員を右債務者より受領保管中自己又は右A株式会社のために擅に使用するにおいては、自己の占有する他人の金員を自己又は第三者のために領得費消したこととなるから、横領罪を構成することは明かである。」

最判:「原判決が同判示のごとき理由から、本件につき横領罪の成立を認めた第1審判決を是認したのも正当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(R6 司法 第6問 3)
A社の代表取締役である甲は、A社が有する債権をB組合に譲渡したが、同債権の債務者Cに対する債権譲渡の通知をする前に、Cから債務の弁済として現金を受領し、同現金をB組合に無断で自己のために費消した。この場合、上記通知がされていないから、甲にはB組合に対する横領罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭33.5.1)は、「債権を譲渡して、いまだ債権譲渡の通知を出さなかったとしても、該通知は債務者に対する対抗要件たるに止り、債権を譲渡した相手方たる前記協同組合と被告人が代表者取締役である前記A株式会社との間においては、右債権は完全に譲渡されて、右A株式会社は既に権利を失い、B株式会社から支払われた金員は右協同組合の所有に帰するわけである…。」とした上で、「自己の占有する他人の金員を自己又は第三者のために領得費消したこととなるから、横領罪を構成することは明かである。」とした原審(広島高判昭32.10.10)の判断を正当であるとしている。
したがって、債権の債務者Cに対する債権譲渡の通知をする前に現金を受領し自己のために費消した行為について、債権譲渡通知がなされていないとしても、甲にはB組合に対する横領罪が成立する。

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盗品売却代金の横領 最三小判昭和36年10月10日

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概要
民法上犯人に対しその返還を請求し得べきものでないとしても、被告人が自己以外の者のためにこれを占有して居るのであるから、その占有中これを着服した以上、横領の罪責を免れ得ない。
判例
事案:窃盗犯人から売却を依頼された盗品の販売代金を着服したという事案において、横領罪の成否が問題となった。

判旨:「刑法252条1項の横領罪の目的物は、単に犯人の占有する他人の物であることを以って足るのであって、その物の給付者において、民法上犯人に対しその返還を請求し得べきものであることを要件としない…。したがって、所論金員は、窃盗犯人たる第1審相被告人において、牙保者たる被告人に対しその返還を請求し得ないとしても、被告人が自己以外の者のためにこれを占有して居るのであるから、その占有中これを着服した以上、横領の罪責を免れ得ない。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H28 司法 第2問 ウ)
甲は、乙から盗品を売却するよう依頼され、同盗品を丙に売却したが、その売却代金を着服した。甲に横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭36.10.10)は、本肢と同種の事案において、「刑法252条1項の横領罪の目的物は、単に犯人の占有する他人の物であることを以って足るのであって、その物の給付者において、民法上犯人に対しその返還を請求し得べきものであることを要件としない…。したがって、所論金員は、窃盗犯人たる第1審相被告人において、牙保者たる被告人に対しその返還を請求し得ないとしても、被告人が自己以外の者のためにこれを占有して居るのであるから、その占有中これを着服した以上、横領の罪責を免れ得ない。」としている。
したがって、盗品の売却代金を着服した行為について、甲に横領罪が成立する。


全体の正答率 : 100%

(R1 共通 第20問 オ)
甲が腕時計の売却代金を費消したことについては、同腕時計の窃盗犯人である乙は甲に対してその代金の引渡しを請求する権利がないので、甲に委託物横領罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭36.10.10)は、本肢と同種の事案において、「刑法252条1項の横領罪の目的物は、単に犯人の占有する他人の物であることを以って足るのであって、その物の給付者において、民法上犯人に対しその返還を請求し得べきものであることを要件としない…。したがって、所論金員は、窃盗犯人たる第1審相被告人において、牙保者たる被告人に対しその返還を請求し得ないとしても、被告人が自己以外の者のためにこれを占有して居るのであるから、その占有中これを着服した以上、横領の罪責を免れ得ない。」としている。
したがって、乙が甲に対してその代金の引渡しを請求する権利がなくとも、甲に委託物横領罪が成立する。


全体の正答率 : 100%

(R3 予備 第8問 5)
窃盗犯人から盗品の売却を依頼された者が、その売却代金を自己の用途に費消するため着服した場合、当該行為は、他人の所有権を侵害する行為であるものの、窃盗犯人との間の委託信任関係は法律上保護に値しないから、横領罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭36.10.10)は、本肢と同種の事案において、「刑法252条1項の横領罪の目的物は、単に犯人の占有する他人の物であることを以って足るのであって、その物の給付者において、民法上犯人に対しその返還を請求し得べきものであることを要件としない…。したがって、所論金員は、窃盗犯人たる第1審相被告人において、牙保者たる被告人に対しその返還を請求し得ないとしても、被告人が自己以外の者のためにこれを占有して居るのであるから、その占有中これを着服した以上、横領の罪責を免れ得ない。」としている。
したがって、窃盗犯人から盗品の売却を依頼された者が、その売却代金を自己の用途に費消するため着服した場合、窃盗犯人との間の委託信任関係は法律上保護に値しないとしても、横領罪が成立する。

