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罪数関係 - 解答モード
逮捕罪と監禁罪 最大判昭和28年6月17日
概要
判例
判旨:「人を、逮捕し監禁したときは、論旨も指摘するように、逮捕罪と監禁罪との各別の2罪が成立し、牽連犯又は連続犯となるものではなく、これを包括的に観察して刑法220条1項の単純な一罪が成立するものと解すべきものである。…2人以上の者が共謀して、同時に同一場所において別個の人を監禁したときは、被害者の数に応じた数個の監禁の罪名に触れる1個の行為あるものと解すべきことは、多言を要しない。」
傷害罪と器物損壊罪 東京地判平成7年1月31日
概要
判例
判旨:「眼鏡レンズの損壊は、顔面を手拳で殴打して傷害を負わせるという通常の行為態様による傷害に随伴するものと評価できること、傷害罪と器物損壊罪の保護法益及び法定刑の相違に加え、本件における結果も、傷害は加療約2週間を要する顔面挫創兼脳震盪症等であるのに対し、レンズ破損による被害額は1万円であることに照らすと、本件のような場合は検察官主張のような観念的競合の関係を認める必要はなく、重い傷害罪によって包括的に評価し(量刑にあたってレンズを破損させた点も考慮されることはもちろんである)、同罪の罰条を適用すれば足りると解すべきである。」
過去問・解説
(H23 司法 第6問 3)
甲は、眼鏡を掛けた乙の顔面を、眼鏡の上から拳で殴打し、眼鏡を損壊するとともに、乙に全治1週間を要する顔面打撲の傷害を負わせた。この場合、甲には傷害罪と器物損壊罪が成立し、両罪は併合罪となる。
窃取又は詐取した財物の返還を免れるための殺人 最一小決昭和61年11月18日
概要
判例
判旨:「被告人による拳銃発射行為は、Vを殺害して同人に対する本件覚せい剤の返還ないし買主が支払うべきものとされていたその代金の支払を免れるという財産上不法の利益を得るためになされたことが明らかであるから、右行為はいわゆる2項強盗による強盗殺人未遂罪に当たるというべきであり(暴力団抗争の関係も右行為の動機となっており、被告人についてはこちらの動機の方が強いと認められるが、このことは、右結論を左右するものではない。)、先行する本件覚せい剤取得行為がそれ自体としては、窃盗罪又は詐欺罪のいずれに当たるにせよ、前記事実関係にかんがみ、本件は、その罪と2項強盗殺人未遂罪のいわゆる包括一罪として重い後者の刑で処断すべきものと解するのが相当である。」
過去問・解説
(R4 司法 第17問 1)
甲は、Aから財物を詐取した上で当該財物の返還を免れるためにAを殺害することを計画し、計画どおりにAから財物を詐取し、その後、殺意をもってAの胸部をナイフで刺して殺害し、これにより、財物の返還を免れるという財産上不法の利益を得た。甲には、詐欺罪と強盗殺人罪が成立し、これらは包括一罪となる。
(正答)〇
(解説)
判例(最決昭61.11.18)は、「先行する本件覚せい剤取得行為がそれ自体としては、窃盗罪又は詐欺罪のいずれに当たるにせよ、前記事実関係にかんがみ、本件は、その罪と2項強盗殺人未遂罪のいわゆる包括一罪として重い後者の刑で処断すべきものと解するのが相当である。」としている。
甲は、計画どおりにAから財物を詐取しているため、詐欺罪が成立し、殺意をもってAの胸部をナイフで刺して殺害し、これにより、財物の返還を免れるという財産上不法の利益を得たから強盗殺人罪が成立する。
財物と財物の返還を免れるという財産上不法の利益は実質同一であって、包括一罪として処理される。
したがって、甲には、詐欺罪と強盗殺人罪が成立し、これらは包括一罪となる。
反復的な暴行による複数の傷害結果 最一小決平成26年3月17日
概要
判例
判旨:「一連の暴行によって各被害者に傷害を負わせた事実は、いずれの事件も、約4か月間又は約1か月間という一定の期間内に、被告人が、被害者との上記のような人間関係を背景として、ある程度限定された場所で、共通の動機から繰り返し犯意を生じ、主として同態様の暴行を反復累行し、その結果、個別の機会の暴行と傷害の発生、拡大ないし悪化との対応関係を個々に特定することはできないものの、結局は1人の被害者の身体に一定の傷害を負わせたというものであり、そのような事情に鑑みると、それぞれ、その全体を一体のものと評価し、包括して一罪と解することができる。」
過去問・解説
(R4 司法 第17問 5)
甲は、対立する不良グループのメンバーA及びBを襲撃することを計画し、路上で発見したAをバットで1回殴打した直後、そばにいたBを同バットで1回殴打し、両名に傷害を負わせた。甲には、2個の傷害罪が成立し、これらは包括一罪となる。
(正答)✕
(解説)
判例(最決平26.3.17)は、「同一被害者に対し約4か月間又は約1か月間という一定の期間内に反復累行された一連の暴行によって種々の傷害を負わせた事実については、その暴行が、被告人と被害者との一定の人間関係を背景として、共通の動機から繰り返し犯意を生じて行われたものであることなどの事情に鑑みると、全体を一体のものと評価し、包括して一罪と解することができる。」としている。
甲は、異なる機会に、異なる人物であるA、Bに対して暴行を行っているのであるから、法益侵害の一体性を欠き、全体を一体として評価することはできない。
したがって、甲には、2個の傷害罪が成立し、これらは併合罪となる。
街頭募金詐欺 最二小決平成22年3月17日
概要
判例
判旨:「犯行は、偽装の募金活動を主宰する被告人が、約2か月間にわたり、アルバイトとして雇用した事情を知らない多数の募金活動員を関西一円の通行人の多い場所に配置し、募金の趣旨を立看板で掲示させるとともに、募金箱を持たせて寄付を勧誘する発言を連呼させ、これに応じた通行人から現金をだまし取ったというものであって、個々の被害者ごとに区別して個別に欺もう行為を行うものではなく、不特定多数の通行人一般に対し、一括して、適宜の日、場所において、連日のように、同一内容の定型的な働き掛けを行って寄付を募るという態様のものであり、かつ、被告人の1個の意思、企図に基づき継続して行われた活動であったと認められる。加えて、このような街頭募金においては、これに応じる被害者は、比較的少額の現金を募金箱に投入すると、そのまま名前も告げずに立ち去ってしまうのが通例であり、募金箱に投入された現金は直ちに他の被害者が投入したものと混和して特定性を失うものであって、個々に区別して受領するものではない。以上のような本件街頭募金詐欺の特徴にかんがみると、これを一体のものと評価して包括一罪と解した原判断は是認できる。」
過去問・解説
(H24 予備 第8問 イ)
連日、駅前で募金箱を持ち、真実は募金を難病の子供のために使うつもりはなく、自己のために費消するつもりであるのにそれを隠して、「難病の子供を救うため、募金をお願いします。」と連呼し、多数回にわたり、不特定多数の通行人からそれぞれ少額の金員をだまし取った。これらは包括一罪となる。
(正答)〇
(解説)
判例(最決平22.3.17)は、本肢と同種の事案において、「不特定多数の通行人一般に対し、一括して、適宜の日、場所において、連日のように、同一内容の定型的な働き掛けを行って寄付を募るという態様のものであり、かつ、被告人の1個の意思、企図に基づき継続して行われた活動であったと認められる。」とした上で、「このような街頭募金においては、これに応じる被害者は、比較的少額の現金を募金箱に投入すると、そのまま名前も告げずに立ち去ってしまうのが通例であり、募金箱に投入された現金は直ちに他の被害者が投入したものと混和して特定性を失うものであって、個々に区別して受領するものではない。」として、募金詐欺が詐欺罪の包括一罪となるとしている。
(R6 司法 第7問 4)
甲は、真実は募金を災害復興支援のために使うつもりはなく、自己のために費消するつもりであるのにこれを隠して、事情を知らない多数のアルバイトの募金活動員に、連日、駅前で募金箱を持たせ、「災害復興支援のために募金をお願いします。」と連呼させ、多数回にわたり、不特定多数の通行人からそれぞれ少額の現金を募金箱に投入させてだまし取った。この場合、甲に詐欺罪の包括一罪が成立する。
(正答)〇
(解説)
判例(最決平22.3.17)は、本肢と同種の事案において、「不特定多数の通行人一般に対し、一括して、適宜の日、場所において、連日のように、同一内容の定型的な働き掛けを行って寄付を募るという態様のものであり、かつ、被告人の1個の意思、企図に基づき継続して行われた活動であったと認められる。」とした上で、「このような街頭募金においては、これに応じる被害者は、比較的少額の現金を募金箱に投入すると、そのまま名前も告げずに立ち去ってしまうのが通例であり、募金箱に投入された現金は直ちに他の被害者が投入したものと混和して特定性を失うものであって、個々に区別して受領するものではない。」として、募金詐欺が詐欺罪の包括一罪となるとしている。甲は、多数回にわたり、不特定多数の通行人からそれぞれ少額の現金を募金箱に投入させてだまし取っている。
したがって、甲に詐欺罪の包括一罪が成立する。
1項恐喝罪と2項恐喝罪 大判明治45年4月15日
概要
判例
判旨:「刑法第249条第1項及ヒ第2項ハ同一罪質ニシテ又同一罪名ヲ成スモノナレハ同一ノ被害者ニ対スル1箇ノ行為ニシテ同時ニ同条第2項及ヒ第1項ニ触ルル場合ニハ単ニ1箇ノ罪名ニ触ルル恐喝罪ヲ構成スルモノトス」
過去問・解説
(R1 司法 第7問 1)
甲は、乙を恐喝して乙から財物の交付を受けるとともに財産上の利益を得た。甲には、包括して1個の恐喝罪が成立する。
複数の放火行為 大判明治45年4月29日
概要
判例
