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訴え - 解答モード
訴訟物が金銭債権である訴と一定金額の表示の要否 最一小判昭和27年12月25日
概要
判例
判旨:「訴状には請求の趣旨すなわち、原告が訴訟物につき如何なる範囲で如何なる内容の判決を要求するかを記載しなければならず(民訴224条1項、186条、199条1項(現:134条2項、246条、114条1項)参照)もし訴訟物が金銭債権であれば必ずその金額を一定してこれが範囲を明確にすることを要するのであって、このことは、それが給付の訴であると確認の訴であるとにより毫も差異はないのである。ところで本件上告人の訴は不法行為を原因とする損害賠償債権存在の確認を求めるものであり、その訴訟物が金銭債権であることは記録上明白である。しかるに、上告人は本件訴状に右債権の金額を記載せず、その后も遂に訴訟物たる債権の一定金額を表示する措置を採らなかったのであるから右訴は不適法として却下するの外はなく、これと同趣旨に出でた原判決は正当である。」
過去問・解説
(H19 司法 第66問 2)
損害賠償請求訴訟については、損害額の算定が容易でない場合があるから、請求の趣旨に具体的金額を記載することに代え、裁判所が相当と認める金額の支払を求める旨の記載をすることができる。
(H22 共通 第68問 2)
東京都目黒区に住所を有するXは、自ら自動車を運転して横浜市内の交差点に差し掛かったところ、静岡市に住所を有するYの運転する自動車と衝突する交通事故に遭った。そこで、Xは、Yを被告として、不法行為に基づく損害賠償を求める訴えを提起した。
Xが慰謝料の支払のみを求める場合、Xは、請求の趣旨として「被告は、原告に対し、裁判所が相当と認める金額を支払え。」と記載すれば足りる。
(R5 予備 第37問 ウ)
原告が、貸金100万円のうち被告から弁済を受けた70万円を控除した残額である30万円の返還を求める訴えを提起する場合には、原告は、請求を特定するために、訴状において、70万円の弁済を受けたとの事実を記載しなければならない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭27.12.25)は、「訴訟物が金銭債権であれば必ずその金額を一定してこれが範囲を明確にすることを要するのであって、このことは、それが給付の訴であると確認の訴であるとにより毫も差異はない。」としているため、金額の明示は必要となる。
しかし、134条2項2号は、訴状の必要的記載事項の1つとして、「請求の趣旨」を掲げている。また、民事訴訟規則53条1項は、「訴状には、請求の趣旨及び請求の原因(請求を特定するのに必要な事実をいう。)を記載するほか、請求を理由づける事実を具体的に記載し、かつ、立証を要する事由ごとに、当該事実に関連する事実で重要なもの及び証拠を記載しなければならない。」と規定している。
そうすると、原告は、請求原因事実を記載すべきことになるところ、本問の訴えの訴訟物は消費貸借契約に基づく貸金返還請求権(民法587条)であり、その請求原因は①金銭の返還約束、②金銭の交付、③返還時期の合意、④返還時期の到来である。
したがって、弁済を受けた事実は抗弁として被告が主張すべきものであるから、原告は、請求を特定するために、訴状において、70万円の弁済を受けたとの事実を記載する必要はない。
確定した給付判決がある場合に、時効の完成猶予等のために訴えの提起以外に適当な方法がないときは、当該請求権について再度訴えを提起する利益が認められるか 大判昭和6年11月24日
概要
判例
判旨:「依テ按スルニ確定判決ハ主文ニ包含スルモノニ限リ既判力ヲ有スルコトハ民事訴訟法第百九十九条第一項(現:114条1項)ノ規定スル所ナリト雖右ハ同一事案ニ付再訴ヲ禁シタルモノニ非ス苟モ権利保護ヲ国家ニ対シテ要求スル利益アルトキハ同一事件ニ付再ヒ訴求スルコトヲ妨ケサルモノトス然リ而シテ給付訴訟ニ於テ原告勝訴ノ判決確定シタルトキト雖事実上強制執行ヲ為シ得サル場合ナキニ非ス斯ル場合ニ債権者ニ於テ其ノ請求権カ時効ニ因リ消滅スルコトヲ防止セントスルニハ之カ時効中断ノ挙ニ出ツルノ外ナク而モ其ノ時効中断ノ方法ニ種々アリトスルモ裁判上ノ請求(破産ノ申立ヲ包含スル)ニ依ルニ非サレハ到底其ノ目的ヲ達シ得サル場合ナキニ非ス斯ル場合ニ於テ給付ノ判決確定後ニ於ケル時効中断ノ為ニスル再訴ハ権利ノ保護ヲ裁判所ニ要求スル利益アルモノト謂ハサルヘカラス本件ニ於テ上告人ハ曩ニ確定シタル給付判決ノ目的タル手形債権ノ消滅時効ヲ中断センカ為本訴ヲ提起シタルモノナレハ原審ハ宜シク本訴ニ依ルノ外時効中断ノ方法ナキモノナルヤ否ノ事実ヲ審究スルコトヲ要スルニ拘ラス此ノ挙ニ出ツルコトナク論旨摘録ノ如ク判示シテ上告人ノ請求ヲ排斥シタルハ審理不尽又ハ理由不備ノ不法アルモノニシテ論旨ハ理由アルモノトス」
過去問・解説
(H21 司法 第60問 ア)
確定した給付判決がある場合でも、時効完成猶予のために訴えの提起以外に適当な方法がないときは、当該給付判決の対象となった給付請求権について再度訴えを提起する利益が認められる。
(正答)〇
(解説)
判例(大判昭6.11.24)は、「時効中断ノ方法トシテ為スヘキ請求差押仮差押仮処分又ハ承認等何レモ被告(被上告人)ノ住所不明ノ場合ニハ之ヲ実施スルニ由ナク斯ル場合ニ於テ債権者カ時効ヲ中断セントスレハ民事訴訟法第二百三十五条ニヨル訴ノ提起ニヨルノ外ナキモノトス」として、時効完成猶予のために訴えの提起によるほかない場合には、同一債権の給付の訴えについても訴えの利益が認められる余地があることを示している。
したがって、確定した給付判決がある場合でも、時効完成猶予のために訴えの提起以外に適当な方法がないときは、当該給付判決の対象となった給付請求権について再度訴えを提起する利益が認められる。
(H27 予備 第36問 3)
確定した給付判決が存在しても、時効完成猶予のため他に方法がないときには、同一訴訟物につき再度給付の訴えを提起する利益が認められる。
所有権保存登記及びその後順次経由された所有権移転登記の抹消登記手続請求訴訟において一部の被告に敗訴した場合におけるその余の被告に対する請求についての訴の利益の有無 最二小判昭和41年3月18日
概要
判例
判旨:「不動産登記の抹消登記手続を求める請求は、被告の抹消登記申請という意思表示を求める請求であって、その勝訴の判決が確定すれば、それによって、被告が右意思表示をしたものとみなされ(民訴法736条)、その判決の執行が完了するものである。したがって、抹消登記の実行をもって、右判決の執行と考える必要はないから、右抹消登記の実行が可能であるかどうかによって、右抹消登記手続を求める請求についての訴の利益の有無が左右されるものではない。」
過去問・解説
(H21 司法 第60問 エ)
A所有の建物について、Bが所有権保存登記をし、更にBからCへ、CからDへ所有権移転登記が経由された場合において、AがDに対し所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴えを提起し請求を棄却する判決が確定したときは、Aが新たにB及びCに対し所有権保存登記及び所有権移転登記の各抹消登記手続を求める訴えを提起したとしても、その各請求を認容する判決によってB及びC名義の各登記を抹消することはできないから、AのB及びCに対する各請求は、訴えの利益を欠く。
債権に対する仮差押の執行と当該債権についての給付訴訟 最三小判昭和48年3月13日
概要
判例
判旨:「仮差押の目的は、債務者の財産の現状を保存して金銭債権の執行を保全するにあるから、その効力は、右目的のため必要な限度においてのみ認められるのであり、それ以上に債務者の行為を制限するものと解すべきではない。これを債権に対する仮差押について見ると、仮差押の執行によって、当該債権につき、第三債務者は支払を差し止められ、仮差押債務者は取立・譲渡等の処分をすることができなくなるが、このことは、これらの者が右禁止に反する行為をしても、仮差押債権者に対抗しえないことを意味するにとどまり、仮差押債務者は、右債権について、第三債務者に対し給付訴訟を提起しまたはこれを追行する権限を失うものではなく、無条件の勝訴判決を得ることができると解すべきである。このように解して、右仮差押債務者が当該債権につき債務名義を取得し、また、時効を中断するための適切な手段をとることができることになるのである。殊に、もし、給付訴訟の追行中当該債権に対し仮差押がされた場合に仮差押債務者が敗訴を免れないとすれば、将来右仮差押が取り消されたときは、仮差押債務者は第三債務者に対し改めて訴訟を提起せざるを得ない結果となり、訴訟経済に反することともなるのである。そして、以上のように仮差押債務者について考えられる利益は、ひいて、仮差押債権者にとっても、当該債権を保存する結果となる。さらに、第三債務者に対する関係では、もし、右判決に基づき強制執行がされたときに、第三債務者が二重払の負担を免れるためには、当該債権に仮差押がされていることを執行上の障害として執行機関に呈示することにより、執行手続が満足的段階に進むことを阻止しうるものと解すれば足りる(民訴法544条(現:民事執行法3条))。」
過去問・解説
(H30 予備 第35問 1)
債権的請求権に基づく給付の訴えについては、その債権に対して仮差押えの執行がされた場合には、訴えの利益が認められない。
給付訴訟において不執行の合意が認定された場合の訴えの利益及び判決主文 最一小判平成5年11月11日
概要
②給付の訴えにおいて、給付請求権について不執行の合意がある旨の主張がされ、その事実が認められる場合には、裁判所は、その請求権について強制執行をすることができないことを判決主文において明らかにすべきである。
判例
判旨:①「給付訴訟の訴訟物は、直接的には、給付請求権の存在及びその範囲であるから、右請求権につき強制執行をしない旨の合意(以下『不執行の合意』という。)があって強制執行をすることができないものであるかどうかの点は、その審判の対象にならないというべきであり、債務者は、強制執行の段階において不執行の合意を主張して強制執行の可否を争うことができると解される。」
②「給付訴訟において、その給付請求権について不執行の合意があって強制執行をすることができないものであることが主張された場合には、この点も訴訟物に準ずるものとして審判の対象になるというべきであり、裁判所が右主張を認めて右請求権に基づく強制執行をすることができないと判断したときは、執行段階における当事者間の紛争を未然に防止するため、右請求権については強制執行をすることができないことを判決主文において明らかにするのが相当であると解される(最高裁昭和46年(オ)第411号同49年4月26日第二小法廷判決・民集28巻3号503頁参照)。」
過去問・解説
(H30 予備 第35問 2)
給付の訴えについては、その給付に係る請求権について強制執行をしない旨の合意がある場合であっても、訴えの利益が認められる。
(R6 予備 第34問 3)
給付訴訟において、その給付請求権について被告が主張する不執行の合意の事実が認められるときは、裁判所は、その請求権について強制執行をすることができないことを主文において明示しなければならない。
将来給付の訴え 最大判昭和56年12月16日
概要
判例
判旨:「民訴法226条(現:135条)はあらかじめ請求する必要があることを条件として将来の給付の訴えを許容しているが、同条は、およそ将来に生ずる可能性のある給付請求権のすべてについて前記の要件のもとに将来の給付の訴えを認めたものではなく、主として、いわゆる期限付請求権や条件付請求権のように、既に権利発生の基礎をなす事実上及び法律上の関係が存在し、ただ、これに基づく具体的な給付義務の成立が将来における一定の時期の到来や債権者において立証を必要としないか又は容易に立証しうる別の一定の事実の発生にかかつているにすぎず、将来具体的な給付義務が成立したときに改めて訴訟により右請求権成立のすべての要件の存在を立証することを必要としないと考えられるようなものについて、例外として将来の給付の訴えによる請求を可能ならしめたにすぎないものと解される。このような規定の趣旨に照らすと、継続的不法行為に基づき将来発生すべき損害賠償請求権についても、例えば不動産の不法占有者に対して明渡義務の履行完了までの賃料相当額の損害金の支払を訴求する場合のように、右請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予測されるとともに、右請求権の成否及びその内容につき債務者に有利な影響を生ずるような将来における事情の変動としては、債務者による占有の廃止、新たな占有権原の取得等のあらかじめ明確に予測しうる事由に限られ、しかもこれについては請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ執行を阻止しうるという負担を債務者に課しても格別不当とはいえない点において前記の期限付債権等と同視しうるような場合には、これにつき将来の給付の訴えを許しても格別支障があるとはいえない。しかし、たとえ同一態様の行為が将来も継続されることが予測される場合であっても、それが現在と同様に不法行為を構成するか否か及び賠償すべき損害の範囲いかん等が流動性をもつ今後の複雑な事実関係の展開とそれらに対する法的評価に左右されるなど、損害賠償請求権の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず、具体的に請求権が成立したとされる時点においてはじめてこれを認定することができるとともに、その場合における権利の成立要件の具備については当然に債権者においてこれを立証すべく、事情の変動を専ら債務者の立証すべき新たな権利成立阻却事由の発生としてとらえてその負担を債務者に課するのは不当であると考えられるようなものについては、前記の不動産の継続的不法占有の場合とはとうてい同一に論ずることはできず、かかる将来の損害賠償請求権については、冒頭に説示したとおり、本来例外的にのみ認められる将来の給付の訴えにおける請求権としての適格を有するものとすることはできないと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H26 予備 第33問 1)