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後行行為における横領罪の成否 最大判平成15年4月23日

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概要
委託を受けて他人の不動産を占有する者が、これにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後、これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了したときは、後行の所有権移転行為について横領罪の成立を肯定することができ、先行の抵当権設定行為が存在することは同罪の成立自体を妨げる事情にはならない。
判例
事案:委託を受けて他人の不動産を占有する者が、これにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後、これについてほしいままに売却等の所有権移転行為を行いその旨の登記を了したという事案において、後行行為について横領罪の成否が問題となった。

判旨:「委託を受けて他人の不動産を占有する者が、これにほしいままに抵当権を設定してその旨の登記を了した後においても、その不動産は他人の物であり、受託者がこれを占有していることに変わりはなく、受託者が、その後、その不動産につき、ほしいままに売却等による所有権移転行為を行いその旨の登記を了したときは、委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をしたものにほかならない。したがって、売却等による所有権移転行為について、横領罪の成立自体は、これを肯定することができるというべきであり、先行の抵当権設定行為が存在することは、後行の所有権移転行為について犯罪の成立自体を妨げる事情にはならないと解するのが相当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H21 司法 第21問 オ)
甲は、A会社の代表取締役であるが、権限がないのに、A会社が所有し、その旨登記されている土地について、甲を債務者、乙を権利者とする抵当権を設定し、その旨の登記を完了した後、さらに、権限がないのに、当該土地を丙に売却してその旨の登記を完了した。当該土地に抵当権を設定してその旨の登記をした時点で、甲には業務上横領罪が成立するので、当該土地を丙に売却してその旨の登記を完了した行為についてA会社を被害者とする業務上横領罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最大判平15.4.23)は、「売却等による所有権移転行為について、横領罪の成立自体は、これを肯定することができるというべきであり、先行の抵当権設定行為が存在することは、後行の所有権移転行為について犯罪の成立自体を妨げる事情にはならない…。」としている。
したがって、甲が乙を権利者とする抵当権を設定することで業務上横領罪が成立した後、当該土地を丙に売却してその旨の登記を完了した行為についても、甲には、A会社を被害者とする業務上横領罪が成立する。


全体の正答率 : 100%

(H30 共通 第20問 イ)
甲は、別居している実弟Aとの間で、自己が所有するX市内の土地(以下「本件土地」という。)を代金3000万円で売却する売買契約を締結し、Aから代金全額の支払を受けたものの、本件土地の所有権移転登記は未了のままであった。
そこで、甲は、自己が経営する会社の資金繰りのため、自らが保管していた本件土地の登記済証を利用し、事情を知らないBに対して、本件土地に抵当権を設定するので、それを担保に1000万円を融資してほしい旨申し入れたところ、Bは、これを了承した。数日後、甲は、Bから1000万円の融資を受けた上、Aに無断で本件土地の抵当権設定登記を完了した。
甲が本件土地をAに無断で乙に売却し、所有権移転登記を完了したことについては、それ以前に甲がAに無断で本件土地に抵当権を設定し、その旨の登記を完了したことによって、犯罪の成立は妨げられないので、甲に横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最大判平15.4.23)は、「売却等による所有権移転行為について、横領罪の成立自体は、これを肯定することができるというべきであり、先行の抵当権設定行為が存在することは、後行の所有権移転行為について犯罪の成立自体を妨げる事情にはならない…。」としている。
したがって、甲が本件土地をAに無断で乙に売却し、所有権移転登記を完了した行為についても、甲に業務上横領罪が成立する。


全体の正答率 : 100%

(R3 予備 第8問 4)
所有者から委託を受けて不動産を占有する者が、所有者に無断で、金融機関を抵当権者とする抵当権を同不動産に設定してその旨の登記を了した後において、同不動産の売却代金を自己の用途に費消するため、更に所有者に無断で、第三者に同不動産を売却してその旨の登記を了した場合、先行する抵当権設定行為について横領罪が成立する場合であっても、後行する所有権移転行為について、横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最大判平15.4.23)は、「売却等による所有権移転行為について、横領罪の成立自体は、これを肯定することができるというべきであり、先行の抵当権設定行為が存在することは、後行の所有権移転行為について犯罪の成立自体を妨げる事情にはならない…。」としている。
したがって、第三者に不動産を売却してその旨の登記を了した、後行する所有権移転行為についても、横領罪が成立する。

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横領罪の不法領得の意思 大判大正2年12月16日

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概要
公務員が、自己の保管する公文書を市役所以外に持ち出してこれを隠匿した行為は、自己領得の意思を外形に表示するものであるから、その行為の終局の目的が何かを問わず横領罪が成立する。
判例
事案:市助役(市長の補助人)が、他人と共謀して自己の保管する公文書を市役所以外に持ち出してこれを隠匿した事案において、不法領得の意思が認められるか問題となった。