判旨:「連続犯ハ放火罪ノ如キ個人ノ財産的法益ヲ侵害スルニ止ラス主トシテ静謐ナル公共的法益ノ侵害ヲ以テ其本質ト為ス犯罪ト雖モ苟モ同一ノ意思発動ニ因リテ其行為ヲ反覆実行スルニ於テハ当然該犯罪ヲ構成スヘキモノトス」
過去問・解説
(H21 司法 第11問 3)
甲は、乙が住居に使用する同人所有の家屋に放火した後、さらに、同家屋に隣接する丙所有の物置を燃やそうと思い付き、同物置に放火し、同家屋及び同物置を同時に焼損した。この場合、甲は複数の放火行為を行い、所有者の異なる複数の建造物を焼損しているのであるから、現住建造物等放火罪及び非現住建造物等放火罪の各既遂罪が成立し、両者は併合罪となる。
(H29 予備 第8問 5)
甲は、乙が居住する乙所有の家屋を燃やそうと考え、同家屋の壁際に駐車されていた乙所有の自動車に放火して焼損し、同家屋への延焼の危険を生じさせたが、その火は通行人により消し止められ、同家屋に燃え移らなかった。この場合、甲には、建造物等以外放火罪のみが成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(大判明45.4.29)は、「連続犯ハ放火罪ノ如キ個人ノ財産的法益ヲ侵害スルニ止ラス主トシテ静謐ナル公共的法益ノ侵害ヲ以テ其本質ト為ス犯罪ト雖モ苟モ同一ノ意思発動ニ因リテ其行為ヲ反覆実行スルニ於テハ当然該犯罪ヲ構成スヘキモノトス」として、放火行為を近接した日時場所で連続して行った場合に全体を一罪とすることを示している。
現住建造物等放火罪の故意で110条の「前2条に規定する物以外の物」に放火した場合、現住建造物等放火罪の未遂罪が成立する。
甲は、乙が居住する乙所有の家屋を燃やそうと考え同家屋の壁際に駐車されていた乙所有の自動車に放火しているから、現住建造物等放火罪の故意で110条の「前2条に規定する物以外の物」に放火し、これを焼損させ同家屋への延焼の危険を生じさせたといえる。
したがって、甲には、現住建造物等放火罪の未遂罪が成立する。
詐欺罪と偽造通貨行使罪 大判明治43年6月30日
概要
判例
判旨:「偽造ノ通貨ヲ収得シテ之ヲ行使シタル所為ハ2箇ノ犯罪ヲ構成ス
偽造銀行券ヲ行使シテ財物ヲ不正ニ領得シタルトキハ財物領得ノ行為ハ銀行券行使ノ所為中ニ包含セラレ別ニ犯罪ヲ構成スルモノニ非ス」
過去問・解説
(H19 司法 第14問 ア)
組み合わせとして正しいものを選びなさい。
甲は、乙の経営する商店において偽造の1万円札を使用しようと考え、同店において、情を知らない乙に対し、価格1万円の商品の購入を申し込み、代金として偽造の1万円札を渡して同商品を得た。
a. 詐欺罪と偽造通貨行使罪が成立し、両罪は観念的競合となる。
b. 詐欺罪が成立し、偽造通貨行使罪は詐欺罪に吸収される。
c. 偽造通貨行使罪が成立し、詐欺罪は偽造通貨行使罪に吸収される。
(H23 司法 第1問 1)
甲は、乙から商品を購入する際、偽造通貨を真正な通貨のように装って乙に代金として交付した。甲には詐欺罪と偽造通貨行使罪が成立し、両罪は観念的競合となる。
(H26 共通 第6問 4)
偽造通貨又は偽造有価証券を行使して相手から金品をだまし取った場合、詐欺罪は偽造通貨行使罪には吸収されるが、詐欺罪と偽造有価証券行使罪とは牽連犯となる。
(H28 司法 第7問 1)
甲は、偽造された1万円札を使って価格1万円の商品をだまし取ろうと考え、事情を知らない商店の店員Aに対し、同商品の購入を申し込み、代金として同1万円札を渡して、Aから同商品の交付を受けた。甲には、詐欺罪と偽造通貨行使罪が成立し、これらは観念的競合となる。
(H29 共通 第20問 2)
【事例】
甲は、ホテルの部屋で乙と会い、乙に対し、100万円相当の覚せい剤(以下「本件覚せい剤」という。)の代金として、偽造した1万円札100枚を渡した。乙は、甲から渡された1万円札が偽札であることに気付かずに、甲に対し、本件覚せい剤を渡し、甲は、これを持って同部屋を出た。
【記述】
甲には詐欺罪が成立し、偽造通貨行使罪は詐欺罪に吸収される。
(R5 司法 第5問 イ)
甲は、行使の目的で1万円札を偽造し、Aが経営する商店において、事情を知らないAに対し、1万円の商品の購入を申し込み、その代金として偽造の1万円札をAに手渡して同商品の交付を受けた。この場合、甲には通貨偽造罪、偽造通貨行使罪及び詐欺罪が成立し、これらは牽連犯となる。
強制性交等罪と殺人罪 最一小判昭和31年10月25日
概要
判例
判旨:「原審の是認した第1審判決が、同判決判示の罪となるべき事実を認定して(第1審判決の右認定、ことに殺意の点は、同判決挙示の証拠に照らし、当審においてもこれを是認することができる。)、強姦致死の点につき刑法181条、177条を、殺人の点につき同法199条を適用し、両者は同法54条1項前段の1個の行為にして数個の罪名に触れる場合であるとして同法10条に基き、重い殺人罪の刑によって処断すべきであるとした法律判断は正当であって、この点に関する原審の判示は相当である。」
過去問・解説
(H19 司法 第14問 エ)
判例の立場に従って検討し、それぞれaないしcから正しいものを選びなさい。
甲は、殺意をもって、女性乙の頸部をひもで絞めながら不同意性交し、同女を死亡させた。
a. 不同意性交等致死罪と殺人罪が成立し、両罪は観念的競合となる。
b. 不同意性交等致死罪のみが成立する。
c. 不同意性交等罪と殺人罪が成立し、両罪は観念的競合となる。
複数の強盗行為 大判大正6年11月9日
概要
判例
要旨:併合罪ノ関係アル数罪ヲ同時ニ審理シ一箇ノ判決ヲ以テ刑ノ言渡ヲ為シタルトキト雖モ各罪ニ対シ各別ニ刑ヲ量定シ之ヲ併科スル言渡ヲ為シタルトキハ其中ノ一罪ニ関スル部分ニ限リタル控訴申立ニ基キ其部分ノ一審判決ヲ取消ス場合ニ於テモ他ノ罪ニ関スル1審判決ノ部分ニハ何等ノ消長ヲ来スヘキモノニ非ス
(※原文を確認できないため、要旨のみを掲載)
過去問・解説
(H26 司法 第11問 4)
甲は、強盗の目的で、路上を連れ立って歩いていた乙及び丙に対し、包丁の刃先を両名の方に向けながら「お前ら金を出せ。出さないと殺すぞ。」と言って脅迫し、両名からそれぞれ現金を奪った。甲には、2個の強盗罪が成立し、これらは併合罪となる。
盗品無償譲受け罪と恐喝罪 大判昭和6年3月18日
概要
判例
判旨:「贓物ヲ所持スル者ヲ恐喝シテ其ノ情ヲ知リナカラ之カ交付ヲ受クル行為ハ恐喝罪ノ外尚贓物収受ノ罪名ニモ触ルルモノトス」
過去問・解説
(R1 司法 第7問 5)
甲は、乙が窃取した財物と知りながら、乙を恐喝してその財物の交付を受けた。甲には、盗品等無償譲受け罪と恐喝罪が成立し、これらは併合罪となる。
収賄罪と盗品等無償譲受け罪 最三小判昭和23年3月16日
概要
判例
判旨:「しかし刑法第197条の罪が成立する為めには公務員が収受した金品が臓物であっても差支へない(臓物と知りながら収受した場合は収賄罪と臓物収受罪との2罪が成立するわけである)。(大審院明治44年(れ)第349号同年3月30日言渡判決参照)されば本件に於て被告人が原審相被告人乙に其職務上の不正行為に対する謝礼として交付した金員が仮令所論のように臓物であったとしても之が為めに贈賄罪の成立に少しも影響を及ぼすことはない。」
過去問・解説
(H24 予備 第8問 ア)
公務員が、電化製品を盗品であると知りながら、賄賂として収受した。収賄罪と盗品等無償譲受罪が成立し、観念的競合となる。
恐喝罪と傷害罪 最二小判昭和23年7月29日
概要
判例
判旨:「本件公訴事実中の第2は被告人が第1事実において示すようにVを短刀を以て畏怖させた上同人から金員を交付させた際、右短刀で同人の左側鼠蹊部を突刺して全治3週間を要する切刺傷を加えたと云うのである。そこで、右第1と第2との各事実が凡て証明されるならば、被告人は恐喝罪と傷害罪とにつき刑法第54条第1項前段の規定を適用して処断されなければならない。けだし、傷害行為は恐喝行為とは別個に、これの事前若しくは事後においてなされたのではなく、傷害行為がただちに恐喝行為の手段としてなされたと言うからである。しかるに、原判決は、被告人の恐喝行為は脅迫を手段としたのであって暴行を手段としたのではないと認定すると共に、被告人に暴行又は傷害の故意を認むべき証拠なしとして傷害事実の成立を否定し、この点について無罪の言渡をした。しかし、この措置は明かに誤っていると言わなくてはならない。暴行又は傷害の故意のないと言うことから、ただちに傷害事実を全面的に否定することはできない。」
過去問・解説
(H21 司法 第20問 イ)
Ⅱ.甲は、乙から金品を喝取しようと企て、乙に対し、反抗を抑圧するに至らない程度の暴行を加えて加療約2週間を要する傷害を負わせ、畏怖した同人から現金1万円を喝取した。
【事例】Ⅱでは、甲を懲役20年に処することができる。
(正答)✕
(解説)
54条1項は、「1個の行為が2個以上の罪名に触れ…るときは、その最も重い刑により処断する。」と規定し、204条は、「人の身体を傷害した者は、15年以下の拘禁刑又は50円以下の罰金に処する。」と規定し、249条1項は、「人を恐喝して財物を交付させた者は、10年以下の拘禁刑に処する。」と規定している。
これについて、判例(最判昭23.7.29)は、「傷害行為は恐喝行為とは別個に、これの事前若しくは事後においてなされたのではなく、傷害行為がただちに恐喝行為の手段としてなされたと言うからである。」として、恐喝の手段としての暴行により傷害を負わせた場合、観念的競合になるとしている。
甲は、乙に対し、反抗を抑圧するに至らない程度の暴行を加えて加療約2週間を要する傷害を負わせ、畏怖した同人から現金1万円を喝取した各行為にそれぞれ恐喝罪と傷害罪が成立し、観念的競合となり、最も重い罪である傷害罪で処断することになる。