自らの所有する土地を継続的に不法に占有されている者が将来の賃料に相当する額の損害の賠償を求める訴えには、訴えの利益が認められる。
(正答)〇
(解説)
135条は、「将来の給付を求める訴えは、あらかじめその請求をする必要がある場合に限り、提起することができる。」と規定している。
判例(最大判昭56.12.16)は、「継続的不法行為に基づき将来発生すべき損害賠償請求権についても、例えば不動産の不法占有者に対して明渡義務の履行完了までの賃料相当額の損害金の支払を訴求する場合のように、右請求権の基礎となるべき事実関係及び法律関係が既に存在し、その継続が予測されるとともに、右請求権の成否及びその内容につき債務者に有利な影響を生ずるような将来における事情の変動としては、債務者による占有の廃止、新たな占有権原の取得等のあらかじめ明確に予測しうる事由に限られ、しかもこれについては請求異議の訴えによりその発生を証明してのみ執行を阻止しうるという負担を債務者に課しても格別不当とはいえない点において前記の期限付債権等と同視しうるような場合には、これにつき将来の給付の訴えを許しても格別支障があるとはいえない。」として、不動産の不法占有者に対して明渡義務の履行完了までの賃料相当額の損害金の支払を訴求する場合に、訴えの利益を認めている。
物の給付請求と同時にその執行不能に備えて履行に代わる損害賠償請求を訴えにおいてする場合、かかる代償請求に将来給付の利益が認められるか 大連判昭和15年3月13日
概要
判例
判旨:「株式又ハ物ノ給付ヲ為スヘキ債務者カ其ノ給付ノ強制執行ヲ受ケタルモ其ノ執行奏効セス即執行不能ナル場合ニ於テ債務ノ履行ハ必スシモ不能ナルモノト云フヲ得サルコト勿論ナルモ履行不能ニ因ラサル右孰行不能ノ場合ト雖モ債権者ハ履行ニ代ル損害賠償ヲ請求シ得ヘキモノニシテ此ノ損害賠償ハ畢竟履行遅滞ニ因ル損害賠償ニ他ナラス而シテ本来ノ給付ヲ求ムル訴ニ於テ右損害賠償ノ予備的請求ヲ為シタルトキハ事実審裁判所ハ最後ノ口頭弁論当時ニ於ケル本来ノ給付ノ価額ヲ判定シテ其ノ本来ノ給付ヲ命スルト同時ニ右請求ノ限度内ニ於テ其ノ強制執行不能ナルトキハ該価額相当ノ損害賠償ヲ為スヘキコトヲ命スル判決ヲ為シ得ルモノト解スルヲ妥当トス」
過去問・解説
(H21 司法 第60問 ウ)
物の給付を請求し得る債権者が、本来の給付の請求と執行不能の場合における履行に代わる損害賠償の請求を一の訴えでする場合、損害賠償請求は将来の給付を求めるものであるが、あらかじめ請求をする必要があるものと認められる。
(H27 予備 第36問 4)
物の引渡しが執行不能となる場合に備えての代償請求は、将来の給付の訴えとしてその利益が認められる。
(R5 予備 第38問 ウ)
原告が被告に対して、所有権に基づき機械の引渡しを求めるとともに、強制執行が功を奏しない場合に備えてあらかじめ目的物の時価相当額の代償金の支払を求める場合には、機械の引渡請求を主位的請求とし、代償金の支払請求を予備的請求としなければならない。
(正答)✕
(解説)
物の引渡請求にその物の執行不能を条件とする代償請求としての損害賠償請求を併合する場合について、予備的併合ではなく、単純併合であると解されている。両者は実体法上併存関係にあるからである(伊藤眞「民事訴訟法」第9版690頁)。
したがって、原告が被告に対して、所有権に基づき機械の引渡しを求めるとともに、強制執行が功を奏しない場合に備えてあらかじめ目的物の時価相当額の代償金の支払を求める場合には、機械の引渡請求を主位的請求とし、代償金の支払請求を予備的請求としなければならないわけではない。
なお、判例(大連判昭15.3.13)は、物の引渡請求と代償請求との併合形態については判断を示していないと思われるところ、「実務上は、併存関係にある請求についても解除条件を付すことを許容し、予備的併合と選択的併合と同様に扱うことを許容することがある」との説明もある(伊藤眞「民事訴訟法」第9版690頁)。
遺言無効確認の訴え 最三小判昭和47年2月15日
概要
判例
判旨:「いわゆる遺言無効確認の訴は、遺言が無効であることを確認するとの請求の趣旨のもとに提起されるから、形式上過去の法律行為の確認を求めることとなるが、請求の趣旨がかかる形式をとっていても、遺言が有効であるとすれば、それから生ずべき現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求めるものと解される場合で、原告がかかる確認を求めるにつき法律上の利益を有するときは、適法として許容されうるものと解するのが相当である。けだし、右の如き場合には、請求の趣旨を、あえて遺言から生ずべき現在の個別的法律関係に還元して表現するまでもなく、いかなる権利関係につき審理判断するかについて明確さを欠くことはなく、また、判決において、端的に、当事者間の紛争の直接的な対象である基本的法律行為たる遺言の無効の当否を判示することによって、確認訴訟のもつ紛争解決機能が果たされることが明らかだからである。」
過去問・解説
(H25 予備 第37問 2)
遺言の無効確認を求める訴えについて、確認の利益が認められることはない。
(R4 予備 第34問 1)
相続開始後に遺言の無効確認を求める訴えは、遺言が有効であるとすれば、それから生ずべき現在の特定の法律関係が存在しないことの確認を求めるものと解される場合であっても、確認の利益を欠く。
売買契約の無効確認を求める訴え 最三小判昭和41年4月12日
概要
判例
判旨:「原告の売買無効確認請求の適否について職権をもつて案ずるに、その請求の原因の要旨は、原告と被告溝上間の売買およびその登記は無効であり、したがつて、所有権のない被告溝上と悪意の第三者たる被告常盤産業間の昭和32年11月27日付売買も無効であるから、右売買の無効確認を求めるというのであるが、単に右請求を文言どおりに解釈すれば、前記売買契約の無効であること、すなわち、過去の法律関係(ないし事実)の確認を求めるのと異なるところはない。そして、確認訴訟は特段の規定のないかぎり、現在の権利または法律関係の確認を求め、かつ、これにつき即時確定の利益がある場合にのみ許されるべきであるから、前記の請求については、即時確定の利益があるとはいいがたい。原告としては、確認の訴を提起するためには、右売買契約の無効の結果生ずべき現在の権利または法律関係について直接に確認を求めるべきである。もっとも、右請求を原告の主張するところに照らせば、原告は、右のような現在の権利または法律関係についてその確認を求める趣旨がうかがえないでもない。したがつて、原審としては、本訴請求については、その請求の趣旨を釈明して審理をすべきであるのにかかわらず、これをしないで、ただちに本訴請求について確認の利益のあることを前提として本案について判決した原判決は違法であって、破棄を免れず、以上の点についてさらに釈明して審理を尽くさせるため、売買無効確認請求部分は、原審に差し戻すのが相当である。」
裁判上の和解が無効であることの確認の訴え 大判大正14年4月24日
概要
判例
判旨:「裁判上ノ和解ニ付テモ別訴ニ依リ其ノ無効確認ヲ求ムルコトヲ得ルモノ」
過去問・解説
(H25 共通 第72問 3)
成立した訴訟上の和解について当事者の一方が錯誤取消しによる無効を主張して和解の効力を争うためには、和解が無効であることの確認を求める別訴を提起しなければならない。(改題)
遺産確認の訴えの適法性 最一小判昭和61年3月13日
概要
判例
判旨:「共同相続人間において、共同相続人の範囲及び各法定相続分の割合については実質的な争いがなく、ある財産が被相続人の遺産に属するか否かについて争いのある場合、当該財産が被相続人の遺産に属することの確定を求めて当該財産につき自己の法定相続分に応じた共有持分を有することの確認を求める訴えを提起することは、もとより許されるものであり、通常はこれによって原告の目的は達しうるところであるが、右訴えにおける原告勝訴の確定判決は、原告が当該財産につき右共有持分を有することを既判力をもって確定するにとどまり、その取得原因が被相続人からの相続であることまで確定するものでないことはいうまでもなく、右確定判決に従って当該財産を遺産分割の対象としてされた遺産分割の審判が確定しても、審判における遺産帰属性の判断は既判力を有しない結果(最高裁昭和39年(ク)第114号同41年3月2日大法廷決定・民集20巻3号360頁参照)、のちの民事訴訟における裁判により当該財産の遺産帰属性が否定され、ひいては右審判も効力を失うこととなる余地があり、それでは、遺産分割の前提問題として遺産に属するか否かの争いに決着をつけようとした原告の意図に必ずしもそぐわないこととなる一方、争いのある財産の遺産帰属性さえ確定されれば、遺産分割の手続が進められ、当該財産についても改めてその帰属が決められることになるのであるから、当該財産について各共同相続人が有する共有持分の割合を確定することは、さほど意味があるものとは考えられないところである。これに対し、遺産確認の訴えは、右のような共有持分の割合は問題にせず、端的に、当該財産が現に被相続人の遺産に属すること、換言すれば、当該財産が現に共同相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求める訴えであって、その原告勝訴の確定判決は、当該財産が遺産分割の対象たる財産であることを既判力をもって確定し、したがって、これに続く遺産分割審判の手続において及びその審判の確定後に当該財産の遺産帰属性を争うことを許さず、もって、原告の前記意思によりかなった紛争の解決を図ることができるところであるから、かかる訴えは適法というべきである。もとより、共同相続人が分割前の遺産を共同所有する法律関係は、基本的には民法249条以下に規定する共有と性質を異にするものではないが(最高裁昭和28年(オ)第163号同30年5月31日第三小法廷判決・民集9巻6号793頁参照)、共同所有の関係を解消するためにとるべき裁判手続は、前者では遺産分割審判であり、後者では共有物分割訴訟であって(最高裁昭和47年(オ)第121号同50年11月7日第二小法廷判決・民集29巻10号1525頁参照)、それによる所有権取得の効力も相違するというように制度上の差異があることは否定しえず、その差異から生じる必要性のために遺産確認の訴えを認めることは、分割前の遺産の共有が民法249条以下に規定する共有と基本的に共同所有の性質を同じくすることと矛盾するものではない。したがって、被上告人らの前記請求に係る訴えが適法である。」
過去問・解説
(H25 予備 第37問 3)
ある財産が遺産に属することの確認を求める訴えについて、確認の利益が認められることはない。
(H30 予備 第35問 5)
共同相続人間において、ある財産が被相続人の遺産かどうかに争いがある場合には、当該財産が被相続人の遺産に属することの確認を求める訴えについては、訴えの利益が認められる。
(R4 予備 第34問 2)
共同相続人間における遺産確認の訴えは、特定の財産が現に共同相続人による遺産分割前の共有関係にあることの確認を求めるものと解される場合であっても、確認の利益を欠く。
特定の財産が特別受益財産であることの確認を求める訴え 最三小判平成7年3月7日
概要
判例
判旨:「民法903条1項は、共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本としての贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に右遺贈又は贈与に係る財産(以下『特別受益財産』という。)の価額を加えたものを相続財産とみなし、法定相続分又は指定相続分の中から特別受益財産の価額を控除し、その残額をもって右共同相続人の相続分とする旨を規定している。すなわち、右規定は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額に特別受益財産の価額を加えたものを具体的な相続分を算定する上で相続財産とみなすこととしたものであって、これにより、特別受益財産の遺贈又は贈与を受けた共同相続人に特別受益財産を相続財産に持ち戻すべき義務が生ずるものでもなく、また、特別受益財産が相続財産に含まれることになるものでもない。そうすると、ある財産が特別受益財産に当たることの確認を求める訴えは、現在の権利又は法律関係の確認を求めるものということはできない。過去の法律関係であっても、それを確定することが現在の法律上の紛争の直接かつ抜本的な解決のために最も適切かつ必要と認められる場合には、その存否の確認を求める訴えは確認の利益があるものとして許容される(最高裁昭和44年(オ)第719号同47年11月9日第一小法廷判決・民集26巻9号1513頁参照)が、ある財産が特別受益財産に当たるかどうかの確定は、具体的な相続分又は遺留分を算定する過程において必要とされる事項にすぎず、しかも、ある財産が特別受益財産に当たることが確定しても、その価額、被相続人が相続開始の時において有した財産の全範囲及びその価額等が定まらなければ、具体的な相続分又は遺留分が定まることはないから、右の点を確認することが、相続分又は遺留分をめぐる紛争を直接かつ抜本的に解決することにはならない。また、ある財産が特別受益財産に当たるかどうかは、遺産分割申立事件、遺留分減殺請求に関する訴訟など具体的な相続分又は遺留分の確定を必要とする審判事件又は訴訟事件における前提問題として審理判断されるのであり、右のような事件を離れて、その点のみを別個独立に判決によって確認する必要もない。以上によれば、特定の財産が特別受益財産であることの確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法である。」
過去問・解説
(H21 司法 第60問 オ)