判旨:「所論市立小學校ノ工事設計ニ關スル青色圖面ヲ以テ市助役タル相被告捨吉ノ保管ニ屬スルモノナリト判定シ而シテ右事實ヲ認メタル證據理由ヲ明示セサルモノトスルモ公文書タル前掲圖面カ市助役ノ保管ニ屬スル事實ハ既ニ説示セル如ク法令上明白ニシテ固ヨリ證明ヲ要セサルヲ以テ原判決ハ此點ニ關シテ何等違法アルモノニアラス而シテ右圖面カ相被告捨吉ノ職務上保管ニ係ル以上ハ原判決所掲各證憑ニ依リテ認メ得ル如ク被告安等カ右相被告捨吉ト之ヲ横領スルコトヲ共謀實行シタル場合ニ於テハ被告安等ハ業務上占有者タル身分ヲ有セサルモ刑法第65條第1項ニ依リ同法第253條ノ業務上横領罪ノ正犯タル罪責ヲ負フハ當然ニシテ唯同法第65條第2項ニ依リ業務上占有者タル身分ナキ被告安等ハ輕キ同法第252條ノ刑ヲ科セラルルニ過キサルモノトス
 …横領罪ハ自己ノ占有内ニ在ル他人ノ物ニ對シテ自己領得ノ意思實行アルニ由リテ成立スルヲ以テ苟モ同罪ノ目的タル物ノ所有者ヲシテ其經濟的利益ヲ喪失セシメ因リテ自己ニ其經濟的利益ヲ收得スル如キ行爲アレハ自己領得ノ意思實行アリタルモノト謂フヘク横領罪ヲ以テ該行爲ヲ論スルハ相當ナリ原判決ノ認定セル事實ニ據レハ被告捨吉等ハ共謀シテ捨吉ノ市助役トシテ保管セル公文書ヲ相被告安ヲシテ市役所以外ニ帶出シテ之ヲ隱匿セシメタル者ニシテ右隱匿ノ行爲ハ所有者タル市ヲシテ其公文書ヲ保存使用スルノ利益ヲ喪失セシメ被告等ニ於テ自由ニ之ヲ處分シ得ヘキ状態ニ措キタルモノ即チ自己領得ノ意思ヲ外形ニ表示シタルモノニ外ナラサレハ其行爲ノ終局ノ目的如何ヲ問ハス被告等ノ行爲ヲ以テ横領罪ニ問擬シタル原判決ハ相當ニシテ本論旨ハ理由ナシ」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H29 司法 第8問 イ)
A市建設部長である甲は、不正工事の発覚を恐れ自宅に隠匿する目的で、自己が業務上保管している公文書である市立小学校の設計書を市役所外に持ち出した。この場合、甲に不法領得の意思は認められず、業務上横領罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最判昭31.12.7)は、本肢と同種の事案において、「市助役トシテ保管セル公文書ヲ相被告安ヲシテ市役所以外ニ帶出シテ之ヲ隱匿セシメタル者ニシテ右隱匿ノ行爲ハ所有者タル市ヲシテ其公文書ヲ保存使用スルノ利益ヲ喪失セシメ被告等ニ於テ自由ニ之ヲ處分シ得ヘキ状態ニ措キタルモノ即チ自己領得ノ意思ヲ外形ニ表示シタルモノニ外ナラサレハ其行爲ノ終局ノ目的如何ヲ問ハス被告等ノ行爲ヲ以テ横領罪ニ問擬シタル原判決ハ相當」として、自己の保管する文書を市役所以外に持ち出し、隠匿する行為は、不法領得の意思の外部的発現であるとして、目的を問わずに横領罪となることを示している。
甲は、自己が業務上保管している公文書である市立小学校の設計書を市役所外に持ち出しており、最終的な目的が不正工事の発覚を恐れ自宅に隠匿する目的であっても、甲に業務上横領罪が成立する。

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第三者の利益を図る目的の下、業務上横領罪が成立するか(R6) 大判昭和11年12月24日

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概要
第三者の利益を図る目的であったとしても背任罪は成立する。
判例
事案:業務上横領及び背任の事案において、247条における背任の目的の内容が問題となった。

判旨:「他人ノ為事務ヲ処理スル者カ本人ノ損害ニ帰スヘキコトヲ認識シナカラ自己若クハ第三者ノ利益ヲ図リ其ノ任務ニ背キタル行為ヲ為シタル以上ハ刑法第247条ニ所謂背任ノ目的アル場合ニ該当スルモノトス」
過去問・解説
全体の正答率 : 0%