したがって、刑の長期の上限は、15年であるから、甲を懲役20年に処することはできない。
(R1 司法 第7問 3)
甲は、乙を恐喝して乙から財物の交付を受け、その恐喝の手段として用いられた暴行により乙に傷害を負わせた。甲には、恐喝罪と傷害罪が成立し、これらは併合罪となる。
往来妨害罪と傷害罪 最三小判昭和36年1月10日
概要
判例
判旨:「刑法124条の趣旨とするところは、往来の妨害を生ぜしめた結果人の身体を傷害した場合には同法204条の刑と比較し、因って死に致した場合には同法205条の刑と比較し、それぞれ重きに従って処断するというにあることが明らかであるから、原判決に所論の違法はない。」
過去問・解説
(H23 司法 第6問 1)
甲は、夜間、車道上にロープを張って、車道を閉塞したところ、自動二輪車を運転して同所を通り掛かった乙がこれに気付かないまま同ロープに引っ掛かり、転倒して負傷した。この場合、甲に乙が負傷をすることについて故意があれば、甲には往来妨害罪と傷害罪が成立し、両罪は牽連犯となる。
1個の放火行為による複数の建造物の焼損 大判大正2年3月7日
概要
判例
判旨:「人ノ住宅ヲ焼燬スルトキハ個人ノ財産的法益ヲ侵害スルト同時ニ静謐ナル公共的法益ヲ侵害スルヲ以テ法律ハ右公共的法益侵害ニ重キヲ置キ財産ニ対スル罪ト其規定ヲ異ニシ放火罪トシテ之ヲ処分スルモノナレハ単一ナル放火行為ヲ以テ2箇ノ住宅ヲ焼燬スルモ単一ナル放火罪トシテ之ヲ処分スヘキモノトス」
過去問・解説
(H18 司法 第12問 ウ)
甲は、乙の住居に放火してその建物を全焼させたが、さらに、隣接する丙の住居にも燃え移らせてその建物を半焼させた。甲には、(e.2個の現住建造物等放火罪が成立し、両罪は併合罪である・f.1個の現住建造物等放火罪が成立する)。
(H30 司法 第16問 ウ)
甲は、乙が住居に使用する家屋及びこれに隣接する丙が住居に使用する家屋を燃やそうと考え、乙の家屋に放火してその火を丙の家屋に燃え移らせ、乙及び丙の各家屋を共に全焼させた。甲には1個の現住建造物等放火罪(第108条)が成立する。
(R5 司法 第5問 ア)
甲は、Aが居住するA所有の家屋に放火し、同家屋を全焼させた上、同家屋に隣接するBが居住するB所有の家屋にも火を燃え移らせて同家屋を全焼させた。この場合、甲には2個の現住建造物等放火罪が成立し、これらは観念的競合となる。
現住建造物放火罪と殺人罪 東京地判平成2年5月15日
概要
判例
判旨:「被告人は、前記のとおり、自宅を焼燬して、子供3名を焼死させた上、自殺しようと決意し、平成2年1月16日午前0時10分ころ、前記所在の自宅2階居間兼寝室において、就寝中の長男C(当時12歳)、二男D(当時10歳)及び長女E(当時5歳)の周囲の床などに灯油約30リットルを撒布した上、同室内に置かれていた炬燵の掛布団に所携のライターで点火して火を放ち、その火を同室の柱、鴨居などに燃え移らせ、よって、Fほか12名が現に住居として使用している鉄骨造陸屋根5階建事務所兼居宅(建坪87・55平成方メートル)の2階居間兼寝室(約17平成方メートル)及び同室の天井等の一部を焼燬したが、放火直後憐憫の情から右Cら3名の殺害を翻意し同人らを避難させたため、殺害の目的を遂げなかったものである。
…被告人の判示行為のうち、現住建造物等放火の点は刑法108条に、各殺人未遂の点はいずれも同法203条、199条にそれぞれ該当するところ、右は1個の行為で4個の罪名に触れる場合であるから、同法54条1項前段、10条により一罪として犯情の最も重い現住建造物等放火罪の刑で処断することとし…。」
過去問・解説
(H29 予備 第8問 2)
甲は、乙が居住する乙所有の家屋を燃やそうと考え、同家屋に放火し全焼させたところ、同家屋内で就寝中の乙が焼死した。甲が乙を殺そうと考えて同家屋に放火した場合でも、甲には、法定刑に死刑を含む現住建造物等放火罪のみが成立する。
(R2 共通 第14問 3)
甲が住宅内にいる乙を殺害する目的で放火し、住宅が焼失した上、乙が死亡した場合、甲には、殺人罪は成立せず、現住建造物等放火罪のみが成立する。
公務執行妨害罪と傷害罪 最三小判昭和28年4月14日
概要
判例
判旨:「54条1項前段の1個の行為にして数個の罪名に触れる場合において、『最モ重キ刑ヲ以テ処断ス』と定めているのは、その数個の罪名中もっとも重い刑を定めている法条によって処断するという趣旨と共に、他の法条の最下限の刑よりも軽く処断することはできないという趣旨を含むと解するを相当とする。いいかえれば数個の罪について刑を定めるには、各法条中の法定刑の最上限も最下限も共に重い刑の範囲内において処断すべきものとする趣旨である。本件において、第1審判決が公務執行妨害の罪と傷害の罪とを刑法54条1項前段の1所為数法の関係において処断するにあたり、もっとも重い刑を定めた傷害の罪の法条によって処断したのは正当であるが、公務執行妨害の罪の刑が3年以下の懲役又は禁錮と定められ罰金の定めがないのにかかわらず、傷害の罪にその定めがあるのに従って、被告人を罰金2万円に処したのは、刑法54条1項の解釈を誤ったものであり違法たるを免れない。」
過去問・解説
(H23 予備 第8問 1)
甲は、警察官乙から職務質問を受けた際、乙に対して暴行を加えて傷害を負わせた。甲に乙に対する公務執行妨害罪が成立する場合、同罪と傷害罪は観念的競合となる。
(R5 司法 第20問 エ)
【事 例】
甲は、高齢女性Aから同人名義のキャッシュカード(以下「カード」という。)を不正に入手するため、甲が警察官を装いAに電話をかけ、これからA方を訪れる警察官の確認を受けながらカードを封筒に入れ、同封筒をA方において保管する必要があるとうそを言い、警察官に成り済ました乙(25歳、男性)がA方を訪れ、隙を見て同封筒を別の封筒とすり替えて持ち去り、カードを丙に渡して甲に届けさせる計画(以下「本件計画」という。)を考え、乙に本件計画の実行を指示し、乙はこれを承諾した。某日午前9時頃、本件計画に基づき、甲がAに電話をかけて上記うそを言い、乙は、同日午前9時15分頃、A方を訪ね、Aにカードを封筒に入れるよう求めた。しかし、乙の態度を不審に思ったAが、乙に身分証の提示を求めたので、乙は、逮捕を免れるとともに本件計画どおりにカードを手に入れるため、Aを手拳で多数回殴り、恐怖で抵抗できないAからカードを奪って持ち去った。同日午前9時20分頃、乙は、甲に電話で、本件計画どおりカードを入手したと伝えた。同日午前9時30分頃、甲は、丙に電話をかけ、本件計画の内容を初めて説明し、乙からカードを受け取って甲に届けるよう依頼し、丙はこれを承諾した。丙は、同日午前11時頃、乙と合流し、カードを受け取って乙と別れ、自動車でA方から約50キロメートル離れた甲方に向かったが、同日午後0時30分頃、甲方付近で降車した際、制服警察官BからA方での事件とは関係なく職務質問を受けた。その際、丙は、Bを殴り、Bに全治2週間を要する打撲傷を負わせ、その隙に上記自動車で逃走し、同日午後1時頃、甲と合流して甲にカードを届けた。その後、丙の交際相手丁は、丙が上記一連の犯行を行い、警察から捜査されていることを認識しつつ、丙を丁の自宅にかくまった。
【記 述】
丙がBを殴って負傷させた行為には、公務執行妨害罪と傷害罪が成立し、これらは観念的競合となる。
公務執行妨害罪と傷害罪 最三小決昭和43年9月17日
概要
判例
判旨:「傷害の手段として監禁がなされたものであっても、その行為の性質からみて、両者が通常手段結果の関係にあるものとは認められないから、刑法54条1項の牽連犯にはあたらないものとした原判決の判断は相当である。」
過去問・解説
(H25 司法 第2問 4)
甲は、自己の所属する暴力団の配下組員Aに指を詰めさせることとし、嫌がるAを無理やり普通乗用自動車に乗せて組事務所に連行し、約1時間半にわたってAを監視したが、その間に、組事務所内において、Aの左腕を押さえ付け、包丁でAの小指を切断した。甲には監禁致傷罪が成立する。
無免許運転の罪と酒酔い運転の罪 最大判昭和49年5月29日
概要
判例
判旨:「刑法54条1項前段の規定は、1個の行為が同時に数個の犯罪構成要件に該当して数個の犯罪が競合する場合において、これを処断上の一罪として刑を科する趣旨のものであるところ、右規定にいう1個の行為とは、法的評価をはなれ構成要件的観点を捨象した自然的観察のもとで、行為者の動態が社会的見解上1個のものとの評価をうける場合をいうと解すべきである。
…被告人が本件自動車を運転するに際し、無免許で、かつ、酒に酔った状態であったことは、いずれも車両運転者の属性にすぎないから、被告人がこのように無免許で、かつ、酒に酔った状態で自動車を運転したことは、右の自然的観察のもとにおける社会的見解上明らかに1個の車両運転行為であって,それが道路交通法118条1項1号、64条及び同法117条の2第1号、65条1項の各罪に同時に該当するものであるから、右両罪は刑法54条1項前段の観念的競合の関係にあると解するのが相当であり…。」
過去問・解説
(H20 司法 第17問 2)
甲は、脇見しながら自動車を運転したため、自車前方で信号待ちのため停車していた乙運転の自動車に気付くのが遅れ、同車に自車を追突させ、その衝撃で乙運転の自動車を前方に押し出し、同車の前方に停車中の丙運転の自動車に追突させ、これにより乙が死亡し、丙は傷害を負った。甲には、乙に対する自動車運転過失致死罪及び丙に対する自動車運転過失傷害罪が成立し、両罪は併合罪となる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭49.5.29)は、「無免許で、かつ、酒に酔った状態で自動車を運転したことは、右の自然的観察のもとにおける社会的見解上明らかに1個の車両運転行為…。」とした上で、「右両罪は刑法54条1項前段の観念的競合の関係にあると解するのが相当…。」としている。