特定の財産が特別受益財産に当たることの確認を求める訴えは、相続分又は遺留分をめぐる紛争を直接かつ抜本的に解決することになるから、確認の利益を有する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平7.3.7)は、「ある財産が特別受益財産に当たるかどうかの確定は、具体的な相続分又は遺留分を算定する過程において必要とされる事項にすぎず、しかも、ある財産が特別受益財産に当たることが確定しても、その価額、被相続人が相続開始の時において有した財産の全範囲及びその価額等が定まらなければ、具体的な相続分又は遺留分が定まることはないから、右の点を確認することが、相続分又は遺留分をめぐる紛争を直接かつ抜本的に解決することにはならない。」とした上で、「特定の財産が特別受益財産であることの確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法である。」としている。
遺言者の生存中に提起した遺言無効確認の訴え 最二小判平成11年6月11日
概要
判例
判旨:「本件において、被上告人が遺言者である上告人A1の生存中に本件遺言が無効であることを確認する旨の判決を求める趣旨は、上告人A2が遺言者である上告人A1の死亡により遺贈を受けることとなる地位にないことの確認を求めることによって、推定相続人である被上告人の相続する財産が減少する可能性をあらかじめ除去しようとするにあるものと認められる。
ところで、遺言は遺言者の死亡により初めてその効力が生ずるものであり(民法985条1項)、遺言者はいつでも既にした遺言を取り消すことができ(同法1022条)、遺言者の死亡以前に受遺者が死亡したときには遺贈の効力は生じない(同法994条1項)のであるから、遺言者の生存中は遺贈を定めた遺言によって何らの法律関係も発生しないのであって、受遺者とされた者は、何らかの権利を取得するものではなく、単に将来遺言が効力を生じたときは遺贈の目的物である権利を取得することができる事実上の期待を有する地位にあるにすぎない(最高裁昭和30年(オ)第95号同31年10月4日第一小法廷判決・民集10巻10号1229頁参照)。したがって、受遺者とされた者は、何らかの権利を取得するものではなく、単に将来遺言が効力を生じたときは遺贈の目的物である権利を取得することができる事実上の期待を有する地位にあるにすぎないである。遺言者が心神喪失の常況にあって、回復する見込みがなく、遺言者による当該遺言の取消し又は変更の可能性が事実上ない状態にあるとしても、受遺者とされた者の地位の右のような性質が変わるものではない。
したがって、被上告人が遺言者である上告人A1の生存中に本件遺言の無効確認を求める本件訴えは、不適法なものというべきである。」
過去問・解説
(R4 予備 第34問 4)
遺言者生存中に遺言の無効確認を求める訴えは、たとえ遺言者が精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にあり、当該遺言の撤回又は変更の可能性が事実上ない状態であっても、確認の利益を欠く。
(正答)〇
(解説)
判例(最判平11.6.11)は、「受遺者とされた者は、何らかの権利を取得するものではなく、単に将来遺言が効力を生じたときは遺贈の目的物である権利を取得することができる事実上の期待を有する地位にあるにすぎないである。遺言者が心神喪失の常況にあって、回復する見込みがなく、遺言者による当該遺言の取消し又は変更の可能性が事実上ない状態にあるとしても、受遺者とされた者の地位の右のような性質が変わるものではない。…したがって、被上告人が遺言者である上告人A1の生存中に本件遺言の無効確認を求める本件訴えは、不適法なものというべきである。」として、確認の利益を否定している。
具体的相続分の価額又は割合の確認を求める訴え 最一小判平成12年2月24日
概要
判例
判旨:「民法903条1項は、共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻、養子縁組のため若しくは生計の資本としての贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、法定相続分又は指定相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除し、その残額をもって右共同相続人の相続分(以下『具体的相続分』という。)とする旨を規定している。具体的相続分は、このように遺産分割手続における分配の前提となるべき計算上の価額又はその価額の遺産の総額に対する割合を意味するものであって、それ自体を実体法上の権利関係であるということはできず、遺産分割審判事件における遺産の分割や遺留分減殺請求に関する訴訟事件における遺留分の確定等のための前提問題として審理判断される事項であり、右のような事件を離れて、これのみを別個独立に判決によって確認することが紛争の直接かつ抜本的解決のため適切かつ必要であるということはできない。したがって、共同相続人間において具体的相続分についてその価額又は割合の確認を求める訴えは、確認の利益を欠くものとして不適法であると解すべきである。」
過去問・解説
(H27 予備 第36問 2)
共同相続人間において具体的相続分についてその価額又は割合の確認を求める訴えは、確認の利益が欠ける。
所有権に基づく給付の訴えが許される場合の所有権確認の訴え 最一小判昭和29年12月16日
概要
判例
判旨:「物上請求の給付の訴をなすことを得る場合においても、その基本たる権利関係につき即時確定の利益があると認められる限りこれが存否確認の訴を提起することは何ら不適法ではない(大審院明治32年11月11日連合民事部判決、民録5輯10号4頁、大正13年5月31日判決、民集3巻260頁参照)。」
過去問・解説
(H27 予備 第35問 2)
XがYに対して甲土地の所有権に基づきその返還を請求することができるときは、甲土地についてのXの所有権を確認する訴えの利益を認めることはできない。
(H30 予備 第35問 3)
所有権確認の訴えについては、その所有権に基づく物権的請求権による給付の訴えを提起することができる場合であっても、即時確定の利益があると認められる限り、訴えの利益が認められる。
宗教法人の代表役員及び責任役員の地位にあることの確認を求める訴えの確認の利益 最一小判昭和44年7月10日
概要
判例
判旨:「被上告人は、本訴において、宗教法人D寺を相手方とすることなく、上告人らに対し、被上告人が同宗教法人の代表役員および責任役員の地位にあることの確認を求めている。しかし、このように、法人を当事者とすることなく、当該法人の理事者たる地位の確認を求める訴を提起することは、たとえ請求を認容する判決が得られても、その効力が当該法人に及ばず、同法人との間では何人も右判決に反する法律関係を主張することを妨げられないから、右理事者の地位をめぐる関係当事者間の紛争を根本的に解決する手段として有効適切な方法とは認められず、したがって、このような訴は、即時確定の利益を欠き、不適法な訴として却下を免れないことは、当裁判所の判例の趣旨とするところである(最高裁昭和39年(オ)第554号同42年2月10日第二小法廷判決民集21巻1号112頁、同39年(オ)第1435号同43年12月24日第三小法廷判決裁判集民事93号登載予定参照)。法人の理事者が、当該法人を相手方として、理事者たる地位の確認を訴求する場合にあっては、その請求を認容する確定判決により、その者が当該法人との間においてその執行機関としての組識法上の地位にあることが確定されるのであるから、事柄の性質上、何人も右権利関係の存在を認めるべきものであり、したがって、右判決は、対世的効力を有するものといわなければならない。それ故に、法人の理事者がこの種の訴を提起する場合には、当該法人を相手方とすることにより、はじめて右理事者の地位をめぐる関係当事者間の紛争を根本的に解決することができることとなる。」
過去問・解説
(R3 予備 第35問 オ)
Xが宗教法人Yの代表役員の地位にあることの確認を求める旨のXのYに対する訴訟において、請求を認容するとの判決が確定した場合に、この判決は、対世的効力を有しない。
書面の真否の意義 最一小判昭和27年11月20日
概要
判例
判旨:「民訴225条(現:134条の2)に定めている書面の真否を確定するための確認の訴は、書面の成立が真正であるか、否か、換言すればある書面がその作成者と主張せられるものにより作成せられたものであるか或はその作成名義を偽わられて作成せられたものであるか、すなわち偽造又は変造であるかを確定する訴訟であるから、本件のように書面の記載内容が実質的に客観的事実に合致するか否かを確定する確認の訴は、同条においては許されていない。また、一般に確認の訴は、特定の法律関係の確定を求めるものであるから、本件のように事実関係の確定を求める確認の訴は法律上認められていないのである。」
過去問・解説
(H30 予備 第35問 4)
法律関係を証する書面の記載内容の真実性に争いがある場合には、その記載内容が真実であることの確認を求める訴えについては、訴えの利益が認められる。
訴訟代理権を証すべき書面の真否確認を求める訴え 最二小判昭和30年5月20日
概要
判例
判旨:「訴訟代理権の有無はそれが問題となる当該訴訟においてこれを審判すべきであり、またそれをもって足るのであって、別訴を提起して訴訟代理権の存否確認を求めることは、確認の利益を欠き許しえないことは当裁判所の判例とするところである(昭和26年(オ)第19号同28年12月24日第一小法廷判決)。そしてこの理は訴訟代理権を証すべき書面の真否確認を求める訴訟についても同様であるといわなければならない。けだし、訴訟代理権を証すべき書面の真否確認を求める目的は訴訟代理権の存否を明確にするにあるのであって、訴訟代理権の存否確認を求める別訴が確認の利益を欠く以上、その存否確定に資すべき訴訟代理権を証すべき書面の真否確認を求める別訴も当然確認の利益を欠くものと認むべきだからである。」
過去問・解説
(H25 予備 第37問 5)
訴訟で当事者の一方の訴訟代理人につきその訴訟代理権の存否が争われた場合において、別訴として提起された、訴訟代理権を証すべき書面の真否確認を求める訴えについて、確認の利益が認められることはない。
債務不存在の確認を求める本訴に対し、当該債務の履行を求める給付の反訴が提起されたときの本訴の訴えの利益 最一小判平成16年3月25日
概要
判例
判旨:「被上告人三井生命を除く被上告人ら(以下『平成7年契約関係被上告人5社』という。)は、上告会社又は上告人Bに対し、平成7年契約中の主契約に基づく死亡保険金について保険金支払債務の不存在確認を求め(以下『第2事件』という。)、これに対する反訴として、上告会社は被上告人大同生命、被上告人日本生命、被上告人明治安田生命及び被上告人住友生命に対し、上告人Bは被上告人明治安田生命及び被上告人朝日生命に対し、平成7年契約に基づく各保険金及びその遅延損害金の支払を求めている(以下『第3事件』という。)。…第2事件の平成7年契約関係被上告人…の上記保険金支払債務の不存在確認請求に係る訴えについては、第3事件の上告人らの平成7年契約に基づく保険金等の支払を求める反訴が提起されている以上、もはや確認の利益を認めることはできない。」
過去問・解説
(H26 予備 第33問 4)
債務不存在の確認を求める本訴に対し、当該債務の履行を求める給付の反訴が提起されたときは、本訴の訴えの利益は失われる。
株主以外の者に新株引受権を与える旨の株主総会特別決議につき決議取消しの訴えが係属する間に、その決議に基づき新株の発行が行なわれてしまった場合の訴えの利益 最二小判昭和37年1月19日
概要
判例
判旨:「形成の訴は、法律に規定のある場合に限って許される訴であるから、法律の規定する要件を充たす場合には訴の利益の存するのが通常であるけれども、その後の事情の変化により右利益を欠くに至る場合がないわけではない(当裁判所昭和27年(オ)第1150号、同28年12月23日大法廷判決、民事判例集7巻13号1516頁参照)。株主以外の者に新株引受権を与えるための株主総会特別決議につき決議取消の訴が係属する間に、右決議に基き新株の発行が行われてしまった本件の如きもまたこの場合にあたると解すべきである。」
過去問・解説
(H27 予備 第36問 1)
新株予約権の募集事項の決定につき株主総会決議を要する場合において、当該決議の取消訴訟が係属中に当該新株予約権が発行されたとしても、当該訴えの利益は失われない。
重婚における後婚の離婚による解消と後婚の取消の訴え 最三小判昭和57年9月28日
概要
判例
判旨:「重婚の場合において、後婚が離婚によって解消されたときは、特段の事情のない限り、後婚が重婚にあたることを理由としてその取消を請求することは許されないものと解するのが相当である。けだし、婚姻取消の効果は離婚の効果に準ずるのであるから(民法748条、749条)、離婚後、なお婚姻の取消を請求することは特段の事情がある場合のほか、法律上その利益がないものというべきだからである。」
過去問・解説
(H21 司法 第60問 イ)
重婚を理由とする後婚の取消訴訟の係属中に、後婚が離婚によって解消された場合でも、後婚の取消しを求める形成訴訟についての訴えの利益は依然として存在する。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭57.9.28)は、重婚を理由とする後婚の取消訴訟の係属中に、後婚が離婚によって解消された事案において、「重婚の場合において、後婚が離婚によって解消されたときは、特段の事情のない限り、後婚が重婚にあたることを理由としてその取消を請求することは許されない…。」とした上で、その理由について、「婚姻取消の効果は離婚の効果に準ずるのであるから(民法748条、749条)、離婚後、なお婚姻の取消を請求することは特段の事情がある場合のほか、法律上その利益がないものというべきだからである。」として、重婚を理由とする後婚の取消訴訟の係属中に、後婚が離婚によって解消された場合、訴えの利益が認められないことを示している。
(H26 予備 第33問 5)