(R6 司法 第6問 5)
A村の村長である甲は、A村に住む給与所得者の利益を図る目的で、同給与所得者に対する村民税の徴収につき、A村の条例に何ら規定がなく法令上の根拠がないのに、同給与所得者の収入金額に対し一律に過少に税額を算定して徴収した。この場合、上記給与所得者の利益を図る目的であったとしても、甲にはA村に対する背任罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判昭11.12.24)は、「他人ノ為事務ヲ処理スル者カ本人ノ損害ニ帰スヘキコトヲ認識シナカラ自己若クハ第三者ノ利益ヲ図リ其ノ任務ニ背キタル行為ヲ為シタル以上ハ刑法第247条ニ所謂背任ノ目的アル場合ニ該当スルモノトス」として、第三者の利益を図る場合にも背任罪が成立し得ることを示している。
したがって、甲が、第三者であるA村に住む給与所得者の利益を図る目的であったとしても、甲にはA村に対する背任罪が成立する。

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横領罪における不法領得の意思 最三小判昭和24年3月8日

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概要
横領罪の成立に必要な不法領得の意思とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意思をいうのであって、必ずしも占有者が自己の利益取得を意図することを必要とするものではない。
判例
事案:居村の農業会長が、各農家が農業会に寄託し政府への売渡を委託した供出米を保管中、米穀と魚粕とを交換するため、右保管米を組合外2人に宛て送付して領得したという事案において、不法領得の意思が認められるかが問題となった。

判旨:「横領罪の成立に必要な不法領得の意志とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意志をいうのであって、必ずしも占有者が自己の利益取得を意図することを必要とするものではなく、又占有者において不法に処分したものを後日に補填する意志が行為当時にあったからとて横領罪の成立を妨げるものでもない。本件につき原審の確定した事実によると、被告人は居村の農業会長として、村内の各農家が食糧管理法及び同法に基ずく命令の定めるところによって政府に売渡すべき米穀すなわち供出米を農業会に寄託し政府への売渡を委託したので、右供出米を保管中、米穀と魚粕とを交換するため、右保管米をA組合外2者に宛て送付して横領したというのである。農業会は各農家から寄託を受けた供出米については、政府への売渡手続を終った後、政府の指図によって出庫するまでの間は、これを保管する任務を有するのであるから、農業会長がほしいままに他にこれを処分するが如きことは、固より法の許さないところである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(R2 共通 第2問 4)
甲は、乙から某日までに製茶を買い付けてほしい旨の依頼を受け、その買付資金として現金を預かっていたところ、その現金を確実に補填するあてがなかったにもかかわらず、後日補填するつもりで自己の遊興費に費消した。この場合、甲がたまたま補填することができ、約定どおりに製茶の買い付けを行ったとしても、甲には、横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最判昭24.3.8)は、本肢と同種の事案において、「横領罪の成立に必要な不法領得の意志とは、他人の物の占有者が委託の任務に背いて、その物につき権限がないのに所有者でなければできないような処分をする意志をいうのであって、必ずしも占有者が自己の利益取得を意図することを必要とするものではなく、又占有者において不法に処分したものを後日に補填する意志が行為当時にあったからとて横領罪の成立を妨げるものでもない。」としている。
自己の遊興費に費消している以上、甲たまたま補填することができたとしても、甲には、横領罪が成立する。

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横領罪の成否 最三小決昭和55年7月15日

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概要
自動車販売会社から所有権留保の特約付割賦売買契約に基づいて引渡を受けた自動車を金融業者に対し自己の借入金の担保として提供した行為は横領罪に当たる。
判例
事案:自動車販売会社から所有権留保の特約付割賦売買契約に基づいて引渡を受けた自動車を金融業者に対し自己の借入金の担保として提供したという事案において、横領罪の成否が問題となった。

判旨:「自動車販売会社から所有権留保の特約付割賦売買契約に基づいて引渡を受けた3台の貨物自動車を、右会社に無断で、金融業者に対し自己の借入金の担保として提供した被告人の本件各所為が、横領罪に該当するとした原判断は相当である。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H28 司法 第2問 イ)
甲は、所有権留保の約定付き割賦売買契約に基づき24回の月賦払いで、自動車販売会社から自動車を購入し、同自動車の引渡しを受けたが、3回分を支払った時点で、自己の借金の担保として、同自動車を金融業者に提供した。甲に横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決昭55.7.15)は、本肢と同種の事案において、「貨物自動車を、右会社に無断で、金融業者に対し自己の借入金の担保として提供した被告人の本件各所為が、横領罪に該当する…。」としている。
したがって、3回分を支払った時点で、無断で自己の借金の担保として自動車を金融業者に提供した行為について、甲に横領罪が成立する。