甲は、乙運転の自動車に衝突して、乙運転の自動車を前方に押し出し、同車の前方に停車中の丙運転の自動車に追突させ、乙死亡丙傷害の結果を引き起こしており、これらは自然的観察のもとにおける社会的見解上明らかに1個の車両運転行為であるといえる。
したがって、甲には、乙に対する自動車運転過失致死罪及び丙に対する自動車運転過失傷害罪が成立し、両罪は観念的競合となる。
(H22 司法 第16問 4)
甲は、自己の運転する自動車を脇見運転により通行人乙に衝突させて同人を死亡させた上、慌ててその場から逃走しようとして安全確認を怠って自車をUターンさせたため、折から対向車線を走行してきた丙運転の自動車に自車を衝突させて同人に傷害を負わせた。甲には、自動車運転過失致死罪と自動車運転過失傷害罪が成立し、両罪は観念的競合となる。
(H27 共通 第17問 1)
甲は、酒に酔った状態で、自動車を無免許で運転した。甲には酒酔い運転の罪と無免許運転の罪が成立し、これらは観念的競合となる。
(R1 司法 第7問 2)
甲は、乙ら3名をその面前で同時に恐喝して3名全員からそれぞれ財物を出させ、その3名分の財物の交付を乙から一括して受けた。甲には、3個の恐喝罪が成立し、これらは併合罪となる。
(R5 司法 第5問 エ)
甲は、酒に酔った状態で、自動車を無免許で運転した。この場合、甲には酒酔い運転の罪と無免許運転の罪が成立し、これらは観念的競合となる。
1つの幇助行為と複数の正犯行為 最一小決昭和57年2月17日
概要
②幇助罪が数個成立する場合において、それらが54条1項にいう1個の行為によるものであるか否かは、幇助行為それ自体についてみるべきである。
判例
判旨:「幇助罪は正犯の犯行を幇助することによって成立するものであるから、成立すべき幇助罪の個数については、正犯の罪のそれに従って決定されるものと解するのが相当である。…被告人は、正犯らが2回にわたり覚せい剤を密輸入し、2個の覚せい剤取締法違反の罪を犯した際、覚せい剤の仕入資金にあてられることを知りながら、正犯の1人から渡された現金等を銀行保証小切手にかえて同人に交付し、もって正犯らの右各犯行を幇助したというのであるから、たとえ被告人の幇助行為が1個であっても、2個の覚せい剤取締法違反幇助の罪が成立すると解すべきである。
…幇助罪が数個成立する場合において、それらが刑法54条1項にいう1個の行為によるものであるか否かについては、幇助犯における行為は幇助犯のした幇助行為そのものにほかならないと解するのが相当であるから、幇助行為それ自体についてこれをみるべきである。被告人の幇助行為は1個と認められるから、たとえ正犯の罪が併合罪の関係にあっても、被告人の2個の覚せい剤取締法違反幇助の罪は観念的競合の関係にあると解すべきである。」
過去問・解説
(H22 司法 第16問 1)
甲は、乙が丙の住居及び丁の住居に侵入することを決意しているのを知り、乙に対し、侵入用具としてドライバー1本を貸与し、その翌日、乙はこれを利用して丙の住居及び丁の住居にそれぞれ侵入した。甲には、2個の住居侵入罪の従犯が成立し、両罪は観念的競合となる。
(正答)〇
(解説)
判例(最決昭57.2.17)は、「成立すべき幇助罪の個数については、正犯の罪のそれに従って決定される…。」とした上で、「幇助罪が数個成立する場合において、それらが刑法54条1項にいう1個の行為によるものであるか否かについては、幇助犯における行為は幇助犯のした幇助行為そのものにほかならないと解するのが相当であるから、幇助行為それ自体についてこれをみるべき…。」としている。
甲には、正犯乙の住居侵入罪の個数に従って2個の住居侵入罪の幇助犯が成立する。他方、甲は、乙に対して侵入用具としてドライバー1本を貸与するという1個の幇助行為しか行っていないから、これらは観念的競合となる。
したがって、甲には、2個の住居侵入罪の従犯が成立し、両罪は観念的競合となる。
(H26 司法 第11問 2)
甲は、乙が強盗を行うつもりであることを知りながら、乙に模造拳銃1丁を貸し与えたところ、乙は、2店のコンビニエンスストアで、同模造拳銃を使ってそれぞれ強盗を行った。甲には、2個の強盗幇助罪が成立し、これらは併合罪となる。
(正答)✕
(解説)
判例(最決昭57.2.17)は、「成立すべき幇助罪の個数については、正犯の罪のそれに従って決定される…。」とした上で、「幇助罪が数個成立する場合において、それらが刑法54条1項にいう1個の行為によるものであるか否かについては、幇助犯における行為は幇助犯のした幇助行為そのものにほかならないと解するのが相当であるから、幇助行為それ自体についてこれをみるべき…。」としている。
甲には、正犯乙の強盗罪の個数に従って2個の強盗罪の幇助犯が成立する。
甲は、乙が強盗を行うつもりであることを知りながら、乙に模造拳銃1丁を貸し与えたという1個の幇助行為しか行っていないから、これらは観念的競合となる。
したがって、甲には、2個の強盗幇助罪が成立し、これらは観念的競合となる。
(H27 共通 第17問 3)
甲は、乙がX及びYを殺害するつもりでいることを知ったことから、凶器としてナイフ1本を乙に手渡したところ、乙は、同ナイフを用いてX及びYを殺害した。甲には2個の殺人幇助の罪が成立し、これらは併合罪となる。
(正答)✕
(解説)
判例(最決昭57.2.17)は、「成立すべき幇助罪の個数については、正犯の罪のそれに従って決定される…。」とした上で、「幇助罪が数個成立する場合において、それらが刑法54条1項にいう1個の行為によるものであるか否かについては、幇助犯における行為は幇助犯のした幇助行為そのものにほかならないと解するのが相当であるから、幇助行為それ自体についてこれをみるべき…。」としている。
甲には、正犯乙の殺人罪の個数に従って2個の殺人罪の幇助犯が成立する。甲は、乙がX及びYを殺害するつもりでいることを知りながら、凶器としてナイフ1本を乙に手渡したという1個の幇助行為しか行っていないから、これらは観念的競合となる。
したがって、甲には2個の殺人幇助の罪が成立し、これらは観念的競合となる。
(R3 司法 第7問 イ)
甲は、乙がA及びBをバットで順次殴打して両名を負傷させた際、これに先立ち、乙の意図を知りながら、乙にバットを手渡してそれらの犯行を幇助した。この場合、甲には、A及びBに対する2個の傷害罪の幇助犯が成立し、これらは観念的競合となる。
(正答)〇
(解説)
判例(最決昭57.2.17)は、「成立すべき幇助罪の個数については、正犯の罪のそれに従って決定される…。」とした上で、「幇助罪が数個成立する場合において、それらが刑法54条1項にいう1個の行為によるものであるか否かについては、幇助犯における行為は幇助犯のした幇助行為そのものにほかならないと解するのが相当であるから、幇助行為それ自体についてこれをみるべき…。」としている。
甲には、正犯乙の傷害罪の個数に従って2個の傷害罪の幇助犯が成立する。甲は、乙の意図を知りながら、乙にバットを手渡したという1個の幇助行為しか行っていないから、これらは観念的競合となる。
したがって、甲には2個の傷害罪の幇助犯が成立し、これらは観念的競合となる。
キャッシュカードの窃取と使用 東京高判昭和55年3月3日
概要
判例
判旨:「被告人は、…各預金払戻用キャッシュカード(以下、『カード』という)を窃取した後、その被害者らが友人でカードの暗証番号を知っていたことから、ひそかに、…管理者の意に反して、原判示のとおりB銀行α支店設置の自動支払機カード入口に右窃取したカードをそれぞれ差し込み、同支払機の各暗証番号を押して現金を出させ、これを自己の支配下においたものであることが認められるから、被告人の欺罔により被害者の誤信による現金の交付があったものではなく、被告人が、カードを利用して、同支払機の管理者の意思に反し、同人不知の間に、その支配を排除して、同支払機の現金を自己の支配下に移したものであって、このように窃盗犯人が賍物たるカードを用いて第三者たる右管理者の管理する現金を窃取した場合には、賍物についての事実上の処分行為をしたにとどまる場合と異なり、…管理者に対する関係において、新たな法益侵害を伴うものであるから、カードの窃盗罪のほかに、カード利用による現金の窃盗罪が別個に成立するものというべきであり、右管理者の所属する銀行がカードの預金者に対し所論の免責を受けることがあるにしても、右認定を妨げるものではない。」
預金通帳の窃取と使用 最二小判昭和25年2月24日
概要
判例
判旨:「贓物を処分することは財産罪に伴う事後処分に過ぎないから別罪を構成しないことは勿論であるが窃取または騙取した郵便貯金通帳を利用して郵便局係員を欺罔し真実名義人において貯金の払戻を請求するものと誤信せしめて貯金の払戻名義の下に金員を騙取することは更に新法益を侵害する行為であるからここに亦犯罪の成立を認むべきであってこれをもって贓物の単なる事後処分と同視することはできないのである。然らば原審が所論郵便貯金通帳を利用して預金を引出した行為に対し詐欺罪をもって問擬したことは正当であるから論旨は理由がない。」
過去問・解説
(H20 司法 第17問 5)