婚姻取消訴訟の係属中に、当該婚姻が離婚により解消されても、 訴えの利益は失われない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭57.9.28)は、重婚を理由とする後婚の取消訴訟の係属中に、後婚が離婚によって解消された事案において、「重婚の場合において、後婚が離婚によって解消されたときは、特段の事情のない限り、後婚が重婚にあたることを理由としてその取消を請求することは許されない…。」とした上で、その理由について、「婚姻取消の効果は離婚の効果に準ずるのであるから(民法748条、749条)、離婚後、なお婚姻の取消を請求することは特段の事情がある場合のほか、法律上その利益がないものというべきだからである。」として、婚姻取消訴訟の係属中に、当該婚姻が離婚により解消された場合、訴えの利益は認められないことを示している。
境界確定の訴えの性質 最二小判昭和41年5月20日
概要
②境界確定の訴えは、当事者相互の相接する各所有地間の境界が不明であるかまたは争いがあることの主張がなされれば足り、原告において特定の境界線の存在を主張する必要はない。
判例
判旨:①「被上告人の上告人に対する本件訴は、当事者相互の相接する各所有土地間の境界に争があるため、その境界を現地に即し具体的に定める創設的判決を求める、いわゆる境界確定の訴であって、所論B地区が被上告人の所有に属することの確認を求める所有権確認の訴ではなく、相隣者間の土地所有権の範囲の確認を目的とする訴でもない。」
②「いわゆる境界確定の訴にあっては、当事者間の相接する所有地相互の境界が不明ないし争あることの主張がなされれば十分であって、原告において特定の境界線の存在を主張する必要はない…。」
過去問・解説
(H29 予備 第44問 5)
所有権確認訴訟では、請求の趣旨において原告の主張する土地所有権の範囲を特定する必要があるが、筆界(境界)確定訴訟では、請求の趣旨において原告の主張する筆界(境界)を特定する必要はない。
境界についての当事者の合意と境界の確定 最三小判昭和42年12月26日
概要
判例
判旨:「相隣者間において境界を定めた事実があっても、これによって、その一筆の土地の境界自体は変動しないものというべきである(昭和31年12月28日当裁判所第二小法廷判決・民集10巻12号1639参照)。したがって、右合意の事実を境界確定のための一資料にすることは、もとより差し支えないが、これのみにより確定することは許されないものというべきである。」
過去問・解説
(H20 司法 第56問 4)
筆界(境界)確定の訴えにおいて、被告が原告の請求を認諾する意思表示をしている場合であっても、裁判所は、直ちに認諾により訴訟を終了させることはできないが、証拠調べをした結果、裁判所も原告の主張する境界が相当であるとの心証に至った場合には、認諾により訴訟を終了させることができる。
(H22 共通 第56問 オ)
筆界(境界)確定の訴えにおいて、両当事者が隣接する土地の間にある溝の中央線を筆界とする旨を合意した場合には、裁判所は当該合意に従って筆界(境界)を定めなければならない。
(H25 共通 第72問 5)
筆界(境界)確定の訴えにおいて、筆界を定める効果を有する内容の和解をすることはできない。
(H29 予備 第44問 1)
所有権確認訴訟では、裁判上の和解により土地所有権の範囲を定めることができるが、筆界(境界)確定訴訟では、裁判上の和解により筆界(境界)を定めることができない。
(正答)〇
(解説)
所有権確認訴訟では、裁判上の和解により土地所有権の範囲を定めることができる(267条)。
判例(最判昭42.12.26)は、「相隣者間において境界を定めた事実があっても、これによって、その一筆の土地の境界自体は変動しないものというべきである…。したがって、右合意の事実を境界確定のための一資料にすることは、もとより差し支えないが、これのみにより確定することは許されないものというべきである。」としている。
したがって、筆界(境界)確定訴訟では、当事者に訴訟物につき自由に処分する権利があるとはいえないこととなるから、裁判上の和解により境界を定めることはできない。
境界確定の訴えの当事者適格 最三小判平成7年3月7日
概要
判例
判旨:「境界確定を求める訴えは、公簿上特定の地番により表示される甲乙両地が相隣接する場合において、その境界が事実上不明なため争いがあるときに、裁判によって新たにその境界を定めることを求める訴えであって、裁判所が境界を定めるに当たっては、当事者の主張に拘束されず、控訴された場合も民訴法385条(現:304条)の不利益変更禁止の原則の適用もない(最高裁昭和37年(オ)第938号同38年10月15日第三小法廷判決・民集17巻9号1220頁参照)。右訴えは、もとより土地所有権確認の訴えとその性質を異にするが、その当事者適格を定めるに当たっては、何ぴとをしてその名において訴訟を追行させ、また何ぴとに対し本案の判決をすることが必要かつ有意義であるかの観点から決すべきであるから、相隣接する土地の各所有者が、境界を確定するについて最も密接な利害を有する者として、その当事者となるのである。したがって、右の訴えにおいて、甲地のうち境界の全部に接続する部分を乙地の所有者が時効取得した場合においても、甲乙両地の各所有者は、境界に争いがある隣接土地の所有者同士という関係にあることに変わりはなく、境界確定の訴えの当事者適格を失わない。なお、隣接地の所有者が他方の土地の一部を時効取得した場合も、これを第三者に対抗するためには登記を具備することが必要であるところ、右取得に係る土地の範囲は、両土地の境界が明確にされることによって定まる関係にあるから、登記の前提として時効取得に係る土地部分を分筆するためにも両土地の境界の確定が必要となるのである(最高裁昭和57年(オ)第97号同58年10月18日第三小法廷判決・民集37巻8号1121頁参照)。」
過去問・解説
(H22 共通 第56問 ア)
甲地の所有者Xが甲地に隣接する乙地の所有者Yに対し、甲地と乙地の筆界(境界)確定の訴えを提起した場合に、Yが甲地のうち筆界の全部に接する部分を時効取得したときには、筆界の両側の土地がYの所有に帰することになるから、Xは原告適格を喪失する。
(H25 予備 第32問 ウ)
XのYに対する筆界(境界)確定の訴えにおいて、Yが筆界に争いのある隣接土地の賃借人である場合には、Xの訴えが被告適格を欠くものとして却下されることはない。
(正答)✕
(解説)
判例(最判平7.3.7)は、「境界確定を求める訴え…は、もとより土地所有権確認の訴えとその性質を異にするが、その当事者適格を定めるに当たっては、何ぴとをしてその名において訴訟を追行させ、また何ぴとに対し本案の判決をすることが必要かつ有意義であるかの観点から決すべきであるから、相隣接する土地の各所有者が、境界を確定するについて最も密接な利害を有する者として、その当事者となるのである。」として、境界確定の訴えの当事者は、相隣接する土地の各所有者に限られることを示している。
したがって、XのYに対する筆界(境界)確定の訴えにおいて、Yが筆界に争いのある隣接土地の賃借人である場合には、Xの訴えが被告適格を欠くものとして却下される。
(H29 予備 第44問 4)
所有権確認訴訟では、相隣地の各所有者が当事者適格を有するが、筆界(境界)確定訴訟では、相隣地の各登記名義人が当事者適格を有する。
(R4 予備 第35問 エ)
原告が自己の所有する甲土地に隣接する乙土地の所有者を被告として筆界確定の訴えを提起したが、被告が甲土地の一部の時効取得を主張し、それが認められることにより、確定を求めた筆界の全部が被告の所有する土地の内部に存在することが明らかになった場合には、原告は当事者適格を失う。
境界確定訴訟の控訴審における不利益変更禁止の原則 最三小判昭和38年10月15日
概要
②①が実際上控訴人にとって不利であり、附帯控訴をしない被控訴人に有利である場合であっても、不利益変更禁止の原則の適用はないものと解する。
判例
判旨:①「境界確定訴訟にあっては、裁判所は当事者の主張に覊束されることなく、自らその正当と認めるところに従って境界線を定むべきものであって、すなわち、客観的な境界を知り得た場合にはこれにより、客観的な境界を知り得ない場合には常識に訴え最も妥当な線を見出してこれを境界と定むべく、かくして定められた境界が当事者の主張以上に実際上有利であるか不利であるかは問うべきではないのであり、当事者の主張しない境界線を確定しても民訴186条(現:246条)の規定に違反するものではないのである(大審院大正12年6月2日民事連合部判決、民集2巻345頁、同院昭和11年3月10日判決、民集15巻695頁参照)。されば、第1審判決が一定の線を境界と定めたのに対し、これに不服のある当事者が控訴の申立をした場合においても、控訴裁判所が第1審判決の定めた境界線を正当でないと認めたときは、第1審判決を変更して、自己の正当とする線を境界と定むべきものであ…る。」
②「その結果が控訴人にとり実際上不利であり、附帯控訴をしない被控訴人に有利であっても問うところではなく、この場合には、いわゆる不利益変更禁止の原則の適用はないものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H20 司法 第56問 3)
筆界(境界)確定の訴えにおいて、審理の結果、証拠上筆界が明らかにならなかった場合には、裁判所は、請求棄却判決をする。
(H20 司法 第56問 5)
筆界(境界)確定の訴えにおいて、第1審判決を不服として第1審被告が控訴した場合、不利益変更禁止の原則により、控訴審裁判所は、第1審判決を第1審原告に有利に変更することはできない。
(H22 共通 第56問 エ)
筆界(境界)確定の訴えの控訴審においては、不利益変更禁止の原則の適用はない。
(H29 予備 第44問 3)
所有権確認訴訟では、原告の主張する所有権の範囲より原告に有利な内容の判決をすることはできないが、筆界(境界)確定訴訟では、原告の主張する筆界(境界)より原告に有利な内容の判決をすることはできる。
(R1 予備 第42問 3)
境界確定訴訟において、裁判所は、原告の請求を棄却するとの判決をすることができる。
(R4 予備 第35問 イ)
一定の線を筆界と定めた第1審判決に対し、これに不服のある当事者の一方のみが控訴し、附帯控訴がされていない場合であっても、控訴裁判所は、第1審判決を変更して、第1審判決が定めた筆界よりも更に控訴人にとって不利な筆界を定めることができる。
(正答)〇
(解説)
304条は、「第1審判決の取消し及び変更は、不服申立ての限度においてのみ、これをすることができる。」として、不利益変更禁止原則について規定している。
これについて、判例(最判昭38.10.15)は、「第1審判決が一定の線を境界と定めたのに対し、これに不服のある当事者が控訴の申立をした場合においても、控訴裁判所が第1審判決の定めた境界線を正当でないと認めたときは、第1審判決を変更して、自己の正当とする線を境界と定むべきものであり、その結果が控訴人にとり実際上不利であり、附帯控訴をしない被控訴人に有利であっても問うところではなく、この場合には、いわゆる不利益変更禁止の原則の適用はない…。」としている。
したがって、控訴裁判所は、第1審判決を変更して、第1審判決が定めた筆界よりも更に控訴人にとって不利な筆界を定めることができる。
共有物分割の訴えにおいて分割の方法を具体的に指定することの要否 最三小判昭和57年3月9日
概要
共有物を現物で分割することが不可能であるか又は現物で分割することによつて著しく価格を損するおそれがあるときには、裁判所は、共有物を競売に付しその売得金を共有者の持分の割合に応じて分割することを命ずることができる。
判例
判旨:「共有物分割の訴えにおいては、当事者は、単に共有物の分割を求める旨を申し立てれば足り、分割の方法を具体的に指定することは必要でないとともに、共有物を現物で分割することが不可能であるか又は現物で分割することによって著しく価格を損するおそれがあるときには、裁判所は、当事者が申し立てた分割の方法にかかわらず、共有物を競売に付しその売得金を共有者の持分の割合に応じて分割することを命ずることができるものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H25 共通 第69問 オ)
共有物分割の訴えにおいて、原告が分割の方法として共有物の現物を分割することを求めているときは、裁判所は、当該共有物を競売してその売得金で分割する内容の判決をすることができない。
債権者代位訴訟に債権者が当事者参加して第三債務者に対し提起した同債権に係る給付訴訟 最三小判昭和48年4月24日
概要
判例
判旨:「債権者が民法423条1項の規定により代位権を行使して第三債務者に対し訴を提起した場合であっても、債務者が民訴法71条(現:47条)により右代位訴訟に参加し第三債務者に対し右代位訴訟と訴訟物を同じくする訴を提起することは、民訴法231条(現:142条)の重複起訴禁止にふれるものではないと解するのが相当である。けだし、この場合は、同一訴訟物を目的とする訴訟の係属にかかわらず債務者の利益擁護のため訴を提起する特別の必要を認めることができるのであり、また、債務者の提起した訴と右代位訴訟とは併合審理が強制され、訴訟の目的は合一に確定されるのであるから、重複起訴禁止の理由である審判の重複による不経済、既判力抵触の可能性および被告の応訴の煩という弊害がないからである。したがって、債務者の右訴は、債権者の代位訴訟が係属しているというだけでただちに不適法として排斥されるべきものと解すべきではない。」
過去問・解説
(H19 司法 第61問 4)
YはAに建物新築工事を注文した。Aはこれを請け負い、同建物の左官工事についてはXがAから下請けした。建物は完成してYに引き渡されたものの、AのYに対する請負代金債権(以下「甲債権」という。)についても、XのAに対する下請工事代金債権(以下「乙債権」という。)についても弁済がなされないまま、Aが経営に行き詰まり、無資力となった。そこで、Xは、Aから乙債権について弁済を受けられないとして、債権者代位権に基づき、Yを被告として甲債権について支払を求める訴えを提起した。
判例によれば、Aが、Xに対しては乙債権の弁済を理由にその不存在の確認を求め、Yに対しては甲債権についての支払を求めて、本件訴訟に独立当事者参加をすることは、重複起訴禁止の趣旨に照らして許されない。