全体の正答率 : 100%

(R3 予備 第8問 1)
所有権留保の約定付き割賦売買契約に基づき24回の均等分割払いで、自動車販売会社から自動車を購入した者が、同車の引渡しを受け、3回分の支払を済ませた時点で、同車の売却代金を自己の生活費として費消するため、同社に無断で、第三者に同車を売却し、これを引き渡した場合、当該行為は、実質的には他人の所有権を侵害する行為ではないから、横領罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(最決昭55.7.15)は、本肢と同種の事案において、「貨物自動車を、右会社に無断で、金融業者に対し自己の借入金の担保として提供した被告人の本件各所為が、横領罪に該当する…。」としている。
したがって、3回分を支払った時点で、売却代金を自己の生活費として費消するため無断で自動車を売却した行為について、横領罪が成立する。

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業務上横領罪の不法領得の意思 最二小決平成13年11月5日

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概要
株式会社の取締役は、同会社の株式の買い占めに対抗するための工作資金として自ら業務上保管していた会社の現金を第三者に交付した。この場合、会社の不利益を回避する意図を有していたとしても、当該現金の交付が会社にとって重大な経済的負担を伴うもので、自己の弱みを隠す意図をも有していたなど、専ら会社のためにしたとは認められないときは、業務上横領罪が成立する。
判例
事案:株式の買占めによる経営権の取得を阻止するための工作を依頼し、その工作資金及び報酬等にAの資金を流用しようと企て、支出権限がないのに、業務上保管中のAの現金合計8億9500万円をFらに交付した事案において、横領罪における不法領得の意思を認めることができるかが問題となった。

判旨:「当時、Aとしては、乗っ取り問題が長期化すると、同社のイメージや信用が低下し、官公庁からの受注が減少したり、社員が流出するなどの損害が懸念されており、被告人らがこうした不利益を回避する意図をも有していたことは、第一審判決が認定し、原判決も否定しないところである。しかし、原判決も認定するように、本件交付は、それ自体高額なものであった上、もしそれによって株式買取りが実現すれば、Fらに支払うべき経費及び報酬の総額は25億5000万円、これを含む買取価格の総額は595億円という高額に上り(当時のAの経常利益は、1事業年度で20億円から30億円程度であった。)、Aにとって重大な経済的負担を伴うものであった。しかも、それは違法行為を目的とするものとされるおそれもあったのであるから、会社のためにこのような金員の交付をする者としては、通常、交付先の素性や背景等を慎重に調査し、各交付に際しても、提案された工作の具体的内容と資金の必要性、成功の見込み等について可能な限り確認し、事後においても、資金の使途やその効果等につき納得し得る報告を求めるはずのものである。しかるに、記録によっても、被告人がそのような調査等をした形跡はほとんどうかがうことができず、また、それをすることができなかったことについての合理的な理由も見いだすことができない。…上記の事情をも考慮すれば、本件交付における被告人の意図は専らAのためにするところにはなかったと判断して、本件交付につき被告人の不法領得の意思を認めた原判決の結論は、正当として是認することができる。
 …当該行為ないしその目的とするところが違法であるなどの理由から委託者たる会社として行い得ないものであることは、行為者の不法領得の意思を推認させる1つの事情とはなり得る。しかし、行為の客観的性質の問題と行為者の主観の問題は、本来、別異のものであって、たとえ商法その他の法令に違反する行為であっても、行為者の主観において、それを専ら会社のためにするとの意識の下に行うことは、あり得ないことではない。したがって、その行為が商法その他の法令に違反するという一事から、直ちに行為者の不法領得の意思を認めることはできないというべきである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H25 共通 第18問 4)
法人の金員を管理する者が、同法人の金員を支出した場合、同支出が商法その他関係法令に照らして違法であっても、横領罪の「不法領得の意思」が認められないことがある。

(正答)

(解説)
判例(最決平13.11.5)は、業務上横領の事案において、「行為の客観的性質の問題と行為者の主観の問題は、本来、別異のものであって、たとえ商法その他の法令に違反する行為であっても、行為者の主観において、それを専ら会社のためにするとの意識の下に行うことは、あり得ないことではない。したがって、その行為が商法その他の法令に違反するという一事から、直ちに行為者の不法領得の意思を認めることはできない…。」としている。


全体の正答率 : 100%

(R2 共通 第2問 3)
株式会社の取締役経理部長甲は、同会社の株式の買い占めに対抗するための工作資金として自ら業務上保管していた会社の現金を第三者に交付した。この場合、甲が、会社の不利益を回避する意図を有していたとしても、当該現金の交付が会社にとって重大な経済的負担を伴うもので、甲が自己の弱みを隠す意図をも有していたなど、専ら会社のためにしたとは認められないときは、甲には、業務上横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平13.11.5)は、本肢と同種の事案において、「本件交付における被告人の意図は専らAのためにするところにはなかったと判断して、本件交付につき被告人の不法領得の意思を認めた原判決の結論は、正当として是認することができる。」として、被告人の意図は専ら会社のためにするところにはなかったことを前提として、業務上横領罪の成立を認めている。
したがって、甲が自己の弱みを隠す意図をも有していたなど、専ら会社のためにしたとは認められないときは、甲には、業務上横領罪が成立する。