甲は、乙から同人名義のクレジットカードを窃取し、Aデパートにおいて、店員に対し、乙に成り済まして同クレジットカードを呈示して商品の購入方を申し込んだが、同店員に盗難カードであることを見破られたため、商品を手に入れることができなかった。甲には、窃盗罪及び詐欺未遂罪が成立し、両罪は牽連犯となる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭25.2.24)は、本肢と同種の事案において、「贓物を処分することは財産罪に伴う事後処分に過ぎないから別罪を構成しないことは勿論であるが窃取または騙取した郵便貯金通帳を利用して郵便局係員を欺罔し真実名義人において貯金の払戻を請求するものと誤信せしめて貯金の払戻名義の下に金員を騙取することは更に新法益を侵害する行為であるからここに亦犯罪の成立を認むべきであってこれをもって贓物の単なる事後処分と同視することはできない…。」としている。
甲は、乙から同人名義のクレジットカードを窃取しているから、窃盗罪が成立し、それを用いてAデパート店員に対して商品の購入を申し込んでいるから、詐欺未遂罪が成立する。
したがって、甲には、窃盗罪及び詐欺未遂罪が成立し、両罪は併合罪となる。
(H28 司法 第7問 5)
甲は、AがB銀行に預け入れていた預金を不正に払い戻して金銭を得る目的で、Aから、B銀行が発行したA名義の預金通帳を窃取した上、B銀行の窓口において、行員に対し、Aに成り済まして、同預金通帳を使って預金を不正に払い戻して金銭を得た。甲には、窃盗罪と詐欺罪が成立し、これらは併合罪となる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭25.2.24)は、本肢と同種の事案において、「贓物を処分することは財産罪に伴う事後処分に過ぎないから別罪を構成しないことは勿論であるが窃取または騙取した郵便貯金通帳を利用して郵便局係員を欺罔し真実名義人において貯金の払戻を請求するものと誤信せしめて貯金の払戻名義の下に金員を騙取することは更に新法益を侵害する行為であるからここに亦犯罪の成立を認むべきであってこれをもって贓物の単なる事後処分と同視することはできない…。」としている。
甲は、Aから、B銀行が発行したA名義の預金通帳を窃取しているから、窃盗罪が成立し、それを用いてAに成り済まして、同預金通帳を使って預金を不正に払い戻して金銭を得ているから、詐欺罪が成立する。
したがって、甲には、窃盗罪と詐欺罪が成立し、これらは併合罪となる。
(R3 司法 第7問 ウ)
甲は、A名義の預金口座から現金を引き出す目的で、AからA名義のキャッシュカードをだまし取るとともに、暗証番号を聞き出し、銀行の現金自動預払機で同キャッシュカードを使用して現金を引き出した。この場合、甲には、詐欺罪及び窃盗罪が成立し、これらは牽連犯となる。
(正答)✕
(解説)
判例(最判昭25.2.24)は、本肢と同種の事案において、「贓物を処分することは財産罪に伴う事後処分に過ぎないから別罪を構成しないことは勿論であるが窃取または騙取した郵便貯金通帳を利用して郵便局係員を欺罔し真実名義人において貯金の払戻を請求するものと誤信せしめて貯金の払戻名義の下に金員を騙取することは更に新法益を侵害する行為であるからここに亦犯罪の成立を認むべきであってこれをもって贓物の単なる事後処分と同視することはできない…。」としている。
甲は、AからA名義のキャッシュカードをだまし取っているから、詐欺罪が成立し、銀行の現金自動預払機で同キャッシュカードを使用して現金を引き出しているから、窃盗罪が成立する。
したがって、甲には、詐欺罪及び窃盗罪が成立し、これらは併合罪となる。
(R4 共通 第17問 4)
甲は、A銀行が発行したB名義のキャッシュカード1枚をBから窃取した上、これを利用してA銀行の現金自動預払機から預金を不正に払い戻した。甲には、2個の窃盗罪が成立し、これらは併合罪となる。
(正答)〇
(解説)
判例(最判昭25.2.24)は、本肢と同種の事案において、「贓物を処分することは財産罪に伴う事後処分に過ぎないから別罪を構成しないことは勿論であるが窃取または騙取した郵便貯金通帳を利用して郵便局係員を欺罔し真実名義人において貯金の払戻を請求するものと誤信せしめて貯金の払戻名義の下に金員を騙取することは更に新法益を侵害する行為であるからここに亦犯罪の成立を認むべきであってこれをもって贓物の単なる事後処分と同視することはできない…。」としている。
甲は、B名義のキャッシュカード1枚をBから窃取しているから、窃盗罪が成立し、これを利用してA銀行の現金自動預払機から預金を不正に払い戻しているから重ねて窃盗罪が成立する。
したがって、甲には、2個の窃盗罪が成立し、これらは併合罪となる。
有印私文書偽造罪・同行使罪と詐欺罪 大判明治42年1月22日
概要
判例
判旨:「詐欺取財ヲ為スニ因リ公正証書ヲ偽造行使シタル場合ニ於テハ該証書作成ノ委任状ハ公正証書ノ成立ト分離スヘカラサル密接ノ関係ヲ有シ二者相待テ詐欺取財罪ノ実行手段タルヘキ行為ニ外ナラス故ニ裁判所カ右委任状偽造ノ行為ニ対シ刑法第54条第1項ヲ適用シタルハ相当ナリ」
過去問・解説
(R2 共通 第15問 5)
甲は、乙名義で預金口座を開設する目的で、同人に成り済まし、同人名義で口座開設申込書を作成し、これを銀行の係員に提出して、乙名義の預金通帳の交付を受けた。この場合、甲には、有印私文書偽造罪、同行使罪及び詐欺罪が成立し、これらは牽連犯となる。
偽造公文書行使罪と詐欺罪 大判明治44年11月10日
概要
判例
判旨:「偽造又ハ虚偽ノ事項ヲ記載シタル文書等ヲ行使シテ物ヲ騙取シタル場合ニ於テハ其行使ノ行為ハ詐欺罪構成ノ要件タル欺罔ノ手段タルニ過キスシテ欺罔其モノニ非サルヲ以テ直ニ詐欺罪ノ構成要件ト為ルモノニ非ス」
過去問・解説
(H22 司法 第16問 5)
甲は、郵便局の窓口で、偽造された郵便貯金払戻請求書1通を、不正に入手した他人名義の貯金通帳とともに郵便局員乙に提出して貯金の払戻しを請求し、これを正当な払戻請求と誤信した乙から貯金の払戻しを受けた。甲には、詐欺罪の一罪のみが成立する。
(正答)✕
(解説)
判例(大判明44.11.10)は、「偽造又ハ虚偽ノ事項ヲ記載シタル文書等ヲ行使シテ物ヲ騙取シタル場合ニ於テハ其行使ノ行為ハ詐欺罪構成ノ要件タル欺罔ノ手段タルニ過キスシテ欺罔其モノニ非サルヲ以テ直ニ詐欺罪ノ構成要件ト為ルモノニ非ス」として、偽造した文書を用いて詐欺行為に及んだ場合、両罪が牽連犯の関係にあることを示している。
甲は、郵便局の窓口で、偽造された郵便貯金払戻請求書を提出しているから偽造公文書行使罪が成立し、貯金の払戻しを請求し、これを正当な払戻請求と誤信した乙から貯金の払戻しを受け詐欺罪も成立する。
したがって、甲には偽造公文書行使罪と詐欺罪が成立し、これらは牽連犯となる。
偽造有印私文書行使罪と詐欺罪 東京高判平成7年3月14日
概要
判例
判旨:「一般的には有印私文書偽造、同行使、詐欺との間には順次手段結果の牽連関係があると認められるが、本件の事実関係においては、欺罔されたVの担当者から秋葉原支店のA名義の普通預金口座に約50億円が振込送金され、Bが同普通預金口座から50億円をA名義の通知預金に振り替えた後に同人において秋葉原支店長名義の質権設定承諾書を偽造してこれをVの担当者であるWに交付して行使しており、詐欺が既遂に達してから偽造質権設定承諾書を行使していることが認められるから、偽造有印私文書行使が詐欺の手段となっているとはいい難く、両者を牽連犯とするのは相当でない。ところで、一般に銀行預金を担保として第三者から融資を受ける場合には、当該第三者に質権設定承諾書を交付し、その後融資金の交付を受けるのが通常予想される形態と考えられる。ところが、本件においては、融資金が銀行預金の原資となっている関係で、まず融資金が入金されて預金に当てられてこれに関する質権設定承諾書が作成され、それが融資先に交付されているのである。しかし、元々(偽造)質権設定承諾書の交付は、融資金の入金(騙取)につき必要不可欠なものとして、これと同時的、一体的に行われることが予想されているのであって、両者の先後関係は必ずしも重要とは思われないところである。事実、本件と同様の不正融資事件において、事務処理の都合等から融資金の入金前に預金通帳等を作成して質権設定承諾書を偽造し、これを交付するのと引き換えに不正融資金が振込入金された事例もあることは当裁判所に顕著な事実であり、かつその場合には、当然のことながら、有印私文書偽造、同行使、詐欺とは順次手段結果の関係にあり結局一罪であるとして処断されているのである。そして、右の場合と偶々その担当者の事務処理の都合等から偽造質権設定承諾書の交付と振込入金との時間的先後が逆になった本件のような場合とで罪数処理に関する取扱いを異にすべき合理的な理由を見い出し難いことからすると、偽造有印私文書行使罪と詐欺罪との法益面での関連性が必ずしも強くないことを考慮に入れても、両者は包括一罪として処断するのが相当と解される。」
過去問・解説
(H23 司法 第6問 4)
甲は、真実は、自己の経営する会社の運転資金に使う目的で、質権を設定するつもりもないのに、乙に対して、「2000万円をA銀行の甲名義預金口座に振り込んでほしい。振り込まれた2000万円については、見せ金として使用するので、口座から引き出さないし、振込み後、質権も設定する。」などと嘘を言い、これを信じた乙は、A銀行の甲名義預金口座に2000万円を振り込んだ。その数日後、甲は、同預金に関するA銀行名義の質権設定承諾書1通を偽造し、乙に交付した。この場合、甲には詐欺罪、有印私文書偽造及び同行使罪が成立し、これらは牽連犯として一罪となる。
公正証書原本不実記載罪・同行使罪と詐欺罪 最二小決昭和42年8月28日
概要
判例
判旨:「被告人は、Aから金員を騙取するために、抵当権設定登記申請手続を委任する旨のB名義の委任状を偽造し、これを関係書類とともに登記官吏に提出して行使し、登記簿の原本に抵当権が設定された旨の不実の記載をさせて、これを行使させるとともに、右Aに対し、抵当権設定登記を経由した事実を証明する登記済権利証を示して、同人をその旨誤信させ、よって同人から、借用金名下に現金70万円を騙取したというのであって、右公正証書原本不実記載罪およびその行使罪と詐欺罪とは、罪質上通例手段結果の関係にあるものと認められるから、右数罪は、刑法54条1項後段のいわゆる牽連犯に当るものといわなければならない。」