(H22 共通 第71問 5)
判例によれば、債権者が債務者に対する甲債権を被保全債権とし、債務者が第三債務者に対して有する乙債権に基づく金銭の支払を求めて債権者代位訴訟を提起した場合、債務者が債権者に対し甲債権の不存在を主張し、第三債務者に対し乙債権に基づく自己への金銭の支払を求めて独立当事者参加をすることは許されない。
(H23 予備 第45問 4)
Aに対して売買代金債権を有すると主張するXが、Aに代位して、AのYに対する貸金債権に基づき、Yに対して当該貸金の返還を求める訴えを提起した。
Xの主張する売買代金債権が弁済によって消滅したと主張するAは、当該訴訟に独立当事者参加をすることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭48.4.24)は、「債権者が民法423条1項の規定により代位権を行使して第三債務者に対し訴を提起した場合であっても、債務者が民訴法71条(現:47条)により右代位訴訟に参加し第三債務者に対し右代位訴訟と訴訟物を同じくする訴を提起することは、民訴法231条(現:142条)の重複起訴禁止にふれるものではない。…したがって、債務者の右訴は、債権者の代位訴訟が係属しているというだけでただちに不適法として排斥されるべきもの…。」としている。
本肢において、Xの提起した債権者代位訴訟にAが独立当事者参加することは、重複起訴禁止に触れない。
したがって、Aは、当該訴訟に独立当事者参加をすることができる。
手形金債務不存在確認請求の訴えの係属中に同一の手形金請求の訴えが手形訴訟で提起された場合 大阪高判昭和62年7月16日
概要
判例
判旨:「別件の訴のうち手形金債務不存在確認を求める請求に関する部分と本件の訴は、いずれも同一当事者間において、本件手形金債権につき、前者が消極的にその不存在の確認を求め、後者が積極的にその存在を前提として手形金及び利息の支払を求めるものであって、両請求に係る判決の既判力の範囲は同一であるから、同一の事件に当たるといわなければならず、したがって控訴人が右支払を求める請求を別件の訴に対する反訴の形式をもってすることなく、独立の訴の提起によってすれば、民訴法231条(現:142条)の規定が防止しようとしている審理判断の重複による不経済、既判力抵触の可能性及び被告の応訴の煩という弊害が生じることがあるのは避けがたいところである…手形訴訟は厳格な証拠制限が存する点において通常訴訟と異なる訴訟手続であると解されるから、手形金債務不存在確認請求訴訟において手形金支払請求の反訴を提起するには、手形訴訟によることは許されず、通常訴訟の方式によらざるを得ない。そうすると…手形金債務不存在確認請求訴訟が先に裁判所に係属した場合にはもはや手形債権者は、手形訴訟を提起することができないことになる。しかし、かかる場合に手形訴訟手続利用の途を閉ざすことは、手形訴訟が手形債権者に対して通常訴訟によるより格段に簡易迅速に債務名義を取得させ、かつ、強制執行による満足を得せしめるとともに、これにより手形の経済的効用を維持するのに資することを目的とする制度であることを考えると、手形債権者に著しい不利益を与えるばかりでなく、手形債務者において先制的に手形金債務不存在確認の訴を提起して手形債権者からの手形訴訟の提起を封殺することを可能にし、不当に手形金支払の引き延ばしを図ることにより、手形訴訟制度を設けた趣旨を損なうおそれもある。このような事態に至るのは避けるべきであり、手形債権者が通常訴訟とは手続を異にする手形訴訟を選び、簡易迅速な審判を求めるならば、その手続の利用によって受ける利益を保護する必要があるから、手形金債務不存在確認請求訴訟の係属中に手形訴訟を提起することは、民訴法231条(現:142条)の重複起訴の禁止に抵触しないと解するのが相当である。これによって生じる前記のような弊害は、訴訟の運用によって防止するほかはない。」
過去問・解説
(H28 予備 第37問 オ)
XのYに対する手形金債務不存在確認請求訴訟の係属中に、YがXに対し当該手形金の支払を求める別訴を手形訴訟により提起することは、許されない。
別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として他の訴訟で相殺の抗弁を主張することの可否(抗弁後行型) 最三小判平成3年12月17日
概要
判例
判旨:「係属中の別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは許されないと解するのが相当である(最高裁昭和58年(オ)第1406号同63年3月15日第三小法廷判決・民集42巻3号170頁参照)。すなわち、民訴法231条(現:142条)が重複起訴を禁止する理由は、審理の重複による無駄を避けるためと複数の判決において互いに矛盾した既判力ある判断がされるのを防止するためであるが、相殺の抗弁が提出された自働債権の存在又は不存在の判断が相殺をもって対抗した額について既判力を有するとされていること(同法199条2頃(現:114条2項))、相殺の抗弁の場合にも自働債権の存否について矛盾する判決が生じ法的安定性を害しないようにする必要があるけれども理論上も実際上もこれを防止することが困難であること、等の点を考えると、同法231条(現:142条)の趣旨は、同一債権について重複して訴えが係属した場合のみならず、既に係属中の別訴において訴訟物となっている債権を他の訴訟において自働債権として相殺の抗弁を提出する場合にも同様に妥当するものであり、このことは右抗弁が控訴審の段階で初めて主張され、両事件が併合審理された場合についても同様である。」
過去問・解説
(H19 司法 第58問 オ)
BのAに対する貸金債権の支払を求める訴訟の係属中に、AのBに対する売買代金の支払を求める別訴が提起された場合、当該別訴において、Bが同一の貸金債権をもって相殺する旨の抗弁を主張することは許されない。
(H28 予備 第37問 ウ)
XのYに対する売買代金支払請求訴訟であるA訴訟とYのXに対する貸金返還請求訴訟であるB訴訟とがそれぞれ係属中に、A訴訟の被告Yが、A訴訟において、B訴訟で請求している貸金債権を自働債権とする相殺の抗弁を主張することは、許されない。
(R2 予備 第40問 オ)
Xは、Yに対し、金銭債権である甲債権を、Yは、Xに対し、金銭債権である乙債権をそれぞれ有しており、甲債権と乙債権とは、相殺適状にあるところ、XがYに対して甲債権に基づく金銭の支払を求める訴え(以下「本件訴え」といい、本件訴えに係る訴訟を「本件訴訟」という。)を提起した。本件訴訟とYのXに対する乙債権に基づく金銭の支払を求める訴えに係る訴訟とがそれぞれ係属している場合に、Yが、本件訴訟において乙債権を自働債権とし、甲債権を受働債権とする相殺の抗弁を主張することは、許されない。
別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として他の訴訟で相殺の抗弁を主張することの可否(抗弁後行型) 最一小判平成27年12月14日
概要
判例
判旨:「係属中の別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは、重複起訴を禁じた民訴法142条の趣旨に反し、許されない(最高裁昭和62年(オ)第1385号平成3年12月17日第三小法廷判決・民集45巻9号1435頁参照)。しかし、本訴において訴訟物となっている債権の全部又は一部が時効により消滅したと判断されることを条件として、反訴において、当該債権のうち時効により消滅した部分を自働債権として相殺の抗弁を主張することは許されると解するのが相当である。その理由は、次のとおりである。時効により消滅し、履行の請求ができなくなった債権であっても、その消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、これを自働債権として相殺をすることができるところ、本訴において訴訟物となっている債権の全部又は一部が時効により消滅したと判断される場合には、その判断を前提に、同時に審判される反訴において、当該債権のうち時効により消滅した部分を自働債権とする相殺の抗弁につき判断をしても、当該債権の存否に係る本訴における判断と矛盾抵触することはなく、審理が重複することもない。したがって、反訴において上記相殺の抗弁を主張することは、重複起訴を禁じた民訴法142条の趣旨に反するものとはいえない。このように解することは、民法508条が、時効により消滅した債権であっても、一定の場合にはこれを自働債権として相殺をすることができるとして、公平の見地から当事者の相殺に対する期待を保護することとした趣旨にもかなうものである。」
過去問・解説
(R2 予備 第40問 イ)
Xは、Yに対し、金銭債権である甲債権を、Yは、Xに対し、金銭債権である乙債権をそれぞれ有しており、甲債権と乙債権とは、相殺適状にあるところ、XがYに対して甲債権に基づく金銭の支払を求める訴え(以下「本件訴え」といい、本件訴えに係る訴訟を「本件訴訟」という。)を提起した。Yが本件訴えの反訴として乙債権に基づく金銭の支払を求める訴えを提起した場合において、Xが、甲債権の全部又は一部が時効により消滅したと判断されることを条件として、甲債権のうち時効により消滅した部分を自働債権とし、乙債権を受働債権とする相殺の抗弁を主張することは、許されない。
(正答)✕
(解説)
民法508条は、「時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。」と規定している。
また、142条は、「裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。」と規定している。
これについて、判例(最判平27.12.14)は、「本訴において訴訟物となっている債権の全部又は一部が時効により消滅したと判断されることを条件として、反訴において、当該債権のうち時効により消滅した部分を自働債権として相殺の抗弁を主張することは許される…。」としている。
したがって、Xが、甲債権の全部又は一部が時効により消滅したと判断されることを条件として、甲債権のうち時効により消滅した部分を自働債権とし、乙債権を受働債権とする相殺の抗弁を主張することも、142条に反せず許される。
(R5 予備 第38問 エ)
本訴及び反訴の係属中に、本訴原告(反訴被告)が、本訴の訴訟物である債権が時効により消滅したと判断されることを停止条件として、反訴において、当該債権を自働債権として相殺の抗弁を主張することは許されない。
(正答)✕
(解説)
民法508条は、「時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。」と規定している。
また、142条は、「裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。」と規定している。
これについて、判例(最判平27.12.14)は、「本訴において訴訟物となっている債権の全部又は一部が時効により消滅したと判断されることを条件として、反訴において、当該債権のうち時効により消滅した部分を自働債権として相殺の抗弁を主張することは許される…。」としている。
したがって、本訴及び反訴の係属中に、本訴原告が、本訴の訴訟物である債権が時効により消滅したと判断されることを停止条件として、反訴において、当該債権を自働債権として相殺の抗弁を主張することも、142条に反せず許される。
別訴において一部請求をしている債権の残部を自働債権して他の訴訟で相殺の抗弁を主張することの可否 最三小判平成10年6月30日
概要
判例
判旨:「民訴法142条…が係属中の事件について重複して訴えを提起することを禁じているのは、審理の重複による無駄を避けるとともに、同一の請求について異なる判決がされ、既判力の矛盾抵触が生ずることを防止する点にある。そうすると、自働債権の成立又は不成立の判断が相殺をもって対抗した額について既判力を有する相殺の抗弁についても、その趣旨を及ぼすべきことは当然であって、既に係属中の別訴において訴訟物となっている債権を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することが許されないことは、原審の判示するとおりである(前記平成3年12月17日第三小法廷判決参照)。
しかしながら、他面、1個の債権の一部であっても、そのことを明示して訴えが提起された場合には、訴訟物となるのは右債権のうち当該一部のみに限られ、その確定判決の既判力も右一部のみについて生じ、残部の債権に及ばないことは、当裁判所の判例とするところである(最高裁昭和35年(オ)第359号同37年8月10日第二小法廷判決・民集16巻八号1720頁参照)。この理は相殺の抗弁についても同様に当てはまるところであって、1個の債権の一部をもってする相殺の主張も、それ自体は当然に許容されるところである。
もっとも、1個の債権が訴訟上分割して行使された場合には、実質的な争点が共通であるため、ある程度審理の重複が生ずることは避け難く、応訴を強いられる被告や裁判所に少なからぬ負担をかける上、債権の一部と残部とで異なる判決がされ、事実上の判断の抵触が生ずる可能性もないではない。そうすると、右2のように1個の債権の一部について訴えの提起ないし相殺の主張を許容した場合に、その残部について、訴えを提起し、あるいは、これをもって他の債権との相殺を主張することができるかについては、別途に検討を要するところであり、残部請求等が当然に許容されることになるものとはいえない。しかし、こと相殺の抗弁に関しては、訴えの提起と異なり、相手方の提訴を契機として防御の手段として提出されるものであり、相手方の訴求する債権と簡易迅速かつ確実な決済を図るという機能を有するものであるから、一個の債権の残部をもって他の債権との相殺を主張することは、債権の発生事由、一部請求がされるに至った経緯、その後の審理経過等にかんがみ、債権の分割行使による相殺の主張が訴訟上の権利の濫用に当たるなど特段の事情の存する場合を除いて、正当な防御権の行使として許容されるものと解すべきである。したがって、一個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された場合において、当該債権の残部を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは、債権の分割行使をすることが訴訟上の権利の濫用に当たるなど特段の事情の存しない限り、許されるものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H18 司法 第62問 5)