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横領罪の成否 大判大正2年6月12日

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概要
委託を受けて占有する他人の物を売り渡そうとしたときに、相手方が購入の意思表示をしなくても、売却の意思表示をもって横領罪が成立する。 
判例
事案:委託を受けて占有する他人の物を売り渡そうとしたときに、相手方が購入の意思表示をしなくても、売却の意思表示をもって横領罪が成立するかが問題となった。

判旨:「苟モ自己ノ占有セル他人ノ物ヲ不法ニ売渡サントスル行為アルニ於テハ相手方カ之ヲ買受クル意思表示ヲ為スヲ竢タスシテ横領罪ハ完成シ其領得物ハ賍物タルノ性質ヲ具有スルモノトス従テ情ヲ知リテ之ヲ買受ケタル相手方ノ行為ハ横領罪ノ共犯ニ非スシテ賍物故買罪ニ該当スルモノトス」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H20 司法 第18問 ア)
甲が、乙から賃借している同人所有の骨董品について、その売却代金を自己の借金の返済に充てるつもりで乙に無断で丙にその買取りを求めた場合、甲の行為は不法領得の意思が外部的に発現したといえるから、丙が買受けの意思表示をしなくても甲には横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(大判大2.6.12)は、「自己ノ占有セル他人ノ物ヲ不法ニ売渡サントスル行為アルニ於テハ相手方カ之ヲ買受クル意思表示ヲ為スヲ竢タスシテ横領罪ハ完成シ其領得物ハ賍物タルノ性質ヲ具有スルモノトス」として、売却による横領行為があった場合、相手方の買受の意思表示なくして横領罪は既遂に達することを示している。
したがって、甲が買取りを求めた行為は横領に当たり、丙が買受けの意思表示をしなくても甲には横領罪が成立する。


全体の正答率 : 100%

(H21 司法 第16問 ウ)
甲に適用される法律を判例の立場に従って検討し、旧法が適用される場合には1を、新法が適用される場合には2を選びなさい。
甲は、自己が所有している宝石を乙に売却する契約を締結してその代金を受領したが、同宝石を乙に引き渡す前に、丙との間で同人に同宝石を売却する契約を締結し、その引渡しを済ませた。丙との前記契約を締結した後、丙に同宝石を引き渡す前に横領罪の法定刑を重くする改正法が施行された。

(正答)1

(解説)
判例(大判大2.6.12)は、「自己ノ占有セル他人ノ物ヲ不法ニ売渡サントスル行為アルニ於テハ相手方カ之ヲ買受クル意思表示ヲ為スヲ竢タスシテ横領罪ハ完成シ其領得物ハ賍物タルノ性質ヲ具有スルモノトス」として、売却による横領行為があった場合、相手方の買受の意思表示なくして横領罪は既遂に達することを示している。
甲は、旧法下において、丙との間で自己の所有する宝石を売却する契約を締結しており、この時点で既遂となる。
したがって、旧法下で既に横領罪が成立している以上、旧法が適用される。


全体の正答率 : 100%

(R3 予備 第8問 3)
所有者から動産を賃借している者が、同動産の売却代金を自己の生活費として費消するため、所有者に無断で、第三者に同動産の売却を申し入れたが、同人から買受けの意思表示がない場合、他人の所有権を侵害する状態には至っていないから、横領罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(大判大2.6.12)は、「自己ノ占有セル他人ノ物ヲ不法ニ売渡サントスル行為アルニ於テハ相手方カ之ヲ買受クル意思表示ヲ為スヲ竢タスシテ横領罪ハ完成シ其領得物ハ賍物タルノ性質ヲ具有スルモノトス」として、売却による横領行為があった場合、相手方の買受の意思表示なくして横領罪は既遂に達することを示している。
したがって、賃借人が売却を申し入れた行為が横領行為に当たり、第三者が買受けの意思表示をしなくても横領罪が成立する。

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誤配達と遺失物横領罪 大判大正6年10月15日

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概要
郵便員による占有を離れた郵便物は、254条にいう占有を離れた他人の物に該当するから、これを領得する行為は、占有離脱物横領罪にあたり窃盗罪とならない。
判例
事案:誤配達により届いた財物を領得した事案において、占有離脱物横領罪又は窃盗罪のいずれが成立するかが問題となった。