過去問・解説
(H27 司法 第4問 3)
偽造公文書を相手方に示して錯誤に陥れ、相手方から現金の交付を受けた場合、偽造公文書行使罪は詐欺罪に吸収され、詐欺罪のみが成立する。
(R3 司法 第7問 ア)
甲は、情を知らない法務局の担当登記官Aに対し、虚偽の申立てをして登記簿の磁気ディスクに不実の記録をさせた後、当該記録の内容を閲覧可能な状態にした。この場合、甲には、電磁的公正証書原本不実記録罪及び同供用罪が成立し、これらは牽連犯となる。
住居侵入罪と窃盗罪 大判大正6年6月26日
概要
判例
判旨:「他人ノ印章ヲ窃取スルト其窃取シタル印章ヲ不正ニ使用スルトハ一ハ他人ノ財産権ヲ害シ他ハ公ノ信用ヲ害スル行為ニシテ全然行為ノ性質及ヒ侵害セラレタル法益ヲ異ニスルヲ以テ各独立シテ別箇ノ犯罪ヲ構成スルモノトス
家宅侵入ノ行為ハ盗罪ノ要素ニ属セス単ニ盗罪遂行ノ手段ニ外ナラサレハ盗罪ノ既遂タルト未遂タルトヲ問ハス別ニ家宅侵入罪ヲ構成スルコト論ヲ竢タス」
過去問・解説
(H24 司法 第5問 ①)
教授:犯人が被害者の住居に侵入した上で被害者を殺害した場合の住居侵入罪と殺人罪の罪数関係や、犯人が被害者の住居に侵入した上で被害者のお金を盗んだ場合の住居侵入罪と窃盗罪の罪数関係は、判例ではどうなるかな。
学生A:(ア.併合罪イ.牽連犯ウ.観念的競合エ.科刑上一罪オ.包括一罪)です。
(R3 司法 第7問 エ)
甲は、強制性交の目的でA宅に侵入したが、Aが不在であったため目的を遂げられなかった。その後、甲は、居間に置かれていたA所有の腕時計を発見し、窃取しようと考えてこれを持ち去った。この場合、甲には、住居侵入罪及び窃盗罪が成立するが、これらは併合罪となる。
住居侵入罪と殺人罪 大判明治43年6月17日
概要
判例
判旨:「甲者カ乙者ヲ殺害セント企テ丙者ノ住宅ニ侵入シテ其目的ヲ遂ケタルトキハ右ノ家宅侵入ノ所為ハ殺人行為ノ手段ナルカ故ニ刑法第54条ヲ適用シテ之ヲ処分スヘキモノトス」
過去問・解説
(H20 司法 第17問 3)
甲は、乙を殺害する目的で乙の住居に侵入し、同住居内で乙を殺害した。甲には、住居侵入罪及び殺人罪が成立し、両罪は併合罪となる。
(H24 司法 第5問 ①)
教授:犯人が被害者の住居に侵入した上で被害者を殺害した場合の住居侵入罪と殺人罪の罪数関係や、犯人が被害者の住居に侵入した上で被害者のお金を盗んだ場合の住居侵入罪と窃盗罪の罪数関係は、判例ではどうなるかな。
学生A:(ア.併合罪イ.牽連犯ウ.観念的競合エ.科刑上一罪オ.包括一罪)です。
1個の住居侵入行為と3個の殺人行為 最決昭和29年5月27日
概要
判例
判旨:「3個の殺人の所為は所論1個の住居侵入の所為とそれぞれ牽連犯の関係にあり刑法54条1項後段、10条を適用し一罪としてその最も重き罪の刑に従い処断すべき…。」
過去問・解説
(H21 司法 第20問 ウ)
【事例】
Ⅲ.甲は、乙から金品を強取しようと企て、無施錠の玄関から同人方に立ち入り、同人所有の現金1万円を窃取し、その直後に帰宅した乙に対し暴行を加えてその反抗を抑圧した上、同人から現金3万円を強取した。Ⅲでは、甲を懲役23年に処することができる。
(正答)✕
(解説)
判例(最決昭29.5.27)は、「3個の殺人の所為は所論1個の住居侵入の所為とそれぞれ牽連犯の関係にあり刑法54条1項後段、10条を適用し一罪としてその最も重き罪の刑に従い処断すべき…。」として、住居侵入後の当該住居における犯罪が牽連犯の関係にあることを示している。
まず、甲には、乙から金品を強取しようと企てて乙宅に侵入したことで住居侵入罪が成立する。
そして、甲は乙宅において現金1万円を窃取したことで窃盗罪が、乙に対し暴行を加えてその反抗を抑圧した上、現金3万円を強取したことで強盗罪が、それぞれ成立し、これらは住居侵入罪と目的・手段の関係にあるとして、牽連犯となる。
したがって、甲は、最も重い強盗罪の有期懲役である長期20年以下によって処断すべきことになる。
よって、甲を懲役23年に処することはできない。
(H23 司法 第6問 2)
甲は、乙を殺害する目的で乙方に侵入し、屋内にいた乙を殺害した上、たまたま屋内に居合わせた丙及び丁も殺害した。この場合、甲には、住居侵入罪並びに乙、丙及び丁に対する殺人罪が成立し、住居侵入罪と乙に対する殺人罪が牽連犯として一罪となり、丙及び丁に対する殺人罪と併合罪になる。
(H24 司法 第5問 ①、②)
教授:それでは、犯人が被害者の住居に侵入した上で、被害者を殺害し、その後に被害者のお金を盗もうと思い立って、現実にお金を盗んだ場合の住居侵入罪、殺人罪、窃盗罪の罪数関係は、判例ではどうなるかな。
学生B:住居侵入罪と殺人罪が(①ア.併合罪イ.牽連犯ウ.観念的競合エ.科刑上一罪オ.包括一罪)、住居侵入罪と窃盗罪が(①ア.併合罪イ.牽連犯ウ.観念的競合エ.科刑上一罪オ.包括一罪)となり、全体として(②ア.併合罪イ.牽連犯ウ.観念的競合エ.科刑上一罪オ.包括一罪)になります。
(正答)①イ ②エ
(解説)
判例(最決昭29.5.27)は、「3個の殺人の所為は所論1個の住居侵入の所為とそれぞれ牽連犯の関係にあり刑法54条1項後段、10条を適用し一罪としてその最も重き罪の刑に従い処断すべき…。」として、住居侵入後の当該住居における犯罪が牽連犯の関係にあることを示している。
犯人は、被害者を殺害し、その後に被害者のお金を盗もうと思い立って住居に侵入しており、実際に当該計画通りに犯罪を遂行している。
したがって、住居侵入罪と殺人罪が目的・手段の関係にあるとして牽連犯となり、住居侵入罪と窃盗罪も目的・手段の関係にあるとして牽連犯となり、全体として科刑上一罪となる。
(H24 司法 第5問 ④)
教授:住居侵入罪の法定刑の上限は懲役3年、窃盗罪の法定刑の上限は懲役10年、殺人罪で有期懲役刑を選択した場合の法定刑の上限は懲役20年だけど、判例の立場によれば、前科のない犯人が被害者の住居に侵入した上で、被害者を殺害し、その後に被害者のお金を盗もうと思い立ち、お金を盗んだ事案における処断刑の上限は、それぞれの罪について有期懲役刑を選択した場合にはどうなるだろう。
学生B:(カ.懲役20年キ.懲役25年ク.懲役30年ケ.懲役40年)です。
(正答)カ
(解説)
判例(最決昭29.5.27)は、「3個の殺人の所為は所論1個の住居侵入の所為とそれぞれ牽連犯の関係にあり刑法54条1項後段、10条を適用し一罪としてその最も重き罪の刑に従い処断すべき…。」として、住居侵入後の当該住居における犯罪が牽連犯の関係にあることを示している。
前科のない犯人が被害者の住居に侵入したことで住居侵入罪が成立し、そこで被害者を殺害したことで殺人罪が成立し、その後被害者のお金を盗もうと思い立ってお金を盗んだことで窃盗罪が成立する。
そして、住居侵入罪と殺人罪が目的・手段の関係にあるとして牽連犯となり、住居侵入罪と窃盗罪も目的・手段の関係にあるとして牽連犯となり、全体として科刑上一罪となる。
したがって、処断刑の上限は、最も重い刑である殺人罪の有期懲役20年となる。
(H26 司法 第11問 3)
甲は、乙を殺害する目的で乙が居住する家に侵入し、乙及び偶然その場に居合わせた丙をそれぞれ殺害した。甲には、乙に対する住居侵入罪及び殺人罪が成立し、これらは牽連犯となり、これと丙に対する殺人罪が併合罪となる。
(H27 共通 第17問 4)
甲は、離婚した元妻Xを殺害する目的で、深夜、Xの母親Y宅に侵入し、その場にいたX、Y及びYの子Zを順次殺害した。甲には1個の住居侵入罪と3個の殺人罪が成立するが、住居侵入罪と各殺人罪は牽連犯となり、全体が科刑上一罪となる。
(R2 共通 第15問 2)
甲は、強盗目的で、乙方に侵入した上、乙及び丙をそれぞれ殴打して緊縛し、その際、両名に怪我を負わせ、乙が管理していた現金100万円を強取した。この場合、甲には、住居侵入罪及び1個の強盗致傷罪が成立し、これらは牽連犯となる。
(正答)✕
(解説)
判例(最決昭29.5.27)は、「3個の殺人の所為は所論1個の住居侵入の所為とそれぞれ牽連犯の関係にあり刑法54条1項後段、10条を適用し一罪としてその最も重き罪の刑に従い処断すべき…。」として、住居侵入後の当該住居における犯罪が牽連犯の関係にあることを示している。
甲は、強盗目的で、乙方に侵入しているため住居侵入罪が成立する。
次に、乙方において、乙及び丙をそれぞれ殴打して緊縛し、その際、両名に怪我を負わせ、乙が管理していた現金100万円を強取しており、乙と丙双方の法益を侵害しているから2個の強盗致傷罪が成立する。
したがって、甲には、住居侵入罪及び2個の強盗致傷罪が成立し、これらは牽連犯となる。
道路交通取締法違反の罪と業務上過失致死罪 最二小判昭和33年3月17日
概要
判例
判旨:「無謀操縦と業務上過失致死の各事実は、公訴事実としては別個の事実であって、所論の如く公訴事実の同一性を認むべきものではなく、また、右両者は、独立別個の犯罪を構成し、右両者の間に牽連関係乃至一所為数法の関係を認むべきものではない。」
過去問・解説
(H18 司法 第12問 イ)
甲は、無免許で普通乗用自動車を運転中、前方不注視の過失により歩行者乙に傷害を負わせる事故を起こした。甲には、道路交通法の無免許運転の罪と業務上過失傷害罪が成立し、(c.両罪は併合罪である・d.両罪は観念的競合である)。
身の代金目的拐取罪と拐取者身の代金要求罪 最決昭和58年9月27日
概要
判例