明示的一部請求の訴えを提起した者が、訴求した債権の残額部分を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは、重複する訴えの禁止の趣旨に照らして許されない。
(R4 予備 第36問 イ)
1個の債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えを提起している場合において、当該債権の残部を自働債権として他の訴訟において相殺の抗弁を主張することは、債権の分割行使をすることが訴訟上の権利の濫用に当たるなど特段の事情の存しない限り、許される。
反訴において訴訟物となっている債権を自働債権とし本訴において相殺の抗弁を主張することの可否 最二小判平成18年4月14日
概要
判例
判旨:「本訴及び反訴が係属中に、反訴請求債権を自働債権とし、本訴請求債権を受働債権として相殺の抗弁を主張することは禁じられないと解するのが相当である。この場合においては、反訴原告において異なる意思表示をしない限り、反訴は、反訴請求債権につき本訴において相殺の自働債権として既判力ある判断が示された場合にはその部分については反訴請求としない趣旨の予備的反訴に変更されることになるものと解するのが相当であって、このように解すれば、重複起訴の問題は生じないことになるからである。そして、上記の訴えの変更は、本訴、反訴を通じた審判の対象に変更を生ずるものではなく、反訴被告の利益を損なうものでもないから、書面によることを要せず、反訴被告の同意も要しないというべきである。
本件については、前記事実関係及び訴訟の経過に照らしても、上告人らが本件相殺を抗弁として主張したことについて、上記と異なる意思表示をしたことはうかがわれないので、本件反訴は、上記のような内容の予備的反訴に変更されたものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(R2 予備 第40問 エ)
Xは、Yに対し、金銭債権である甲債権を、Yは、Xに対し、金銭債権である乙債権をそれぞれ有しており、甲債権と乙債権とは、相殺適状にあるところ、XがYに対して甲債権に基づく金銭の支払を求める訴え(以下「本件訴え」といい、本件訴えに係る訴訟を「本件訴訟」という。)を提起した。Yが本件訴えの反訴として乙債権に基づく金銭の支払を求める訴えを提起した場合において、Yが、Xの請求に対し、乙債権を自働債権とし、甲債権を受働債権とする相殺の抗弁を主張することは、許されない。
(R4 予備 第36問 エ)
本訴及び反訴の係属中に、反訴原告が、反訴請求債権を自働債権とし、本訴請求債権を受働債権として相殺の抗弁を主張することは、許されない。
選択的に併合されている甲、乙両請求につき甲請求を認容しその余の請求を棄却した第一審判決に対し被告が控訴し、原告が控訴も附帯控訴もしなかった場合において、控訴審が第一審判決の認容部分を取り消すべきであるとするときに、乙請求について判断することの要否 最一小判昭和58年4月14日
概要
判例
判旨:「原告が甲請求と乙請求とを選択的併合として申し立てている場合、原告の意思は、1つの申立が認容されれば他の申立はこれを撤回するが、1つの申立が棄却されるときには他の申立についても審判を求めるというものであることは明らかであって、この意思は、原告が併合形態を変更しない限り、全審級を通じて維持されているものというべきであり、選択的併合の申立が訴訟法上適法なものと認められるべきものである以上、原告の意思に右のような内容の効力を認めるべきものであるから、甲請求につきその一部を認容し、原告のその余の請求を棄却した第1審判決に対し、被告が控訴の申立をし、原告が控訴及び附帯控訴の申立をしなかった場合でも、控訴審としては、第1審判決の甲請求の認容部分を取り消すべきであるとするときには、乙請求の当否につき審理判断し、これが理由があると認めるときには第1審判決の甲請求の認容額の限度で乙請求を認容すべきであり、乙請求を全部理由がないと判断すべきときに至ってはじめて原告の請求を全部棄却しうるものと解すべきである。」
過去問・解説
(R3 予備 第44問 3)
XがYに対して選択的に債務不履行又は不法行為に基づく損害賠償を求める訴えを提起したところ、第1審裁判所は、不法行為に基づく損害賠償請求の一部を認容し、その余の請求を棄却するとの判決をした。これに対し、Yが控訴をしたが、Xは控訴と附帯控訴をしなかった場合において、控訴裁判所が不法行為に基づく損害賠償請求の全部を棄却すべきと判断したときは、控訴裁判所は、債務不履行に基づく損害賠償請求権の有無について判断するまでもなく、第1審判決を取り消してXの請求をいずれも棄却するとの判決をすることができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭58.4.14)は、原告が甲請求と乙請求とを選択的併合として申し立てている事案において、「甲請求につきその一部を認容し、原告のその余の請求を棄却した第1審判決に対し、被告が控訴の申立をし、原告が控訴及び附帯控訴の申立をしなかった場合でも、控訴審としては、第1審判決の甲請求の認容部分を取り消すべきであるとするときには、乙請求の当否につき審理判断し、これが理由があると認めるときには第1審判決の甲請求の認容額の限度で乙請求を認容すべきであり、乙請求を全部理由がないと判断すべきときに至ってはじめて原告の請求を全部棄却しうる…。」としている。
したがって、控訴裁判所が第1審判決を取り消してXの請求を全部棄却するためには、債務不履行に基づく損害賠償請求権の有無について審理判断してからでなければならない。
主位的請求を認容した第一審判決に対し被告のみが控訴した場合における控訴審の審判対象 最三小判昭和33年10月14日
概要
判例
判旨:「いわゆる請求の予備的併合の場合、第1審裁判所が主たる請求を認容したるのみにて、予備的請求に対する判断をしなかったときといえども、第2審裁判所において、主たる請求を排斥した上予備的請求につき判断をなし得るものと解すべきことは大審院判例の示す所であって、(昭和11年(オ)1581号、同年12月18日判決、大審院民事判例集15巻2269頁)当裁判所は、この判例を変更する要を認めない。」
過去問・解説
(H18 司法 第63問 5)
主位的請求を認容した判決に対して控訴がされ、控訴裁判所が主位的請求に理由がないと判断した場合に、予備的請求について判断をすることは、相手方の同意がない限り、許されない。
(H30 予備 第44問 3)
請求の客観的予備的併合がされている場合において、主位的請求を認容し、予備的請求に対する判断をしなかった第1審判決に対し、被告が控訴したときは、控訴裁判所は、主位的請求を棄却するとの判断をした上、予備的請求について判断をすることができる。
主位的請求を棄却して予備的請求を認容した第一審判決に対し被告のみが控訴した場合における控訴審の審判対象 最三小判昭和58年3月22日
概要
判例
判旨:「主位的請求を棄却し予備的請求を認容した第1審判決に対し、第1審被告のみが控訴し、第1審原告が控訴も附帯控訴もしない場合には、主位的請求に対する第1審の判断の当否は控訴審の審判の対象となるものではないと解するのが相当である…。」
過去問・解説
(H19 司法 第59問 5)
判例によれば、主位的請求を棄却し、予備的請求を認容した第1審判決に対して、被告のみが控訴し、原告が控訴も附帯控訴もしなかった場合でも、主位的請求に関する部分も控訴審の審判対象となる。
(H22 共通 第73問 4)
判例によれば、請求の客観的予備的併合の訴訟で、主位的請求を棄却して予備的請求を認容した第1審判決に対して被告のみが控訴を提起した場合でも、控訴裁判所は主位的請求の当否を判断することができる。
(H30 予備 第44問 4)
請求の客観的予備的併合がされている場合において、主位的請求を棄却し、予備的請求を認容した第1審判決に対し、被告が控訴し、原告が控訴及び附帯控訴のいずれもしないときは、控訴裁判所は、主位的請求に対する第1審裁判所の判断の当否の判断をすることはできない。
詐害行為取消訴訟の係属中における被保全債権の変更 最三小判平成22年10月19日
概要
判例
判旨:「詐害行為取消権の制度は、債務者の一般財産を保全するため、取消債権者において、債務者受益者間の詐害行為を取消した上、債務者の一般財産から逸出した財産を、総債権者のために、受益者又は転得者から取り戻すことができるとした制度であり、取り戻された財産又はこれに代わる価格賠償は、債務者の一般財産に回復されたものとして、総債権者において平等の割合で弁済を受け得るものとなるのであり、取消債権者の個々の債権の満足を直接予定しているものではない。上記制度の趣旨にかんがみると、詐害行為取消訴訟の訴訟物である詐害行為取消権は、取消債権者が有する個々の被保全債権に対応して複数発生するものではないと解するのが相当である。
したがって、本件訴訟において、取消債権者の被保全債権に係る主張が前記事実関係等のとおり交換的に変更されたとしても、攻撃防御方法が変更されたにすぎず、訴えの交換的変更には当たらないから、本件訴訟の提起によって生じた詐害行為取消権の消滅時効の中断の効力に影響がないというべきである。」
過去問・解説
(H28 予備 第38問 1)
債務者が第三者に無償で譲渡した不動産につき、債権者が詐害行為取消権を行使して所有権移転登記抹消登記手続請求訴訟を提起する場合において、訴訟係属中に被保全債権を甲債権から乙債権に変更することは、訴えの変更に当たる。
訴えの交換的変更 最一小判昭和32年2月28日
概要
判例
判旨:「被上告人は原審において前説示の如く訴の変更をしている。元来、請求の原因を変更するというのは、旧訴の繋属中原告が新たな権利関係を訴訟物とする新訴を追加的に併合提起することを指称するのであり、この場合原告はなお旧訴を維持し、新訴と併存的にその審判を求めることがあり、また旧訴の維持し難きことを自認し新訴のみの審判を求めんとすることがある。 しかし、この後者の場合においても訴の変更そのものが許さるべきものであるというだけではこれによって当然に旧訴の訴訟繋属が消滅するものではない。けだし訴の変更の許否ということは旧訴の繋属中新訴を追加的に提起することが許されるか否かの問題であり、一旦繋属した旧訴の訴訟繋属が消滅するか否かの問題とは、係りないところだからである。もし原告がその一方的意思に基いて旧訴の訴訟繋属を消滅せしめんとするならば、法律の定めるところに従いその取下をなすか、或はその請求の抛棄をしなければならない。訴は原告の任意提起するところであるが、一旦提起した訴の繋属を消滅せしめんとするには、相手方の訴訟上受くべき利益も尊重さるべきであり、原告の意思のみに放任さるべきではない。それ故法律は原告の一方的意思に基き訴訟繋属の消滅を来たすべき訴の取下、請求の抛棄等に関しては相手方の利益保護を考慮して、これが規定を設けている。…また請求の抛棄はこれを調書に記載することによりその記載が確定判決と同一の効力を有するものとされているのである(同203条(現267条1項))。されば原告が訴提起の当初から併合されていた請求の一につき既になしたる弁論の結果これを維持し得ないことを自認しこれを撤回せんとするならば、その請求を抛棄するか、または相手方の同意を得て訴の取下をしなければならない。このことは原告が訴の変更をなし、一旦旧訴と新訴につき併存的にその審判を求めた後、旧訴の維持すべからざることを悟ってその訴訟繋属を終了せしめんと欲する場合においても、その趣を異にするものではない。」
過去問・解説
(H26 共通 第61問 3)
判例の趣旨によれば、いわゆる訴えの交換的変更においては、旧請求について訴えの取下げ及び相手方の同意又は請求の放棄がなくても、旧請求の訴訟係属は消滅する。
(H26 共通 第61問 4)
判例の趣旨によれば、ある土地の所有権確認請求訴訟において、原告が初め被告からの売買による取得を主張し、後にその時効による取得を主張することは、訴えの変更に当たる。
将来の賃料相当損害金の請求を認容する判決が確定した場合においてその後公租公課の増大等により認容額が不相当となったときと損害金の追加請求 最一小判昭和61年7月17日
概要
判例
判旨:「従前の土地の所有者が仮換地の不法占拠者に対し、将来の給付の訴えにより、仮換地の明渡に至るまでの間、その使用収益を妨げられることによって生ずべき損害につき毎月一定の割合による損害金の支払を求め、その全部又は一部を認容する判決が確定した場合において、事実審口頭弁論の終結後に公租公課の増大、土地の価格の昂騰により、又は比隣の土地の地代に比較して、右判決の認容額が不相当となったときは、所有者は不法占拠者に対し、新たに訴えを提起して、前訴認容額と適正賃料額との差額に相当する損害金の支払を求めることができるものと解するのが相当である。けだし、土地明渡に至るまで継続的に発生すべき一定の割合による将来の賃料相当損害金についての所有者の請求は、当事者間の合理的な意思並びに借地法12条の趣旨とするところに徴すると、土地明渡が近い将来に履行されるであろうことを予定して、それに至るまでの右の割合による損害金の支払を求めるとともに、将来、不法占拠者の妨害等により明渡が長期にわたって実現されず、事実審口頭弁論終結後の前記のような諸事情により認容額が適正賃料額に比較して不相当となるに至った場合に生ずべきその差額に相当する損害金については、主張、立証することが不可能であり、これを請求から除外する趣旨のものであることが明らかであるとみるべきであり、これに対する判決もまたそのような趣旨のもとに右請求について判断をしたものというべきであって、その後前記のような事情によりその認容額が不相当となるに至った場合には、その請求は一部請求であったことに帰し、右判決の既判力は、右の差額に相当する損害金の請求には及ばず、所有者が不法占拠者に対し新たに訴えを提起してその支払を求めることを妨げるものではないと考えられるからである。」