判旨:「如上ノ郵便物ハ刑法第254条ニ所謂占有ヲ離レタル他人ノ物ニ該当スルヲ以テ被告カ擅ニ之ヲ領得シタル行為ハ同条ニ依ル横領罪ニ該リ窃盗罪ヲ構成スルモノニ非ス」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H20 司法 第18問 エ)
甲が、不在中の自宅に誤って配達された他人あての贈答品の高級食材を食べてしまった場合、甲の当該食材に対する占有は委託信任関係に基づくものではないので、甲には横領罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(大判大6.10.15)は、「郵便物ハ刑法第254条ニ所謂占有ヲ離レタル他人ノ物ニ該当スルヲ以テ被告カ擅ニ之ヲ領得シタル行為ハ同条ニ依ル横領罪ニ該リ窃盗罪ヲ構成スルモノニ非ス」として、郵便局員の占有を離れた郵便物を領得した場合、窃盗罪ではなく占有離脱物物横領罪が成立することを示している。
したがって、誤配達された他人あての贈答品の高級食材を食べてしまった甲には、横領罪ではなく、占有離脱物横領罪が成立する。

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業務上横領罪の成否 大判昭和6年12月17日

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概要
他人の金銭出納の業務に従事する者が、その保管する金を横領しこれを補填するためさらに保管金を流用しているときには、その全額について業務上横領罪が成立する。
判例
事案:他人の金銭出納の業務に従事する者が、その保管する金を横領しこれを補填するためさらに保管金を流用した事案において、いかなる範囲で横領罪が成立するかが問題となった。

判旨:「他人ノ金銭出納ノ業務ニ従事スル者其ノ保管スル金員ヲ横領シ之ヲ填補スル為更ニ保管金ヲ擅ニ流用シタルトキハ其ノ全額ニ対シ業務上横領罪成立ス」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H29 司法 第8問 エ)
新聞購読料の集金業務に従事する甲は、購読料として集金した現金を遊興のため全額費消して横領した後、その発覚を免れる目的で、新たに購読料として集金した現金を穴埋めに充てた。この場合、穴埋めに充てた現金について、甲に不法領得の意思は認められず、業務上横領罪は成立しない。

(正答)

(解説)
判例(大判昭6.12.17)は、本肢と同種の事案において、「他人ノ金銭出納ノ業務ニ従事スル者其ノ保管スル金員ヲ横領シ之ヲ填補スル為更ニ保管金ヲ擅ニ流用シタルトキハ其ノ全額ニ対シ業務上横領罪成立ス」として、出納業に従事する者が保管金を横領し、その補填のために別の保管金を流用した場合、その全額について横領罪が成立することを示している。
したがって、甲が穴埋めに充てた現金についても、業務上横領罪が成立する。

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他人所有建物と横領罪の成否 最二小決平成21年3月26日

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概要
甲会社から乙及び丙に順次譲渡されたものの、所有権移転登記が未了のため甲会社が登記簿上の所有名義人であった建物を、甲会社の実質的代表者として丙のために預かり保管していた被告人が、甲会社が名義人であることを奇貨とし、乙及び丙から原状回復のための解決金を得ようと企て、上記建物に係る不実の抵当権設定仮登記を了した場合、横領罪が成立する。
判例
事案:他人所有の建物を同人のために預かり保管していた者が、金銭的利益を得ようとして、同建物の電磁的記録である登記記録に不実の抵当権設定仮登記を了したという事案において、横領罪の成否が問題となった。

判旨:「本件仮登記の登記原因とされたAとE会との間の金銭消費貸借契約及び抵当権設定契約は虚偽であり、本件仮登記は不実であるから、電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪が成立することは明らかである。そして、被告人は、本件和解により所有権がB会に移転した本件建物を同会のために預かり保管していたところ、共犯者らと共謀の上、金銭的利益を得ようとして本件仮登記を了したものである。仮登記を了した場合、それに基づいて本登記を経由することによって仮登記の後に登記された権利の変動に対し、当該仮登記に係る権利を優先して主張することができるようになり、これを前提として、不動産取引の実務において、仮登記があった場合にはその権利が確保されているものとして扱われるのが通常である。以上の点にかんがみると、不実とはいえ、本件仮登記を了したことは、不法領得の意思を実現する行為として十分であり、横領罪の成立を認めた原判断は正当である。また、このような場合に、同罪と上記電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪が併せて成立することは、何ら不合理ではないというべきである(なお、本件仮登記による不実記録電磁的公正証書原本供用罪と横領罪とは観念的競合の関係に立つと解するのが相当である。)。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(H28 司法 第2問 エ)
甲は、自己が所有する不動産を乙に売却したが、乙への所有権移転登記が完了する前に、丙との間で金銭消費貸借契約を締結した事実及びその担保として同不動産に係る抵当権設定契約を締結した事実がないにもかかわらず、同不動産について、丙を権利者とする不実の抵当権設定仮登記を完了した。甲に横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平21.3.26)は、本肢と同種の事案において、「不実とはいえ、本件仮登記を了したことは、不法領得の意思を実現する行為として十分であり、横領罪の成立を認めた原判断は正当である。」としている。
甲は、乙に売却後所有権移転登記が完了する前に、丙を権利者とする不実の抵当権設定仮登記を完了しているから、その時点で不法領得の意思を実現したといえ、甲に横領罪が成立する。