判旨:「みのしろ金取得の目的で人を拐取した者が、更に被拐取者を監禁し、その間にみのしろ金を要求した場合には、みのしろ金目的拐取罪とみのしろ金要求罪とは牽連犯の関係に、以上の各罪と監禁罪とは併合罪の関係にあると解するのが相当であり、これと同旨の原判断は、正当である。」
過去問・解説
(H25 司法 第2問 2)
甲は、身の代金取得の目的で7歳の子供Aを拐取し、さらに、Aの手足をロープで縛って逃げることができないようにして自室に閉じ込め、その間にAの親に電話をかけて身の代金を要求した。甲に監禁罪は成立しない。
(H27 共通 第17問 5)
甲は、身の代金を得る目的でXを拐取し、更にXを監禁し、その間にXの近親者に対して身の代金を要求した。甲には身の代金目的拐取罪、拐取者身の代金要求罪及び監禁罪が成立し、身の代金目的拐取罪と拐取者身の代金要求罪は牽連犯となり、これらの各罪と監禁罪は併合罪となる。
(R3 司法 第7問 オ)
甲は、身の代金を得る目的でAを拐取した後、甲の自宅に監禁し、その間にAの実父Bに対し、電話で身の代金を要求した。この場合、甲には、身の代金目的拐取罪、監禁罪及び拐取者身の代金要求罪が成立し、身の代金目的拐取罪と拐取者身の代金要求罪が牽連犯となり、これらの各罪と監禁罪は併合罪となる。
公務執行妨害罪と傷害罪 大判明治42年7月1日
概要
判例
判旨:「警察吏カ職務ヲ執行スルニ當リ被告ハ之ニ對シテ暴行ヲ加ヘ傷害シタルモノナレハ被告ノ行爲ハ一箇ノ行爲ニシテ數箇ノ罪名ニ觸ルルモノナル」
過去問・解説
(H19 司法 第14問 ウ)
甲は、制服の警察官乙から職務質問を受けたが、質問されたことを不愉快に感じ、乙の顔面を手拳で殴打して傷害を負わせた。
a.公務執行妨害罪と傷害罪が成立し、両罪は牽連犯になる。
b.公務執行妨害罪と傷害罪が成立し、両罪は観念的競合になる。
c.公務執行妨害罪と傷害罪が成立し、両罪は併合罪になる。
殺人罪と死体遺棄罪 大判明治44年7月6日
概要
判例
判旨:「死體遺棄ノ行爲ハ常ニ必ス殺人行爲ニ伴フモノニ非サルヲ以テ人ヲ殺シタル後更ニ死體ヲ遺棄スルニ於テハ殺人罪ノ外ニ死體遺棄罪ヲ構成スルコト論ヲ俟タス今原判決ニ依レハ被告ハ松太郎ト云ヘル嬰兒ヲ絞殺シタル上該死體ヲ他ニ移シ犯蹟ヲ蔽ハンカ爲メ之ヲ燒毀シタルモノナルニ付キ殺人罪ノ外ニ死體遺棄罪ヲ構成スルコト勿論ナルヲ以テ原院ニ於テ本件被告ノ行爲ニ對シ刑法第199條第190條第45條前段ニ依リ併合罪トシテ處斷シタルニ正當ニシテ論旨ハ理由ナシ」
過去問・解説
(H20 司法 第17問 4)
甲は、自宅で乙を殺害し、その死体を遠方の山林に埋めた。甲には、殺人罪及び死体遺棄罪が成立し、両罪は牽連犯となる。
(H21 司法 第16問 オ)
甲は、乙を殺害後、乙の死体を遺棄したが、殺害後、死体を遺棄する前に殺人罪の法定刑を軽くする改正法が施行された。新法が適用される。
(正答)〇
(解説)
判例(大判明44.7.6)は、「死體遺棄ノ行爲ハ常ニ必ス殺人行爲ニ伴フモノニ非サルヲ以テ人ヲ殺シタル後更ニ死體ヲ遺棄スルニ於テハ殺人罪ノ外ニ死體遺棄罪ヲ構成スル」として、殺人罪の実行後に死体遺棄罪を実行した場合、両罪は併合罪の関係にあることを示している。
そして、6条は「犯罪後の法律によって刑の変更があったときは、その軽いものによる。」と規定している。
甲は、乙を殺害後、乙の死体を遺棄しているため、殺人罪及び死体遺棄罪が成立し、両罪は併合罪となる。
そして、殺害後、死体を遺棄する前に殺人罪の法定刑を軽くする改正法が施行されているから、「犯罪後の法律によって刑の変更があった」として、法定刑の軽い新法が適用される。
(R2 共通 第15問 4)
甲は、乙を殺害して金品を強取しようと考え、甲の自宅内で乙を殺害して現金を強取した後、引き続き、その死体を自宅の床下に埋めて遺棄した。この場合、甲には、強盗殺人罪及び死体遺棄罪が成立し、これらは併合罪となる。
殺人罪と窃盗罪 最二小判昭和41年4月8日
概要
判例
判旨:「被告人は、当初から財物を領得する意思は有していなかったが、野外において、人を殺害した後、領得の意思を生じ、右犯行直後、その現場において、被害者が身につけていた時計を奪取したのであって、このような場合には、被害者が生前有していた財物の所持はその死亡直後においてもなお継続して保護するのが法の目的にかなうものというべきである。そうすると、被害者からその財物の占有を離脱させた自己の行為を利用して右財物を奪取した一連の被告人の行為は、これを全体的に考察して、他人の財物に対する所持を侵害したものというべきであるから、右奪取行為は、占有離脱物横領ではなく、窃盗罪を構成するものと解するのが相当である…。」
過去問・解説
(H24 司法 第5問 ③)
アからオの中から正しいものを選べ。
教授:(略)それでは、犯人が路上で被害者を殺害し、その後に被害者のお金を盗もうと思い立ち、お金を盗んだ場合における殺人罪と窃盗罪の罪数関係は、判例ではどうなるかな。
学生A:(③ア.併合罪イ.牽連犯ウ.観念的競合エ.科刑上一罪オ.包括一罪)です。
(正答)ア
(解説)
判例(最判昭41.4.8)は、被害者を殺害した後、領得の意思を生じ被害者から財物を窃取した事案において、「被害者からその財物の占有を離脱させた自己の行為を利用して右財物を奪取した一連の被告人の行為は,これを全体的に考察して、他人の財物に対する所持を侵害したものというべき…。」として、殺人後の窃盗罪の成立を認めている。
そして、殺人罪と窃盗罪とでは罪質上、目的・手段の関係になく牽連犯とならず、1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合でもなく観念的競合にもならないため、併合罪となる。
したがって、犯人が路上で被害者を殺害し、その後に被害者のお金を盗もうと思い立ち、お金を盗んだ場合における殺人罪と窃盗罪の罪数関係は、併合罪である。
(H24 司法 第5問 ⑤)
カからケの中から正しいものを選べ。
教授:それでは、判例の立場で、前科のない犯人が路上で被害者を殺害し、その後に被害者のお金を盗もうと思い立ち、お金を盗んだ事案の処断刑の上限は、それぞれの罪について有期拘禁刑を選択した場合にはどうなるかな。
学生A:(⑤)です。【語句群】
カ.拘禁刑20年キ.拘禁刑25年ク.拘禁刑30年ケ.拘禁刑40年
(正答)ク
(解説)
判例(最判昭41.4.8)は、被害者を殺害した後、領得の意思を生じ被害者から財物を窃取した事案において、「被害者からその財物の占有を離脱させた自己の行為を利用して右財物を奪取した一連の被告人の行為は,これを全体的に考察して、他人の財物に対する所持を侵害したものというべき…。」として、殺人後の窃盗罪の成立を認めている。
そして、殺人罪と窃盗罪とでは罪質上、目的・手段の関係になく牽連犯とならず、1個の行為が2個以上の罪名に触れる場合でもなく観念的競合にもならないため、併合罪となる。
したがって、前科のない犯人が路上で被害者を殺害し、その後に被害者のお金を盗もうと思い立ち、お金を盗んだ場合、殺人罪と窃盗罪が成立し、これらは併合罪となるから、最も重い罪である殺人罪の刑の長期に2分の1を加えた30年が処断刑の上限となる。
業務上過失致傷罪と殺人罪 最一小決昭和53年3月22日
概要
判例
判旨:「業務上過失傷害罪と殺人罪とは責任条件を異にする関係上併合罪の関係にあるものと解すべきである、とした原審の罪数判断は、その理由に首肯しえないところがあるが、結論においては正当である…。」
過去問・解説
(H19 司法 第14問 イ)
甲は、自動車を運転中、前方不注視の過失により、同車を歩行者乙に衝突させ、乙に傷害を負わせたが、路上に転倒している乙を見て、自己の犯行の発覚を防ぐため乙を殺害しようと考え、同人を同車両で轢過し、死亡させた。甲に、業務上過失傷害罪と殺人罪が成立し、両罪は併合罪となる。
(H29 予備 第1問 4)
甲は、狩猟仲間のVを熊と誤認して猟銃弾を1発発射し、Vの大腿部に命中させて大量出血を伴う重傷を負わせた直後、自らの誤射に気付き、苦悶するVを殺害して逃走しようと決意し、更に至近距離からVを目掛けて猟銃弾を1発発射し、Vの胸部に命中させてVを失血により即死させた。Vの大腿部の銃創は放置すると10数分で死亡する程度のものである一方、胸部の銃創はそれ単独で放置すると半日から1日で死亡する程度のものであった。この場合、甲の2発目の発射行為とVの死亡との間には、因果関係がない。
(正答)✕
(解説)
判例(最決昭53.3.22)は、本肢と同種の事案において、「業務上過失傷害罪と殺人罪とは責任条件を異にする関係上併合罪の関係にある…。」として、誤射に気が付いて殺意を持って猟銃を発射した行為については殺人罪を成立させている以上死亡結果との因果関係を肯定している前提に立っている。
甲は、Vを殺害して逃走しようと決意し、更に至近距離からVを目掛けて猟銃弾を1発発射し、Vの胸部に命中させてVを失血により即死させているから、甲の2発目の発射行為とVの死亡との間には因果関係が認められる。
したがって、甲の2発目の発射行為とVの死亡との間には、因果関係が認められる。
保険金詐取を目的とする放火罪と詐欺罪 大判昭和5年12月12日
概要
判例
判旨:「保険金騙取ノ目的ヲ以テ住宅ニ放火シテ之ヲ焼燬シナカラ出火ノ原因不明ナリト詐リ保険金ヲ騙取スルハ放火及詐欺ノ併合罪ナリトス」
過去問・解説
(R1 司法 第16問 エ)
保険金を詐取する目的で、火災保険の付された自己所有の家屋に放火した。この者に詐欺罪のみが成立するか。
(R2 司法 第15問 1)
甲は、火災保険金をだまし取る目的で、同居する家族が不在の間に、自宅に放火して焼失させ、その後、火災原因を偽って火災保険金の支払を受けた。この場合、甲には、現住建造物等放火罪及び詐欺罪が成立し、これらは併合罪となる。