過去問・解説
(H25 共通 第70問 5)
将来の賃料相当額の損害金請求を認容する判決が確定した場合であっても、その後、土地価格の昂騰等の事情によって当該判決の認容額が不相当となったときは、原告は、後訴により、当該認容額と適正賃料額との差額に相当する損害金の支払を求めることができる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭61.7.17)は、本肢と同種の事案において、「従前の土地の所有者が仮換地の不法占拠者に対し、将来の給付の訴えにより、仮換地の明渡に至るまでの間、その使用収益を妨げられることによって生ずべき損害につき毎月一定の割合による損害金の支払を求め、その全部又は一部を認容する判決が確定した場合において、事実審口頭弁論の終結後に公租公課の増大、土地の価格の昂騰により、又は比隣の土地の地代に比較して、右判決の認容額が不相当となったときは、所有者は不法占拠者に対し、新たに訴えを提起して、前訴認容額と適正賃料額との差額に相当する損害金の支払を求めることができる。」としている。
控訴審における訴えの変更 最二小判昭和29年2月26日
概要
判例
判旨:「控訴審において、請求の基礎に変更のない、請求原因の変更による交替的訴の変更があり、新訴によって被告敗訴の判決がなされても、請求の基礎に関する部分について、すでに旧訴に関し第1審の審理がなされているのであるから、新訴についても事実上第1審があったのと同様であり、被告に不当に不利益をこうむらせることはないから、新訴につき審級の利益を失わせるものということはできない。」
過去問・解説
(H28 予備 第38問 2)
控訴審における訴えの変更は、請求の基礎に同一性が認められる場合であっても、相手方の同意が必要である。
(正答)✕
(解説)
143条1項本文は、「原告は、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、請求又は請求の原因を変更することができる。」と規定している。
これについて、判例(最判昭29.2.26)は、「控訴審において、請求の基礎に変更のない、請求原因の変更による交換的訴の変更があり、新訴によって被告敗訴の判決がなされても、請求の基礎に関する部分について、すでに旧訴に関し第1審の審理がなされているのであるから、新訴についても事実上第1審があったとの同様であり、被告に不当な不利益をこうむらせることはないから、新訴につき新旧の利益を失わせるものということはできない。」としている。
したがって、控訴審における訴えの変更は、請求の基礎に同一性が認められる場合、相手方の同意をなくしてすることができる。
「請求の基礎」に変更がある場合において相手方の陳述した事実に基づいてする訴えの変更 最二小判昭和39年7月10日
概要
判例
判旨:「相手方の提出した防禦方法を是認したうえその相手方の主張事実に立脚して新たに請求をする場合、すなわち相手方の陳述した事実をとってもって新請求の原因とする場合においては、かりにその新請求が請求の基礎を変更する訴の変更であっても、相手方はこれに対し異議をとなえその訴の変更の許されないことを主張することはできず、相手方が右の訴の変更に対し現実に同意したかどうかにかかわらず、右の訴の変更は許されると解するのが相当である(大審判昭和9年3月13日民集13巻4号287頁参照)。そして、右の場合において、相手方の陳述した事実は、かならずしも、狭義の抗弁、再々抗弁などの防禦方法にかぎられず、相手方において請求の原因を否認して附加陳述するところのいわゆる積極否認の内容となる重要なる間接事実も含まれると解すべきである。ところで、原審判決(1審判決引用、以下同じ。)および一件記録によると、被上告人は、当初、上告人先代Dに対し係争家屋が被上告人の所有に属するとしてその所有権にもとづき係争家屋の明渡ならびに延滞賃料および賃料相当損害金の支払を請求したところ、同人は、係争家屋は被上告人所有のもとの家屋を取りこわしたうえあらたに建築して上告人先代Dの所有に属する旨主張して積極的に被上告人の所有権を否認した。そこで、被上生人は上告人先代Dが先に陳述したところに従い係争家屋の所有権が同人に属することを前提として、あらためて本件土地の所有権にもとづき同人に対し係争家屋の収去とその敷地の明渡の請求を、第1審において、予備的に追加したことが認められる。右訴訟の経過によると、本件においては、被上告人は、係争家屋の収去とその敷地の明渡の請求を、上告人先代Dの提出したいわゆる積極否認にかかる事実を是認したうえこれにもとづいて新たに右請求を予備的に追加したものと認められるから、前段説示のところから明らかなとおり、右の訴の変更は許容するのが相当である。それゆえ、被上告人のした新の追加的変更を許容した原審判決の判断は相当というべぎであり、原審には、所論のような違法はない。」
過去問・解説
(H24 共通 第72問 2)
判例によれば、建物所有権に基づき建物明渡しを求める訴えを提起した原告が、請求を土地所有権に基づく建物収去土地明渡請求に変更することは、この訴えの変更が当該建物の所有権が自己に帰属する旨の被告の陳述に基づいてされた場合であっても、認められない。
(正答)✕
(解説)
143条1項本文は、「原告は、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、請求又は請求の原因を変更することができる。」と規定している。
これについて、判例(最判昭39.7.10)は、本肢と同種の事案において、「相手方の提出した防禦方法を是認したうえその相手方の主張事実に立脚して新たに請求をする場合、すなわち相手方の陳述した事実をとってもって新請求の原因とする場合においては、かりにその新請求が請求の基礎を変更する訴の変更であっても、相手方はこれに対し異議をとなえその訴の変更の許されないことを主張することはできず、相手方が右の訴の変更に対し現実に同意したかどうかにかかわらず、右の訴の変更は許される。」としている。
本肢において、建物所有権に基づき建物明渡しを求める訴えの際に、当該建物の所有権が自己に帰属する旨の被告の陳述に基づいて請求を土地所有権に基づく建物収去土地明渡請求に変更することは、「相手方の提出した防禦方法を是認したうえその相手方の主張事実に立脚して新たに請求をする場合」に当たるため、請求の基礎を変更する訴えの変更であるが、これも認められる。
(H28 予備 第38問 4)
建物所有権に基づき建物明渡しを求める訴えを提起した原告が、請求を土地所有権に基づく建物収去土地明渡請求に変更することは、この訴えの変更が当該建物の所有権が自己に帰属する旨の被告の陳述に基づいてされた場合には、許される。
(正答)〇
(解説)
143条1項本文は、「原告は、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、請求又は請求の原因を変更することができる。」と規定している。
これについて、判例(最判昭39.7.10)は、本肢と同種の事案において、「相手方の提出した防禦方法を是認したうえその相手方の主張事実に立脚して新たに請求をする場合、すなわち相手方の陳述した事実をとってもって新請求の原因とする場合においては、かりにその新請求が請求の基礎を変更する訴の変更であっても、相手方はこれに対し異議をとなえその訴の変更の許されないことを主張することはできず、相手方が右の訴の変更に対し現実に同意したかどうかにかかわらず、右の訴の変更は許される。」としている。
本肢において、建物所有権に基づき建物明渡しを求める訴えの際に、当該建物の所有権が自己に帰属する旨の被告の陳述に基づいて請求を土地所有権に基づく建物収去土地明渡請求に変更することは、「相手方の提出した防禦方法を是認したうえその相手方の主張事実に立脚して新たに請求をする場合」に当たるため、請求の基礎を変更する訴えの変更であるが、これも認められる。
(H30 予備 第37問 ア)
被告が主張する積極否認の内容となる重要な間接事実に立脚した新たな請求の追加的変更であっても、従前の請求と請求の基礎の同一性がない場合には、このような訴えの変更は、許されない。
(正答)✕
(解説)
143条1項本文は、「原告は、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、請求又は請求の原因を変更することができる。」と規定している。
これについて、判例(最判昭39.7.10)は、「相手方の提出した防禦方法を是認したうえその相手方の主張事実に立脚して新たに請求をする場合、すなわち相手方の陳述した事実をとってもって新請求の原因とする場合においては、かりにその新請求が請求の基礎を変更する訴の変更であっても、…相手方が右の訴の変更に対し現実に同意をしたかどうかにかかわらず、右の訴の変更は許される。」とした上で、「相手方の陳述した事実は、…いわゆる積極否認の内容となる重要なる間接事実も含まれる。」としている。
したがって、被告が主張する積極否認の内容となる重要な間接事実に立脚した新たな請求の追加的変更は、従前の請求と請求の基礎の同一性がない場合であったとしても、許される。
(R4 予備 第37問 4)
相手方が積極否認の理由として主張した重要な間接事実に基づいて訴えの変更をする場合には、相手方の同意がなく、請求の基礎に変更があるときであっても、訴えの変更をすることができる。
(正答)〇
(解説)
143条1項本文は、「原告は、請求の基礎に変更がない限り、口頭弁論の終結に至るまで、請求又は請求の原因を変更することができる。」と規定している。
これについて、判例(最判昭39.7.10)は、「相手方の提出した防禦方法を是認したうえその相手方の主張事実に立脚して新たに請求をする場合、すなわち相手方の陳述した事実をとってもって新請求の原因とする場合においては、かりにその新請求が請求の基礎を変更する訴の変更であっても、…相手方が右の訴の変更に対し現実に同意したかどうかにかかわらず、右の訴の変更は許される。」とした上で、「相手方の陳述した事実は、…いわゆる積極否認の内容となる重要なる間接事実も含まれる。」としている。
請求原因の変更の書面によることの要否 最三小判昭和35年5月24日
概要
判例
判旨:「請求の原因を変更するにとどまるときは、判決事項の申立である請求の趣旨を変更する場合と異り、書面によってこれをなすことを要しないと解するのが相当である(大審院昭和11年9月7日判決、法律新聞4038号12頁、同昭和18年3月19日判決、民集22巻221頁各参照)。」
過去問・解説
(R1 予備 第35問 2)
原告は、請求又は請求の原因の変更をするときは、これを記載した書面を直接相手方に送付しなければならない。
(正答)✕
(解説)
143条は、2項において、「請求の変更は、書面でしなければならない。」と規定し、3項において、「前項の書面は、相手方に送達しなければならない。」と規定している。
そして、請求の変更の書面の送達は、原告から提出された副本によってされるから(民事訴訟規則58条2項、1項)、原告は、請求の変更の書面を裁判所に提出するのみで、直接相手方に送付しない。
また、判例(最判昭35.5.24)は、「請求の原因を変更するにとどまるときは、判決事項の申立である請求の趣旨を変更する場合と異り、書面によってこれをなすことを要しない。」として、請求の原因を変更するときは、書面によらなくてもよいことを示している。
控訴審における請求の基礎の変更と相手方が異議を述べなかった場合の効果 最三小判昭和29年6月8日
概要
判例
判旨:「所論の請求拡張については原審において上告人が異議を述べた形跡がないから原審がこれを許容したのは何等違法ではない。」
過去問・解説
(H19 司法 第59問 3)
被告が訴えの変更に同意した場合、判例によれば、当該訴えの変更は、請求の基礎の同一性がないことを理由に不適法とされることはない。
(H24 共通 第72問 5)
判例によれば、控訴審における訴えの変更に対して相手方が異議なく応訴した場合には、請求の基礎に変更があるときであっても、当該訴えの変更は許される。
(H26 共通 第61問 1)
判例の趣旨によれば、訴えの変更は、請求の基礎に変更があるときは、相手方が異議を述べなかったときでも許されない。
控訴審における訴えの変更後の新訴の係属と控訴棄却の裁判 最一小判昭和32年2月28日
概要
判例
判旨:「第1審判決が訴訟物として判断の対象としたものは前説示のとおり貸金債権であり、原審の認容した求償債権ではない。この両個の債権はその権利関係の当事者と金額とが同一であるというだけでその発生原因を異にし全然別異の存在たることは多言を要しない。そして本件控訴はいうまでもなく第1審判決に対してなされたものであり、原審の認容した求償債権は控訴審ではじめて主張されたものであって第1審判決には何等の係りもない。原審が本件訴の変更を許すべきものとし、また求償債権に基く新訴請求を認容すべしとの見解に到達したからとて、それは実質上初審としてなす裁判に外ならないのであるから第1審判決の当否、従って本件控訴の理由の有無を解決するものではない。それ故原審は本件控訴を理由なきものとなすべきいわれはなく、単に新請求たる求償債権の存在を確定し「控訴人は被控訴人に対し金713,626円を支払わなければならない」旨の判決をなすべかりしものなのである。それは一見第1審判決と同旨の主文を徒らに繰返えすが如き感を与えるかも知れないけれども、実は、法律上重大な意義を有する。けだし控訴を棄却する旨の判決は、民訴384条(現:302条)1項の法文上明らかなように第1審判決を相当とし維持さるべきことを宣告するものであり、この判決が確定することによって第1審判決も確定し、その裁判の内容に従いそれに相応する既判力、執行力、形成力等を生ずるのである。同条2項にいわゆる『判決カ其ノ理由ニ依レハ不当ナル場合ニ於テモ他ノ理由ニ依リテ正当ナルトキ』とは、第1審判決でなされた判断そのものの正当性が判決の理由とするところによっては維持せられないが他の理由によって肯定される場合をいうのである。例えば第1審判決が原告主張の貸金債権が弁済により消滅したものとして原告の請求を排斥したものであるとき、控訴審においては弁済の事実は認められないけれど、免除の事実が認められ、結局当該貸金債権の消滅を確定した第1審判決の判断が維持し得るような場合をいうのであって、本件のように第1審判決と第2審判決とがその判断の対象を異にし偶々その主文の文言が同一に帰するというが如き場合をも包含するものでないことは同条1項の法意に照らし疑なきところである。」