全体の正答率 : 0%

(H30 共通 第20問 ア)
甲は、別居している実弟Aとの間で、自己が所有するX市内の土地(以下「本件土地」という。)を代金3000万円で売却する売買契約を締結し、Aから代金全額の支払を受けたものの、本件土地の所有権移転登記は未了のままであった。
 そこで、甲は、自己が経営する会社の資金繰りのため、自らが保管していた本件土地の登記済証を利用し、事情を知らないBに対して、本件土地に抵当権を設定するので、それを担保に1000万円を融資してほしい旨申し入れたところ、Bは、これを了承した。数日後、甲は、Bから1000万円の融資を受けた上、Aに無断で本件土地の抵当権設定登記を完了した。
 甲がAに無断で本件土地に抵当権を設定し、その旨の登記を完了したことについては、甲に横領罪が成立するが、Aは甲の実弟であるので、告訴がなければ公訴を提起することができない。

(正答)

(解説)
判例(最決平21.3.26)は、本肢と同種の事案において、「不実とはいえ、本件仮登記を了したことは、不法領得の意思を実現する行為として十分であり、横領罪の成立を認めた原判断は正当である。」としている。
甲は、実弟Aに売却後所有権移転登記が完了する前に、Bを権利者とする不実の抵当権設定登記を完了しているから、不法領得の意思を実現したといえ、甲に横領罪が成立する。
そして、255条が準用する244条2項は、「244条1項に規定する親族(配偶者、直系血族又は同居の親族)以外の親族との間で犯した同項に規定する罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。」と規定している。
したがって、Aは甲の実弟であるため、告訴がなければ公訴を提起することができない。


全体の正答率 : 100%

(R2 共通 第2問 5)
甲は、自己が所有し、その旨登記されている土地を乙に売却し、その代金を受領したにもかかわらず、乙への移転登記が完了する前に、同土地に自己を債務者とし丙を抵当権者とする抵当権を設定し、その登記が完了した。この場合、同抵当権が実行されることなく、後日、その登記が抹消されたとしても、甲には、横領罪が成立する。

(正答)

(解説)
判例(最決平21.3.26)は、本肢と同種の事案において、「不実とはいえ、本件仮登記を了したことは、不法領得の意思を実現する行為として十分であり、横領罪の成立を認めた原判断は正当である。」としている。
甲は、乙に売却後所有権移転登記が完了する前に、丙を権利者とする不実の抵当権設定登記を完了しているから、不法領得の意思を実現したといえ、甲に横領罪が成立する。
なお、不法領得の意思を実現する行為が行われた時点で横領罪は既遂となるから、同抵当権が実行されることなく、後日、その登記が抹消されたとしても、横領罪の成否に影響を与えない。

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成年後見人と親族相盗例 最二小判平成24年10月9日

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概要
家庭裁判所から選任された成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合、成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって、成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っているのであるから、成年後見人と成年被後見人との間に244条1項所定の親族関係があることを量刑上酌むべき事情として考慮するのは相当ではない。
判例
事案:家庭裁判所から選任された成年後見人であり、かつ、成年被後見人の養父である被告人が、後見の事務として業務上預かり保管中の成年被後見人の預貯金を引き出して横領したという事案において、親族相盗例の適否が問題となった。
判旨:「本件は、家庭裁判所から選任された成年後見人であり、かつ、成年被後見人の養父である被告人が、後見の事務として業務上預かり保管中の成年被後見人の預貯金を引き出して横領したという業務上横領の事案であるところ、所論は、被告人が成年被後見人の養父であることは、刑法255条が準用する同法244条1項の趣旨に鑑み、量刑判断に当たり酌むべき事情であると主張する。しかしながら、家庭裁判所から選任された成年後見人の後見の事務は公的性格を有するものであって、成年被後見人のためにその財産を誠実に管理すべき法律上の義務を負っているのであるから、成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合、成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても、同条項を準用して刑法上の処罰を免除することができないことはもとより、その量刑に当たりこの関係を酌むべき事情として考慮するのも相当ではないというべきである。」
過去問・解説
全体の正答率 : 100%

(R2 司法 第10問 3)
甲は、家庭裁判所から実父乙の成年後見人に選任されていたところ、後見の事務として業務上預かり保管中の乙の預金を引き出して自己の借金の返済に充てた場合、甲の横領行為について刑は免除されない。

(正答)

(解説)
判例(最判平24.10.9)は、本肢と同種の事案において、「成年後見人が業務上占有する成年被後見人所有の財物を横領した場合、成年後見人と成年被後見人との間に刑法244条1項所定の親族関係があっても、同条項を準用して刑法上の処罰を免除することができないことはもとより、その量刑に当たりこの関係を酌むべき事情として考慮するのも相当ではない…。」としている。
したがって、甲は、実父乙の成年後見人であるから、親族相盗例の準用による刑は免除は認められない。

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