恐喝罪と監禁罪 最一小判平成17年4月14日
概要
判例
判旨:「恐喝の手段として監禁が行われた場合であっても,両罪は,犯罪の通常の形態として手段又は結果の関係にあるものとは認められず,牽連犯の関係にはないと解するのが相当である…。」
過去問・解説
(H18 司法 第12問 ア)
甲は、乙から金員を恐喝しようと企て、乙に暴行を加えて監禁し、暴行により畏怖している乙を脅迫して金員を交付させた。甲には、監禁罪と恐喝罪が成立し、(a.両罪は牽連犯である・b.両罪は併合罪である)。
(H23 司法 第6問 5)
甲は、乙を監禁した上で現金を恐喝しようと企て、乙をマンションの一室に監禁し、暴行・脅迫を加えて現金を脅し取った。この場合、甲には監禁罪と恐喝罪が成立し、両罪は併合罪となる。
(H26 司法 第11問 5)
甲は、恐喝の手段として乙を監禁し、乙から現金を喝取した。甲には、監禁罪及び恐喝罪が成立し、これらは併合罪となる。
(H28 司法 第7問 4)
甲は、Aを監禁してAから金品を喝取しようと考え、Aをビルの一室に閉じ込めて監禁し、その上で、同室内において、監禁により畏怖していたAに対し、金品の交付を要求しながら脅迫して畏怖させ、Aから金品を脅し取った。甲には、監禁罪と恐喝罪が成立し、これらは牽連犯となる。
(R1 司法 第7問 4)
甲は、恐喝の手段として乙を監禁し、その間に乙を脅迫して乙から財物の交付を受けた。甲には、監禁罪と恐喝罪が成立し、これらは併合罪となる。
(R5 司法 第5問 オ)
甲は、恐喝目的でAを監禁し、監禁のための暴行等により畏怖しているAを更に脅迫して現金を喝取した。この場合、監禁罪と恐喝罪が成立し、これらは牽連犯となる。
窃盗教唆罪と盗品等有償処分あっせん罪 最二小判昭和24年7月30日
概要
判例
判旨:「窃盗教唆罪と賍物牙保罪とは別個独立の犯罪であるから同一人が『窃取して来れば売却してやる』と言って他人に対し窃盗を教唆し且つその賍物の売却を周旋して牙保をしたときでも、それは窃盗教唆と賍物牙保の2罪が成立するのであって後者が前者に吸収さるべきものではない、そして窃盗教唆が正犯たる窃盗に準して処断されると云うことから賍物牙保罪は窃盗教唆罪に当然に吸収されると云う結論を導きだすことは到底できないのである。然らば原審が右と同一見解の下に被告人に対し窃盗教唆の外賍物牙保の責任を認めたのは正当であって論旨は理由がない。」
過去問・解説
(R1 共通 第20問 ウ)
甲が乙に腕時計の窃盗を唆したことと、その売却をあっせんしたことは、原因と結果の関係に立つので、窃盗教唆罪と盗品等有償処分あっせん罪は牽連犯となる。
(R6 司法 第7問 2)
甲は、乙に対し、「バッグを盗んできたら売却してやる。」などと言って窃盗を教唆し、乙が盗んだバッグを受け取り、同バッグの売却をあっせんした。この場合、甲に窃盗教唆罪及び盗品等有償処分あっせん罪が成立し、両罪は併合罪となる。
窃盗教唆罪と盗品無償譲受罪 最二小判昭和25年11月10日
概要
判例
判旨:「刑法第54条後段の牽連犯が成立するためにはある犯罪と他の犯罪との間に通常手段又は結果の関係があることが必要であって、被告人が主観的にある犯罪を他の犯罪の手段として行ったということだけでは足りないのである。そうして窃盗教唆と賍物故買との間には通常手段又は結果の関係はないのであるから、被告人が賍物故買の手段として窃盗教唆を行ったものであっても牽連犯にあたるものでなく両者は併合罪の関係に立つものというべきである。」
過去問・解説
(H20 司法 第17問 1)
甲は、乙を教唆して丙所有の骨董品を盗むことを決意させ、乙にこれを実行させた後、同人が丙から盗んだ骨董品を買い受けた。甲には、窃盗教唆罪及び盗品等有償譲受け罪が成立し、両罪は併合罪となる。
(H26 司法 第11問 1)
甲は、乙に対し、丙の日本刀を盗んでくれば高値で買ってやると申し向け、乙が盗んできた日本刀を買い受けた。甲には、窃盗教唆罪及び盗品等有償譲受け罪が成立し、これらは併合罪となる。
(R2 共通 第15問 3)
甲は、乙を教唆して丙占有の自動車を盗むことを決意させ、乙にこれを実行させた後、乙から頼まれて、同自動車を預かり保管した。この場合、甲には、窃盗教唆罪及び盗品等保管罪が成立し、これらは牽連犯となる。
盗品等保管罪と盗品等有償処分あっせん罪 最二小判昭和25年3月24日
概要
判例
判旨:「被告人は始めA外1名から明日取りに来るから預かって呉れとの依頼により、贓物たるの情を知り乍ら敢てタイヤー1本を預かり、その翌日頃右A等は、トラックをもって取りに来たのでこれを同人等に渡したところ、Aは之をトラックの運転手に売ろうとしたが運転手は買わなかったので、被告人はA等から売って呉れと頼まれて之が売却を周旋したというのであるから被告人がA等から贓物と知りながら判示タイヤー1本を預ったことにより贓物寄蔵罪は成立し、翌日頃之をA等に引渡したことにより贓物寄蔵罪の状態は終了し、更にA等の依頼により右タイヤー1本の売却方を周旋したのであるから、被告人の贓物牙保罪は前記贓物寄蔵罪とは全然別個独立に成立したものといわなければならない。即ち本件は始めから売却の周旋を依頼された為に預かったものではないのであるから、仮令右両所為の日時が近接連続していたとしても、所論のように本件寄蔵の所為は当然牙保の所為に吸収されるものであるとの主張は採用することができない。」
過去問・解説
(H29 司法 第12問 イ)
甲は、盗品であると知りつつ、窃盗犯人乙から依頼を受けて保管していた宝石を乙に返却した後、改めて乙から依頼を受け、預かった同宝石を事情を知らない丙に売却した。甲には盗品等有償処分あっせん罪のみが成立する。
兇器準備集合の罪と暴力行為等処罰に関する法律1条違反の罪 最一小決昭和48年2月8日
概要
判例
判旨:「兇器準備集合罪が個人の生命、身体または財産ばかりでなく、公共的な社会生活の平穏をも保護法益とするものであること…にかんがみれば、被告人の本件兇器準備集合の所為は暴力行為等処罰に関する法律違反の所為に対する単なる手段とのみ評価することはできず、両者は通常手段結果の関係にあるというをえないものであるから、牽連犯ではなく、併合罪と解すべき…。」
過去問・解説
(H28 司法 第7問 3)
甲及び乙は、共同でAの身体に危害を加える目的で、凶器として用いる鉄パイプをそれぞれ準備して集合し、その後、その目的を遂げるため、鉄パイプで代わる代わるAの身体を殴打して傷害を負わせた。甲には、凶器準備集合罪と傷害罪が成立し、これらは牽連犯となる。
(正答)✕
(解説)
判例(最決昭48.2.8)は、本肢と同種の事案において、「兇器準備集合罪が個人の生命、身体または財産ばかりでなく、公共的な社会生活の平穏をも保護法益とするものであること…にかんがみれば、被告人の本件兇器準備集合の所為は暴力行為等処罰に関する法律違反の所為に対する単なる手段とのみ評価することはできず、両者は通常手段結果の関係にあるというをえないものであるから、牽連犯ではなく、併合罪と解すべき…。」としている。
これは、保護法益の相違から、罪質上通例手段結果の関係にないためであるから、凶器準備集合罪と傷害罪の関係でも同様である。
したがって、甲には、凶器準備集合罪と傷害罪が成立し、これらは併合罪となる。
(R4 司法 第17問 2)
暴力団幹部甲は、配下の組員数名とともに、Aの身体に共同して危害を加える目的で、日本刀数本を準備してA方前に集合し、その直後、外に出てきたAの顔面を手拳で数回殴打する暴行を加えた。甲には、凶器準備集合罪と暴行罪が成立し、これらは併合罪となる。
(正答)〇
(解説)
判例(最決昭48.2.8)は、本肢と同種の事案において、「兇器準備集合罪が個人の生命、身体または財産ばかりでなく、公共的な社会生活の平穏をも保護法益とするものであること…にかんがみれば、被告人の本件兇器準備集合の所為は暴力行為等処罰に関する法律違反の所為に対する単なる手段とのみ評価することはできず、両者は通常手段結果の関係にあるというをえないものであるから、牽連犯ではなく、併合罪と解すべき…。」としている。
これは、保護法益の相違から、罪質上通例手段結果の関係にないためであるから、凶器準備集合罪と暴行罪の関係でも同様である。
したがって、甲には、凶器準備集合罪と暴行罪が成立し、これらは併合罪となる。
傷害罪と暴力行為等処罰に関する法律1条の罪 最二小判昭和53年2月16日
概要
判例
判旨:「本件のように、数人共同して2人以上に対しそれぞれ暴行を加え、一部の者に傷害を負わせた場合には、傷害を受けた者の数だけの傷害罪と暴行を受けるにとどまった者の数だけの暴力行為等処罰に関する法律1条の罪が成立し、以上は併合罪として処断すべきであるから、原判決のこの点の判断は正当である。」
過去問・解説
(H27 共通 第17問 2)
甲及び乙は、対立する暴走族の構成員を襲撃することを共謀し、同構成員であるX、Y及びZに対し、殴る蹴るの暴行を加え、それぞれに傷害を負わせた。甲及び乙にはそれぞれ3個の傷害罪が成立し、これらは併合罪となる。
(R5 共通 第5問 ウ)
暴力団員甲及び乙は、対立する暴力団員A及びBを襲撃して殺害することを共謀し、路上を連れ立って歩いていたA及びBを待ち構えた上で、甲がAを、乙がBを、それぞれ殺害した。この場合、甲及び乙を共同正犯とする2個の殺人罪が成立し、これらは併合罪となる。
偽造通貨行使罪と詐欺罪 大判明治43年6月30日
概要
判例
判旨:「偽造ノ通貨ヲ収得シテ之ヲ行使シタル所為ハ2箇ノ犯罪ヲ構成ス
偽造銀行券ヲ行使シテ財物ヲ不正ニ領得シタルトキハ財物領得ノ行為ハ銀行券行使ノ所為中ニ包含セラレ別ニ犯罪ヲ構成スルモノニ非ス」