過去問・解説
(H18 司法 第63問 4)
判例によれば、控訴審において訴えの交換的変更があった場合、新訴については控訴裁判所が事実上第1審裁判所として裁判するのであるから、新訴についての判決の結論が第1審判決の主文と全く同一となっても、控訴棄却の裁判をすべきではない。
土地明渡訴訟における境界の確定を求める中間確認の訴えの適法性 最一小判昭和57年12月2日
概要
判例
判旨:「境界の確定は、係争土地部分の所有権の確認と異なり、土地所有権に基づく土地明渡訴訟の先決関係に立つ法律関係にあたるものと解することはできないから、本件中間確認の訴えは、不適法として却下すべきものである。」
過去問・解説
(H22 共通 第56問 ウ)
所有権に基づく土地明渡請求訴訟の係属中に、原告が被告に対し原告の所有地とそれに隣接する被告の所有地との筆界(境界)確定を求めて追加的に提起した訴えは、土地明渡請求訴訟に関する中間確認の訴えには当たらない。
(H29 予備 第44問 2)
所有権に基づく土地明渡請求訴訟の係属中に、土地所有権の確認を求める中間確認の訴えを提起することはできるが、筆界(境界)確定を求める中間確認の訴えを提起することはできない。
(正答)〇
(解説)
145条1項本文は、「裁判が訴訟の進行中に争いとなっている法律関係の成立又は不成立に係るときは、当事者は、請求を拡張して、その法律関係の確認の判決を求めることができる。」と規定している。
これについて、判例(最判昭57.12.2)は、「境界の確定は、係争土地部分の所有権の確認と異なり、土地所有権に基づく土地明渡訴訟の先決関係に立つ法律関係にあたるものと解することはできないから、本件中間確認の訴えは、不適法として却下すべき…。」として、境界の確定を求める訴えが、中間確認の訴えに当たらないことを示している。
したがって、所有権に基づく土地明渡請求訴訟の係属中に、土地所有権の確認を求める中間確認の訴えを提起することはできるが、境界確定を求める中間確認の訴えを提起することはできない。
占有の訴に対して本権に基づく反訴を提起することの許否 最一小判昭和40年3月4日
概要
判例
判旨:「民法202条2項は、占有の訴において本権に関する理由に基づいて裁判することを禁ずるものであり、従って、占有の訴に対し防禦方法として本権の主張をなすことは許されないけれども、これに対し本権に基づく反訴を提起することは、右法条の禁ずるところではない。そして、本件反訴請求を本訴たる占有の訴における請求と対比すれば、牽連性がないとはいえない。それゆえ、本件反訴を適法と認めてこれを審理認容した原審に所論の違法はないから、論旨は採用できない。」
併合要件を欠く反訴に対する裁判 最一小判昭和41年11月10日
概要
判例
判旨:「反訴は訴訟係属中の新訴の提起であり、その併合要件は同時に反訴提起の訴訟要件であるから、この要件を欠く反訴は不適法であり、終局判決をもって却下すべきものである。」
過去問・解説
(H22 共通 第69問 1)
判例によれば、反訴請求が本訴請求又はこれに対する防御方法と関連しない場合には、反訴は不適法である。
(正答)〇
(解説)
146条1項は、「被告は、本訴の目的である請求又は防御の方法と関連する請求を目的とする場合に限り、口頭弁論の終結に至るまで、本訴の係属する裁判所に反訴を提起することができる。」と規定しており、反訴は、併合要件を満たす必要がある。
これについて、判例(最判昭41.11.10)は、「反訴は訴訟係属中の新訴の提起であり、その併合要件は同時に反訴提起の訴訟要件であるから、この要件を欠く反訴は不適法であり、終局判決をもって却下すべきものである。」としている。
したがって、反訴請求が本訴請求又はこれに対する防御方法と関連しない場合には、併合要件という訴訟要件を欠くため、不適法である。
控訴審における反訴の提起について相手方の同意を要しない場合 最一小判昭和38年2月21日
概要
判例
判旨:「1審において原告(控訴人・上告人)の本件土地明渡しの請求に対し、被告(被控訴人・被上告人)は同土地について賃借権を有する旨主張し、原告はこれを争ったところ、1審はこれを容認して原告の請求を排斥したものであること、被控訴人(被上告人)は原審において反訴として右賃借権の存在を主張し、その確認の訴を提起するに至ったものであることは記録上明らかであるから、このような本件における反訴提起については、控訴人(上告人)をして1審を失う不利益を与えるものとは解されず、従って、右反訴提起については同人の同意を要しないものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(H22 共通 第69問 4)
判例によれば、控訴審において第1審で認められた防御方法に基づいて反訴を提起する場合、相手方の同意は不要である。
(H30 予備 第37問 イ)
原告の土地明渡請求に対し、第1審裁判所が判決でその土地について賃借権を有するとの被告の抗弁に係る事実を認めた場合には、被告は、控訴審において、反訴として、原告の同意を要せずに、その土地についての賃借権存在確認の訴えを提起することができる。
訴訟上の留置権の抗弁と被担保債権の消滅時効の完成猶予 最大判昭和38年10月30日
概要
判例
判旨:「民法300条は『留置権ノ行使ハ債権ノ消滅時効ノ進行ヲ妨ケス』と規定する。その趣旨は、留置権によって目的物を留置するだけでは、留置権の行使に止り、被担保債権の行使ではないから、被担保債権の消滅時効の中断、停止(現:完成猶予、更新)の効力を生ずるものでないことを規定したものと解するのを相当とする。…しかし訴訟上の留置権の抗弁は、これを撤回しない限り、当該訴訟の係属中継続して目的物の引渡を拒否する効力を有するものであり、従って、該訴訟が被担保債権の債務者を相手方とするものである場合においては、右抗弁における被担保債権についての権利主張も継続してなされているものといい得べく、時効中断(現:完成猶予)の効力も訴訟係属中存続するものと解すべきである。そして、当該訴訟の終結後6ケ月内に他の強力な中断事由に訴えれば、時効中断の効力は維持されるものと解する。然らば、本件留置権の主張は裁判上の請求としての時効中断の効力は有しないが、訴訟係属中継続して時効中断の効力を有するものであるから、本件につき被担保債権の時効は完成しないとして、留置権の存続を肯定した原判決の判断は、結局これを正当として是認し得るものというべきである。」
過去問・解説
(H18 司法 第70問 2)
Aは、Bに対し、金銭債権(以下「甲債権」という。)を有している。Aが動産の上に甲債権を担保するための留置権を有しており、Bからの当該動産の引渡請求訴訟においてAが留置権の抗弁を主張した場合でも、その後に甲債権の消滅時効期間が経過すれば、Bは、当該訴訟において、同債権の時効消滅を主張することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最大判昭38.10.30)は、「訴訟上の留置権の抗弁は、…該訴訟が被担保債権の債務者を相手方とするものである場合においては、右抗弁における被担保債権についての権利主張も継続してなされているものといい得べく、時効中断(現:完成猶予)の効力も訴訟係属中存続するものと解すべきである。そして、当該訴訟の終結後6ケ月内に他の強力な中断事由に訴えれば、時効中断の効力は維持される…。」としている。
本肢では、Bからの当該動産の引渡請求訴訟においてAが留置権の抗弁を主張した場合、甲債権につき、時効完成猶予の効力が当該訴訟の係属中存続するため、消滅時効期間を経過しても、訴訟が係属している限りは時効消滅しない。
したがって、Bは、甲債権の時効消滅を主張することができない。
債権者代位訴訟の提起と消滅時効の完成猶予等 大判昭和15年3月15日
概要
判例
判旨:「間接訴権ハ債権者カ自己ノ債権ヲ保全スル為債務者ノ権利ヲ行使スルモノナレハ債権者カ自己ノ債権ヲ保全センカ為ニハ必然的ニ債務者ノ財産ニ属スル権利ヲ保存セサルヘカラス蓋シ債権ハ畢竟債務者ノ財産ヨリ満足ヲ受クルコトヲ其ノ主要ナル目的トスルモノナルカ故ナリ民法第四百二十三条第二項但書ノ規定ニ依レハ債権者ハ自己ノ債権ヲ保全スルカ為ニハ弁済期ノ到来セサル前ニ於テモ債務者ノ権利ヲ保存シ得ルコト即債務者ノ債権カ将ニ時効ノ完成ニ因リ消滅セントスルトキハ之ヲ中断スルカ如キ行為ヲ為シ得ルコトヲ認メタリ而シテ債務者ノ権利ヲ保存スルテフ観念ハ債権者カ債務者ノ権利ヲ行使シタルトキハ当然ニ債務者ニ帰属スルモノニシテ債務者自身カ其ノ権利ヲ行使シタルト同一ノ効果ヲ生シタルコトヲ表明シタルニ外ナラス蓋シ若シ然ラスンハ民法カ此ノ法律制度ヲ設ケタル趣旨ヲ没却スルニ至レハナリ斯ノ如ク権利行使ノ効果カ当然ニ債務者ニ帰属スルコトハ取リモ直サス総債権者ノ利益ニ帰スルモノナリ蓋シ債務者ノ権利カ特定ノ債権ニ付担保権ノ設定ナキ限リ一般債権者ノ債権ノ満足ヲ与フルコトトナルカ故ナリ」
過去問・解説
(H23 予備 第45問 2)
Aに対して売買代金債権を有すると主張するXが、Aに代位して、AのYに対する貸金債権に基づき、Yに対して当該貸金の返還を求める訴えを提起した。
Xが訴えを提起した時点で、AのYに対する貸金債権について時効の完成猶予の効力が生ずる。(改題)
債権の一部についてのみ判決を求める旨明示した訴えの提起と消滅時効の完成猶予等の範囲 最二小判昭和34年2月20日
概要
判例
判旨:「ところで、1個の債権の数量的な一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴が提起された場合、原告が裁判所に対し主文において判断すべきことを求めているのは債権の一部の存否であって全部の存否でないことが明らかであるから、訴訟物となるのは右債権の一部であって全部ではない。それ故、債権の一部についてのみ判決を求める旨明示した訴の提起があった場合、訴提起による消滅時効中断の効力(現:完成猶予)。は、その一部の範囲においてのみ生じ、その後時効完成前残部につき請求を拡張すれば、残部についての時効は、拡張の書面を裁判所に提出したとき中断するものと解すべきである。…若し、これに反し、かかる場合訴提起と共に債権全部につき時効の中断(現:完成猶予)を生ずるとの見解をとるときは、訴提起当時原告自身裁判上請求しない旨明示している残部についてまで訴提起当時時効が中断(現:完成猶予)したと認めることになるのであって、このような不合理な結果は到底是認し得ない。」
重複起訴訴訟解消のため前訴が取り下げられた場合における前訴の提起による時効の完成猶予 最三小判昭和50年11月28日
概要
判例
判旨:「訴の提起が時効中断の効力を生ずるのは、訴の提起により権利主張がされ、かつ、権利について判決による公権的判断がされることになるからであり、訴が取り下げられたときに訴の提起による時効中断の効力が生じないのは、訴の取下は、通常、訴の提起による権利主張をやめ、かつ、権利についての判決による公権的判断を受ける機会を放棄することにほかならないからである。そうすると、訴の取下が、権利主張をやめたものでもなく、権利についての判決による公権的判断を受ける機会を放棄したものでもないような場合には、訴を取り下げても訴の提起による時効中断の効力は存続すると解するのを相当とする。 …被上告人所有の本件土地について、昭和23年7月2日付で自作農創設特別措置法に基づく買収処分及び辻本浅太郎への売渡処分がされ、同25年4月4日右浅太郎のための所有権取得登記がされ、更に浅太郎は右土地を辻本秀雄に贈与し、同29年11月30日秀雄のための所有権取得登記がされた。そこで、被上告人は、昭和33年4月7日大阪府知事を相手方として、大阪地方裁判所に訴を提起し、右買収処分、売渡処分の無効確認等を求めるとともに、右訴において、辻本浅太郎、辻本秀雄を相手方として、その各所有権取得登記の抹消登記手続を求めた(大阪地方裁判所昭和33年(行)第21の2号事件、以下『旧訴』という。)。右訴提起当時浅太郎が死亡していたので、被上告人は、昭和39年3月27日浅太郎の相続人らを相手方として、浅太郎の右所有権取得登記の抹消登記手続を求めるとともに、辻本秀雄以降の本件土地の譲受人らを相手方として、各その所有権取得登記の抹消登記手続を求める本訴を大阪地方裁判所に提起した。旧訴と本訴は、別個に審理されていたが、のちに併合され、辻本秀雄に対する訴が重複していることが明らかとなり、被上告人は、そのうちの一方を取り下げることとなったが、その際、旧訴中の買収処分、売渡処分の無効確認を求める部分等がすでにその必要がなくなったなどしたので、手続の便宜上旧訴を取り下げ本訴を追行することとしたものである。 右事実によると、被上告人の旧訴の取下は、権利主張をやめたものでもなく、権利についての判決による公権的判断を受ける機会を放棄したものでもないのであるから、右訴の取下によって訴の提起による時効中断の効力は消滅しないといわなければならない。」
過去問・解説
(H18 司法 第70問 4)
Aは、Bに対し、金銭債権(以下「甲債権」という。)を有している。AのBに対する甲債権に基づく金銭の支払請求訴訟が二重に係属し、別個に審理されていた場合において、その後、その口頭弁論が併合され、前訴を維持する必要がなくなったとして、Aが前訴を取り下げ、後訴を追行するときは、前訴の提起によって生じた甲債権の消滅時効の完成猶予の効果は消滅しない。(改題)